↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/85

第三十六話 大聖堂攻防戦

「第1装甲師団からの命令です!

全連隊をもって敵軍を掃滅すべし!」


いよいよ敵を絶滅させる作戦の最終盤までやってきた。


「戦争開始だ!!全隊、ヴルフラーメン発射用意ッ!!弾種28㎝ロケット榴弾!」


後方の部隊にも伝達が入る


「15cm重榴弾砲、射角準備!及び装填準備ッ!!」


市街地に展開された榴弾砲陣地で兵士が慌ただしく砲弾を運んている。

兵科色は赤、頼もしい頼もしい砲兵部隊だ。


IV号戦車やⅥ号戦車ティーガーも続々と到着し盤面は完璧だ。


大聖堂周辺は黒逸兵が完全に包囲している。輸送車に乗るシュヴァルツ大尉たちは確保した路上を安全に進んでいく。


「ロケット榴弾発射!!」


大尉たちが乗っていた輸送車は一旦停車し、備え付けられたロケット砲から白い噴煙を上げて射出された榴弾が敵陣へ向かって落下していった。


敵の兵力を安全な場所からなるべく削いでやるのだ。


破竹の勢いで進軍した黒逸軍はほとんど抵抗を受けずに大聖堂を包囲した。


そこにアーデルハイド少佐がキューベルワーゲンの後部座席に立ち拡声器を持ち始めた。


「紅旗軍に告ぐ!お前たちは完全に包囲されている。今すぐ武器を捨て白旗を揚げるか、手を挙げて投降すれば危害は加えない」


返答はない。それどころかこちらの出方を伺っているような雰囲気さえ感じる。


「どうやら、このまま降伏する気はないようだな」


少佐はそう呟くと。


「では、こちらも容赦はできない。降伏の意思がないなら、殲滅するまでだ」


拳銃を引き抜くと発砲し突撃命令を下した。


「全軍、進撃しろッ!!」


彼女の命令を受け、全軍が一斉に突撃を開始する。

その数増隊を含め五万弱。対して紅旗軍の兵数は1万に満たないと予測された。


戦車部隊とともに装甲兵員輸送車に乗り込んだ歩兵たちが敵軍の152mm榴弾砲の雨が降り注ぐ戦地での突撃を敢行する。


大聖堂の尖塔、屋上からの狙撃。土嚢の壁や塹壕に隠れている敵兵から銃撃を装甲で弾く音が心臓を嫌に高鳴らせた。


兵員室前方に車載された防盾付き機銃架のMG42の取っ手を持ち対抗して弾幕を張るバウムガルトナー。

空薬莢の落ちて転がる音が耳に染み付いて離れなかった。

 

兵員室に身を隠していた歩兵たちも敵戦車であるT-34が建物の影から姿を現すと、標的にならないように輸送車を乗り捨てて敵陣へと走る。


「戦車部隊!頼んだぞ!!俺たちは敵兵の掃討を行う!友軍の為に進路を確保し、敵の司令部へ向かう!行くぞ少尉!曹長!オイラー!」


二人の大尉には突撃銃、少尉には小銃。曹長は弾薬箱を持って走り出した。


戦場には戦車の走行を拒む『チェコのハリネズミ』や『竜の歯』と呼ばれる障害物が設置されている。その物陰をジグザグに移動しながら前進していくと砲撃でできたであろう浅いクレーターに伏して銃撃をやり過ごす。


他の兵士たちは無益に突撃し丘の上の大聖堂から来る銃撃の餌食になっていく。

すでに街の地面は血で赤く、立ち上る黒煙が空を包んでいた。


「この先は有刺鉄線が張られている。手榴弾を投げろ!」


大尉の指示で兵士たちは柄付手榴弾の柄から紐を引き抜くと本体を投げて有刺鉄線を破壊、進路を確保する。


空いた進路に向かって立ち上がり突撃する歩兵の集団は銃撃を浴びながらも勢いを止めず我武者羅に進み続ける。

遮蔽物のない場所では素早い前進が必要だ。

それについていけない兵士は鉄の嵐に巻き込まれ悲惨な死を遂げる。


シュヴァルツたちはなかなか遮蔽物に隠れたまま動くことができなかった。


「クソ!地理がやばい!相手は丘の上の大聖堂、高低差があるとどうしても不利だ」


「こっちには五万人も兵がいるのに…どうしてこううまくいかないんでしょうか」


「地の利には勝てない、それにまだ主力戦車を所有していることに驚きだ。てっきりもうそんな戦力は残ってないと踏んでいたが…敵は案外、出し惜しんでるだけかもな」


まさに総力戦の様相を醸し出していた。

激しく燃え盛る戦火、地面を埋め尽くす仲間の死体。火薬と血の匂い。


ここが地獄らしい。


攻撃を受けている側である紅旗軍も命をかけて必死に迎撃する。


ある榴弾砲陣地を守備する兵士は短機関銃PPSh−41を持って近寄ってくる黒逸兵を掃射していくが全くきりがない。


「数が多すぎるッ!こっちにも砲弾を回してくれッ!!」


「だめだ!どこも精いっぱいだ!とてもじゃないが…」


「敵が来るぞ!!」


素早く銃器を向けたがなにせ相手が悪かった。


やってきた少女は弾幕を張りながら駆け込んできて、陣地にたどり着くと弾幕のせいで顔が出せなかった紅旗兵の頭上から銃撃をお見舞いした。


相手は百戦錬磨のシュヴァルツだった。


「よっし、榴弾砲GET。使おうと思ったけど砲弾なさそうだし爆破しちまうか」


シュヴァルツは閉鎖機を開き、砲弾の代わりに手榴弾を投げ入れて閉める。すると榴弾砲はドカンと爆発して使い物にならなくなった。


「どんどん行くぜぇーーッ!!」


孤軍奮闘するシュヴァルツだった、場面は変わりオイラー大尉はバウムガルトナー少尉と数十人の部下を引き連れて機関銃手のいる敵陣へと迫っていっていた。


銃手(ヤツ)を殺さねば仲間が安心して進めないな」


敵は土嚢と丸太で作り上げたトーチカの中に潜んでいる。強固な作りだがオイラーたちにはそんなものもたやすく蹂躙することができるだろう。


「次の銃撃が止んだ瞬間、トーチカの銃眼から手榴弾を投げ込んでやれ」


「はい!」


慎重に茂みの中を移動していき、とうとう10メートル内までに迫ることができた。


敵の銃撃が止んだ瞬間を見計らって大尉の合図とともに栓が抜かれた手榴弾が投げ込まれ、隙間から中に入り込んだ。


「うわっ!手榴弾だ!投げ返せ!」


「クソッ!」


中の敵兵がすかさず外に放ろうと手に取った瞬間、爆散し隣りにいた兵士と彼の片腕を吹き飛ばした。


「ギャァーーッ!!」


「今だッ!突撃ッ!!」


短機関銃を持って突撃を命じたオイラー大尉に従いバウムガルトナーたちはトーチカへと進んでいき、塹壕へと乗り込んだ。


規模は小さい人一人がやっと収まるような簡単な塹壕の中でトーチカから出てきた敵兵を無表情で兵士たちは掃討していった。


「オイラー大尉!あらかた片付きました!」


「よくやった!残兵がいないか気をつけてなかに入れ」


あとから来たオイラーがそう言って塹壕に飛び降りようと足を進めた瞬間、突如として背後から放たれた無数の銃弾がオイラーの腹を貫いた。


「ぐふっ…」


口から吐血した彼女はそのまま前に倒れ込むようにして少尉たちに倒れ込んだ。


「大尉ッ!?大尉!!」


必死に支えて呼びかける少尉たち。しかし仰向けにさせた彼女の腹には赤黒いでしょうか銃創がいくつも出来上がり目も虚ろになっていて重篤な状態だった。


「衛生兵!早く!」


「はッ!」


部下の一人が離脱すると少尉は懸命に呼びかける。


「大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」


「…少尉…背後から撃たれた……敵が…いる…仲間だ、黒逸のな……がはっッ…!!」


「喋らないでください!今、なにか止血できそうなものを持ってきます!すぐに戻ります!すぐです!絶対に…死なないでください!!」


すぐに立ち上がり占領したトーチカへと消える少尉を見送ると大尉は遥か空に浮かぶ雲を見つめた。


「(…なんでだろうか、今…すごく気分がいい…死が怖くない…ハハッやっぱり狂ってたんだ俺は…)

来たれ、死よ。俺の死は…俺以外のものだ…このまま目を閉じても……いいか………」


そっと目を閉じた大尉がその後を目を開けることはなかった。


それはバウムガルトナー少尉が救急箱を持って駆けつけても変わらなかった。


手の力が抜けガタンと滑り落ちる救急箱。少尉はただただ恩師の亡骸を前にして膝を崩して泣き崩れるしかできなかった。

表情はわからない、ただ地獄に残された少女の背中だけが青い青い空の下に浮き出ていた。


大聖堂攻防戦はますます苛烈になっていきあたり一帯が血の海と化す。その上を兵士たちや戦車は行き交い終わらない地獄を繰り返す。


戦火に飲まれたフンドールはまるで炉の中のように真っ赤に燃え上がり黒煙が空を包んだ。

業火に焼け落ちる家屋を抜け、丘の上にそびえる敵軍が潜む大聖堂を目指す。


先陣を切り兵士を率いて大聖堂につながる丘の石階段を駆け上るシュヴァルツ。丘には無数の十字架の墓石が不気味なほどずらりと丁寧に並べられてある。その中を駆け上がると見えてきた。


「あそこが敵陣の本拠地かぁ…?一回滅ぼされたぐらいじゃわからないか、いいだろう。俺たちが戦争を教えてやる」


見渡せばフンドールは火の海に沈没している。鳴り止まない銃声、砲声が嵐のごとく地上を包んだ。

この作戦が終わりまで来たということ、そしてこの街がまもなく滅びゆくことを示すかのように。

評価、ブクマ、感想などいただけると大変励みになります…!ぜひ…!╰(⸝⸝⸝´꒳`⸝⸝⸝)╯




【補足】


この物語は史実である第二次世界大戦時の独ソ戦(1941〜1945)辺りの時代背景を下敷きの異世界でドイツ国とソ連がモチーフの国との戦争を生き抜く物語です。


登場する兵器や軍服などは名前が出ているものは実際に大戦で使われた物であり、調べていただきながらお読みいただくとより一層楽しめるかと思います୧( ˵ ° ~ ° ˵ )୨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。