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羽無し朱雀は青龍王に愛される  作者: 空飛ぶひよこ


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玄武の喪失

 当然私は反発した。

 玄武なんて地位は、私には不要だと。

 幼い青龍王も、国もどうでもいいと、叫んだ。

 そもそも、玄武は妻帯を許されていないはずだ。

 何故、妻も子どももいる、私が選ばれるのだと。

 

 だが、使者は引かなかった。

 

 それでも、当代の玄武は私だと。現王の選定は絶対だと、強く主張した。


 その代の四神が役目を果たさねば、国は乱れる。

 玄武の地位を受け入れなければ……私の妻や娘にも、危険が迫るかもしれない、と。そう脅すことで、揺さぶりをかけて来た。


 ならば、いっそ国を出ようとも思った。

 妻と娘と共に四神国を出て、三人で安全に暮らせる地を探そう、と。


『貴方。……翠玉のことは私に任せて、お役目を果たして下さい』


 ……けれど、最終的に私の背中を押したのは、妻、紅玉だった。


『次代の青龍王は、まだ7歳なのでしょう? もうすぐ6歳になる翠玉とさして年齢が変わらない子に、一人で国の命運を背負わせては駄目よ。大人である貴方が、導いてあげないと。……私と翠玉は、貴方が玄武の役目を果たす上で、きっと枷になります。私達が傍にいれば、貴方のことだから、王のことだけをちゃんと考えられなくなるでしょう? このまま二人で旅をしながら、待っているから……いつか、王の周りが落ち着いたら、私達を迎えに来て下さい。私達はいつまでも、貴方のことを待っています』


 気丈に微笑む彼女の言葉に……私は悩んだ末に頷いた。


 それが大切な二人を守ることになるのならーー私は、望まぬ役目も果たそう。


 私は、使者が二人を陰ながら護衛し、必要な時は手助けをすることと、定期的に妻の手紙を私に運ぶことを条件に、玄武として城に向かった。


 それが……妻との永遠の別れになると知っていれば、私はけして玄武になぞ、ならなかったのに。




 朱雀を亡くして以来、感情も共に死んだと言われる当代の青龍王と、彼を忠実に守護する白虎は、油断できないクソじじい共だった。既に当時には亡くなっていた当代玄武も、同じようなクソじじいだったから、四神とはそういうものなのかもしれない。(自分の性格が負けず劣らずクソなことも、自覚はしている)


 翠玉とさして年の変わらない、次代青龍王は、子どもらしさに欠けたあまり感情を表に出さない少年で、会ってすぐに、翠玉の屈託のない笑顔が恋しくなった。

 ……まあ、そんな王だからこそ、後の悲劇に耐えられたのだと、今なら思う。


 城で働くようになってから、約半年後。

 青龍王の代替わりから、そう時間は置かずに、彼の父が主導した王族の反乱が起こり、しばらく私はクソじじい共が築いた死体の山の対処に追われることとなった。

 反乱の情報は、極力民の耳に入らないよう情報規制をし、王族の大部分が消えた穴をそれとなく埋めるのは、それなりに重労働だった。


 王族の大部分が自業自得で滅びてから、四年が経ち。

 ようやく王の周辺状況が安定して、そろそろ妻と翠玉を呼び寄せても大丈夫だろうかと考えた辺りに、立て続けにクソじじい共が死んだ。そして、それをきっかけに、残された王族による反乱が起こった。

 白虎を表舞台に出し、私は私でひそかに反乱の首謀者に取り入り、暗殺を果たすことで、二度目の乱を治めることに成功した。


 そして、反乱が終結した後。再び背負わされる後処理にげんなりしていた時に、ようやく気がついた。

 

 先王の死の少し前からーー定期的に届いていた、妻の手紙が届かなくなっていることに。


 先王の死に伴い、使者が護衛の役割を放棄したのだろうか?

 それとも、妻が私の今の状況に遠慮をして、手紙を控えていた?


 様々な可能性が脳裏に過ぎったが、それを遙かに上回る嫌な予感がして仕方なかった。


 私は部下に命じて、かつて先王の使者だった男を探させた。

 使者は、思いのほか簡単に見つかった。……彼は、本来ならば宰相の私にも回ってくるはずの人事異動の書類もないまま、先王の権限だけで、王宮に関係する別の職務に着いていた。


 そして、私は知った。


 妻は旅を続けているうちに、自覚がないまま重い不治の病に侵され、気づいて使者と共に医者に行った時には、既に手遅れになっていたこと。

 妻の希望で、妻と娘は故郷の妻の妹のもとに身を寄せることになり、先王が亡くなる直前に、手厚い看護もむなしく亡くなったこと。

 娘の翠玉は、そのまま紅玉の妹に引き取られたこと。


 そしてーー死を目前にした先王が、自分の死後の反乱を予期し、その事実を私には伏せるようにしたこと。


 頭を地に擦りつけながら、語られる事実に、頭の中が真っ白になった。



 それから、すぐに、紅玉の妹に連絡を取った。

 紅玉の墓参りをして、遺された娘を引き取りたいという旨を伝えると、彼女は激怒した。


『ーー姉様を、あんな目に遭わせておいて、図々しいことを言わないで……っ! 私は貴方の娘も憎くて仕方ないけれど、貴方を喜ばせるくらいなら、私が引き取って育てた方がましだわ……!』


『言っておくけれど、貴方が村に来たとしても、この村の者は誰も、貴方なんか村に入れないから覚悟しておきなさい。姉を攫った恥知らずな亀人の男の顔は、皆、知っているもの。【玄武】の地位を振りかざしても、無駄よ。鳥人族は排他的で、プライドが高いの。玄武なのに妻帯をしている貴方の言葉なんて、誰も聞き入れるはずないでしょう?』



 



 

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