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着いたところは異世界でした.  作者: 千野恵
第二章 魔法使いスシロー
18/18

18.天界にて(3)

 『 そこで、折り入ってあなたにお願いしたいことがあるのですが、聞いてもらえますか?聞いてもらえる代りの対価として、貴方が知りたいと思っている情報をあげましょう。』


 おっと。女神さまが対価とか言う?

 あ、いや、そう言えば、神だからこそ対価なのか。

 大体神様にお願いするには、対価として何かを我慢するとか願掛けとかあるもんな。

 う~ん。聞きたいことは山ほどある。

 情報をタダでくれないってのは悲しいもんがあるけど、仕方がない。


 「その対価は情報に見合ったものですか?」


 『 神に対価を要求して、不公平なことはありませんよ。きちんと見合っているでしょう。』


 「・・・・」


 俺はしばらく考えるふりをしていた。

 もちろん、答えは決まっているけれど、ちょっと勿体なんかつけてみたりしたかった。


 「スシロー、お前は何が聴きたいんだ。女神からの要請を断るつもりなのか。」


 「いえ。少し考えたくて。」


 『 そうですね。イカルスも同道しても良いかもしれませんが、どちらでも構いませんよ。ただし、私からの要請はスシロー一人に対してです。イカルスに同道してもらうならば、貴方がその対価を支払うわなければなりませんよ。』


 げっ。こっちの思惑見透かされてた。

 イカルスと二人なら引き受けるとか言おうとしてたのに、先手を打たれてしまった。

 どうしよう。一人でするってのはなんかヤバそうな気がする。

 中身を聞くのもヤバい気がするけど、俺が聞きたいことはたぶん神にしかわからないだろう。

 どうしたらいい。


 「女神の要請っていうのは、実行困難なことですか。」


 『 普通の人間には絶対に無理なことですね。魔法使いの上級者にもかなり困難なことでしょう。けれど貴方なら、困難ではあってもやり遂げられることだと思います。』


 きたよ。そうか。俺なら困難であっても出来るってことは、イカルスでも出来るってことだよな。


 俺が知りたいこと。

 イカルスにはお見通しだろう。

 俺は、俺自身のオウラのこともだが、異常な腕力についても知りたいのだ。

 葡萄の収穫の時には、物が軽く感じるのは重力の違いのせいかと思ってたら、感覚では下に物が落ちた時のその物の撥ね具合とかは同じだから、結局、俺の腕力が異常だと言う事に気づいたのだ。

 おかげで、ドアノブやらナイフやら、軽く持っておかないとグニャリと曲がってしまうので、常に気を使わないといけなかった。


 他にも、本来知るはずのない知識が、ふと頭の中に浮かんでくるっていう、有難いような不気味さはちょっと来るものがある。

 これは絶対元の世界の常識では考えられないことが、当たり前のように{これが正しい}と納得してしまえていることが多々あった。


 俺は、ここに来た当初のファンとの会話を思い出していた。


 (スシローがいたところはどんなところ?)


 (東京っていう日本の首都に住んでたよ。それは大きな都市でね、人が大勢住んでて一杯の職業があったよ。戦争もなく平和だったな)


 (ご飯は何をたべてたの?)


 (朝の光を浴びて野原に寝転ぶだけで、栄養は取れてた、、、ような・・・えっ、、、いや、そんなことないよな。ちゃんと米食ってたし、肉食ってたし。なんで、光を浴びて?野原とか寝ころばないし。)


 (光を浴びるだけなんて、仙龍せんりゅうみたいだね)


 (仙龍ってなんだろう)

 と思ったら頭の中にその答えが浮かび上がってきた。


 ーーー仙龍、、、光が主食、時々植物や動物の生気を食事として摂ることもあるが、命に危険が迫ったりしなければ光だけで事足りる。元はリバイアサンとして海の底で生活をしているが、永く生きたものが魔法で地上へと飛び出せるようになると、口からの食事をとらなくなり、光から栄養を取るのみで生きることが出来る。また思想にふけるようになるため、ほとんど動かずしまいには岩と化すこともあるが、時々若い空龍に知識を与え、その後空気中に溶けるようにして散ることもあるーーー


 これは、俺が絶対知りえるはずもないことだった。

 本でも読んだ覚えはないと言い切れる。

 なのに、当たり前のようにすらすらと頭に浮かんだのだ。

 そして、これは自分のことだと頭の中の俺が感じているのだ。


 ぞっとした。

 俺ではない何かが、俺の中にいる?

 パニックになりそうな位なった時、またすんなりと、頭の中で考えが浮かんだ。

 知っているものは知っている、それで良い。深く考えることはない。そのうち整理もつくだろう。

 俺であり、俺でない誰かが考えたことに、すんなり納得する自分がいた。

 これが今の俺ってことで、深く考えずとも良い、なんて、自分の疑問に自分で応えてる俺がいるのだ。


 そんな風に、時々知らない知識がふと浮かんだり、自分の事ではないのに自分の事のように思えたりすることが、この五年間で度々あった。 

 イカルスにも相談したが、いずれわかる時もあるだろう、と、対して気にしてはくれなかった。

 いや、気にしてはいただろうけれど、深くは追及してこなかったのだ。


 いや、そうだ。

 一流の魔法使いになった時に、女神の相談するとよい、と言われていたこともあった。

 なんでそれを今まで忘れてたんだろう。

 いつか女神に会うときに、相談したらよいといってくれたんだった。


 ああ。そうか。だからか。

 今回のこの天界行きは、このことをイカルスは俺に聞かせようとしていたのか。

 俺は、なんでこんな大事なことを忘れてたんだろう。


 色々なことが思い出されて、俺はパニックになりそうになった。

 すると、イカルスが俺の手を強く握り言ってくれた。


 「大丈夫だ。女神にききたいことを聞いて、すっきりするといい。お前自身が一番聞きたいことを聞くんだ。ここに私もついている。」


 俺の知りたいこと。

 謎だらけのこの世界との関係。

 俺は知りたかったんだ。

 そう。だから決まっている。

 そして、俺は俺を知るために女神の要請を受けることにした。

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