第28話 上洛(一)
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郭図と戯志才は政庁で呂布が来るのを待ち構えて姿を見つけるのと同時に話があると伝えて執務室に入った。戯志才が洛陽の情勢を説明した後、郭図から洛陽に向かうべきだと説明を受けた。
「何進が失脚すれば確かに拙いな」
「何進と呂布殿が手を組んでいる事を反対勢力に見せてやれば馬鹿な真似は出来なくなると」
「俺達にそこまでの力があるとは思えんが」
「それは違う。呂布殿が主導して十常侍の反乱と董卓の暗躍を潰したのは周知の事実」
「あれはお前たちが根回しした結果であって俺は指示通りに動いただけだ」
「呂布殿は自らを過小に評価している」
「俺の力はお前たちが居てこそ活きるからな」
「お互い謙遜し合うのは程々に致しましょう。とりあえず州牧就任の挨拶を名目にして洛陽に向かいましょう」
「分かった。段取りについては薛蘭と爺さん(高順)を交えて協議する」
直ぐに関係者が集められて洛陽に向かう事が呂布から伝えられた。
「儂は居残りだな」
「そうだな。鮮卑と冀州で動きが有れば対処してもらう」
高順は上手く理由をつけて洛陽行きを断った。本当の理由は人の多さに辟易した事だが、言えば周りから単なる我儘だと責められるので黙っていた。
「郭嘉の指示通りに動けば問題ない」
「というわけで郭嘉も居残りだ」
「残念。洛陽見物が出来ると思いましたが」
郭嘉に無理をさせて体調が悪化すれば看護にあたっている蔡琰から何を言われるか分からないので洛陽行きを断念しなければ誰かが止めに入るところだった。
「体調が完全に良くなってからだ。今回は儂の話し相手になってもらうぞ」
「仕方ありません。老将軍から貴重な戦話を聞かせて頂きましょう」
高順の戦話は戦況の移り変わりを淡々と説明するだけなので余計な表現にあたる賛美礼賛を嫌う郭嘉にとって有益な存在になっている。
「今回は挨拶なので一隊を率いる程度に留めておきましょう」
「張遼と郝萌は俺に同行してくれ。率いるのは騎馬隊と輜重隊合わせて千五百人程度に留める」
「承知致しました」
「直ぐに準備致します」
大軍を率いて行けば袁家の二人から余計な詮索を受ける可能性が高い事から少数精鋭で向かう事になった。
「呂布殿、鍾繇の同行を認めて頂きたく」
「構わんが、薛蘭の補佐はどうする?」
「某の事は心配無用です。中尚書は朝廷内部に繋がりがあるので重宝するでしょう」
「そういう事か。ならば鍾繇、頼むぞ」
「お任せ下さい」
州牧代理を薛蘭に任せる等諸々の準備を終えた呂布は張遼・郝萌・郭図・鍾繇の四人を伴い洛陽へ向った。
*****
呂布たちに先んじて洛陽へ向かう戯志才は気になる事があったので出発前に郭嘉の屋敷を訪ねた。
「奉孝、何か隠していないか?」
「どういう事でしょうか?」
「何か企んでいる時のお前は普段と異なる点がある」
本人に伝える気は無いが郭嘉は謀事を企んでいる時は独特の雰囲気になっている。今回も政庁での話し合いにおいてそのようになっているのを戯志才は見逃さなかった。
「具体的には?」
「そうだな。お前の事を長年見ている経験だな」
「答えになっているような、いないような」
「まさかとは思うが、兵士に紛れ込んで洛陽に行くつもりではないだろうな?」
「行きませんよ。そんな事をすれば蔡琰に何を言われるか分かりませんし、義父(蔡邕)に怒鳴られますよ」
郭嘉は何度も否定しているように洛陽へ行く気は全くなかった。長旅になる事から体調悪化に繋がる危険性を理解しているのが理由である。
「それなら良いが。で、何を企んでいる」
「企む程ではありません。洛陽が乱れるようなら御上(劉弁)と何進を一時的に晋陽で保護する方向で動くつもりです」
「せ、遷都するのか?」
「一時的です。呂布殿が賊軍を始末した後には洛陽に戻って頂きます」
「賊軍というのは袁家の二人だな」
劉弁と何進が洛陽から離れるような事になれば二人を保護した者が官軍になり、原因を作った者が賊軍になる。袁家の二人が賊軍になるのは誰が見ても明らかだった。
「加えて朝廷内部に居る袁家の協力者、具体名は実際に事が起きた時に教えますよ」
「そうならないよう祈るしかないな」
十常侍の乱と董卓の暗躍が起きた際にも朝廷内部では粛清された者が少なくなかった。特に十常侍の乱では族滅された者も居たので呂布配下になる前には洛陽で活動していた戯志才も鮮明に覚えていた。
「袁家が暴走しなければ何も起きませんよ」
「俺も両者の動きに目を光らせておく」
「戯志才殿と伯父上、それに鍾繇殿が居るので大丈夫でしょう」
「奉孝が言うように袁家が何もしなければな」
戯志才は郭嘉から封印された木簡を預かった。洛陽の情勢が不穏になったと感じた際に開けるようにと念を押された。




