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呂布が行く  作者: あひるさん
第4章

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第21話 厄介な連中(二)

ご覧頂きましてありがとうございます。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

差し支え無ければ誤字・脱字の指摘もお願い致します。

 呂布率いる騎馬隊が敵陣に近づくと見覚えのある三人が現れた。呂布は後方に居る高順を通じて本陣に伝令を出して候成と張遼の加勢を要請した。


「貴殿が呂布か?」

「だったら何だ?」

「趙雲を返してもらいたい」

「条件は?」

「州境から兵を退がらせる」

「話にならん。漁陽までの五郡を譲るというなら考えてやろう」

「そのような条件は呑めない」

「ならば決裂だな」


 決裂ありきの交渉を行った劉備に対して呂布は不信感を抱いた。呂布が出した条件は自身もやりすぎだと思うほどのものである。趙雲が大事なら話を持ち帰って公孫瓚に相談するなど手段は幾らでもあった筈だと思わざるを得なかった。


「それなら力付くで奪い返すまでだ」

「力付くで?」


 劉備が関羽と張飛を呼び寄せて三対一の有利な状況を作り出そうとした。


「これで我々が有利に」

「悪いがお前の考えはお見通しだ」


 呂布が合図を出すと騎馬隊の中から高順と候成が現れた。加えて騎馬隊の先頭に張遼が陣取っていつでも加勢出来る態勢を取っていた。


「二人とも油断するなよ」

「分かっておる」

「任せておけ」


 呂布が張飛に向かったのを合図に高順が関羽に、候成が劉備に襲い掛かった。


*****


 三組の壮絶な一騎打ちが続いている様を見ていた張遼が李雛と曹性に声を掛けた。


「準備に取り掛かるか?」

「そうだな」

「軍師殿の指示は覚えているな?」

「攻撃は一度のみ、大将は相手にしない、攻撃が終われば速やかに退却する」

「その通りだ」

「軍師殿から援護が困難な場所と聞いているからな」

「私は公孫瓚を牽制する為にここに留まる」

「分かった」


 李雛と曹性は気付かれないよう後方に下がると手勢を率いて姿を消した。二人と入れ替わるように郭図が姿を見せた。


「三人とも押しているようですね」

「軍師殿!」

「状況の確認に。変化に応じて適切な指示を出すのが私の役目なので」

「承知しました。ですが無茶な事だけはお控え下さい」


 作戦を司る郭図が前線に来たら拙いだろうと思ったが理由を聞いて納得出来るものがあったので諌めるのはこれだけに留めて護衛する事にした。


「劉備という男、あれを討ち漏らせば後顧の憂いになりかねない」

「劉備というのはそこまでの奴ですか?」

「貴殿だけに留めてもらいますが、劉備は皇家に連なる者です」

「本当ですか?」

「朝廷に保管されている系統図に名前があったので間違いありません」


 郭図は朝廷内にある文書庫に出入りして資料を手当たり次第目を通していた。それには皇家の系統図も含まれており中山靖王劉勝の末裔に劉備の名前が記載されていたのを覚えていた。


「候成殿が後れを取るとは思えませんが」

「万に一つが無いとも言えません。出来る限りの手は打ちたい」

「軍師殿の考えを理解致しました」

「張遼殿には後方から回り込んで劉備の退路を潰してもらいます」

「李雛と曹性も居りますが」

「二人の役目は敵戦力を削る事にあります。劉備は単騎で逃げる公算が高いと見ています。張遼殿はそれを狙って頂きたい。三人が纒めて来れば通して構いません」

「心得ました」


 李雛と曹性も一廉の将軍だが劉備を相手にする事になれば遅れを取る可能性が高いと考えた郭図は万全を期する為に張遼を当てる事にした。


*****


 一騎打ちを見守る白馬義従の背後が俄に騒がしくなった。背後に回り込んだ李雛と曹性による奇襲が成功して幽州軍本隊が混乱状態に陥った事が原因である。李雛と曹性は指示通り一回だけ攻撃を行うと姿を消したが、幽州軍は敵を探す部隊と退却する部隊が入り乱れて手が付けられない様相を呈していた。白馬義従を率いる公孫瓚は本隊からの知らせを聞いて攻撃を断念して退却を決断した。その直後から三人に対して何度か退却指示を出したが一騎打ちに集中して耳に入らないので止むなく見捨てる形で退却を始めた。


「若造、味方が居なくなった事に気付いていないのか?」

「何っ!」


 候成に指摘された劉備がチラッと自陣を見ると白馬義従の姿は消えて無くなっていた。後方で何かが起きて白馬義従が撤退したのは誰が見ても明らかだった。


「関羽、張飛。退却するぞ!」

「愚かな。それが許されると思ったか!」


 候成の攻撃は一段と鋭さを増して劉備では手が負えなくなった。劉備の気が逸れて集中力を失った瞬間を候成は見逃さず戟を振り上げて劉備の剣を跳ね飛ばした。


「さて、どうしたものか」

「無念だがこの勝負は後日!」


 劉備は一言残すと馬首を返して退却したが、候成の表情に仕損じたというものはなく笑っているように見えた。候成はしばらくその場に留まった後、劉備を追い掛けるように姿を消した。


*****


 関羽を気にしつつ逃走する劉備を見た高順はある事を思い付いた。


「髭男、お前の大将が尻尾を巻いて逃げ出したぞ」

「黙れ!兄者は策があっての撤退だ。痛い目に遭うのは貴様の方だ」

「はあ?」


 高順は関羽を小馬鹿にして怒りの矛先を自身に向けるように持って行った。


「大将が真っ先に逃亡したのが策略?聞いて呆れるわ」

「皇家の血を引く兄者を馬鹿にするとは。貴様だけは許さん!」

「許さんならさっさと斬ってみろ」


 関羽と刃を交えた高順は手強い奴が相手になっているのを察した。関羽が冷静さを保っていれば戦いを止めて劉備を追走すると判断してその場に留める為に敢えて怒らせた。


「若造に殺られる程老いておらんぞ」

「老いぼれの分際で!」


 高順の思惑通りに怒りで我を忘れた関羽が操る偃月刀は勢いを増したが、高順はそれを上手く躱しながら反撃の機会を窺った。関羽の怒る様を見た高順は思わず笑みを浮かべそうになったが一瞬の気の緩みが命取りに繋がるのだと気を引き締めた。

 

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