012話 つなげて、まきこんで、ふきとばせ
『(えーと、やったか!?)』
目の前の敵は完全に消え去った。撃つのを止めると、減り続けていたゲージの一つが上昇を始めた。状態表示のほうは”ピンチですよマヂヤヴァイですよ”と警告しつづけているが、痛みがあるわけでもないし、そのまま倒れてしまうような状態でもないようだ。
「(まって、急速に反応が拡大しています。扉の向こう側、数多数!)」
倉庫のほうに照準とは別の形をしたものが飛んでゆき、全体をなぞるようにたどる。照準があたったところから順に赤黒い光が点灯してゆき、それは先ほど倒したのよりサイズは小さいが、とにかく数が多い。多少の大小はあるが、倉庫内のほぼ全域がびっしりと覆われている。
『(倒し損ねたの?)』
いわれたとおりのことは遂行したつもりだが、不備があったのだろうか?
「これはさっきのとは別の個体です。想定以上に次元を超えられるまで進化したのが多かったみたいで、向こうの世界との境界がゆるんでいるところに、こぞってはいでてきているようです」
画面に映し出された光の数は~”とりあえずたくさん”っていってよい状態だ。この数を倒すのも大変そうだし、また攻撃をくらったら危険な気がする。
『ど、どうしましょう!?』
倉庫の中に踏み込んでしらみつぶしに倒すとかは、正直厳しい気がする。
「つっこむのは危険なので、とっておきの切り札を使いましょう。リーサ、持たせておいた”時止め”と”ふきとばし”を使います!準備してください!!」
「はいニャ!」
リーサの両手が背中のあたりから伸び、ヘッドセットの頭の部分に何かぺたんと貼られた感じがした。おまけで頭のあたりをぐりぐりナデナデされる。
「アタマの部分につよいアイテムをつけミャした!」
画面のほうには、何かアイコンのようなものが表示され、画面全体が白く点滅をはじめている。これが”とっておき”ということだろうか?
「ショウさん、次のショットが”相手をまとめてふきとばす一撃”になるようにセットしました。弾数は一発かぎりなので、これでなんとか決めましょう!」
点滅がとまり、照準が少し大きく表示され、倉庫の入口部分に向いている。発射準備はできたってことなのだろう。
『でもこれ、真ん中を狙って、全部にあたるものなんでしょうか!?』
”時止め”とやらの効果も出ているのか、さっきまで動いていたたくさんの表示は動きを止まめている。”まとめてふきとばす”という効果がどのくらいかはわからないけれど、一発限りというプレッシャーが重たい。
「このまま撃つだけだとダメです。今のとめている状態なら照準を動かしてターゲットを寄せることができるから、よせてあつめてひとつのかたまりにしちゃってください!」
『え?よせてあつめる??』
「ほら、こうやるニャ!」
両腕のそでの部分をぎゅっとおさえつけられたようなような感じがして、照準がすーっと動く、リーサが動かしているようで、そのままはしっこのターゲットに狙いが向かう。
すると、赤黒いターゲットは照準にすいつくようにくっつき、銃口の周りをゆるやかにただよう。そのまま横に少し動かすと、となりのターゲットにぶつかり、巻き込まれて、ひとまわり大きなターゲットに変わった。
「この調子でどんどんつなげていって、ひとかたまりにまとめてください」
おさえつけられていた感覚がなくなった。こっからは自分でやれってことらしい。そのまま次もと照準を動かしてみたが、勢いが強すぎるたらしく、くっつけようとしたところがふたつに別れてしまう。力加減も必要そうで、思ったより面倒かもしれない。
「あまり力を入れすぎるとばらけてしまいます。時間はあるのでていねいにまとめてあげてください」
「スープの脂をチョップボーでつなげる感じで、お願いしミャす」
時間は止まっているというが、なるべくいそいだほうがいいだろう。照準をこきざみに動かすことでターゲットを巻き込み、すこしずつ大きなひとつのかたまりにまとめる。やがて、倉庫の内部に群がっていたターゲットは、一つの大きなかたまりにまとまった。
『これでどう?大丈夫そう!?』
大きさは最初にたおしたやつより大きくなっている。
「これならいけそうニャの!」
「一つにまとめたターゲットを、強化したショットで奥の世界ごとふっとばします。真ん中を狙ってまとめて撃ち抜いてください!」
『ようし、真ん中によせて、ねらいをつけて、こうか!』
いわれるまま照準を中心に向けてトリガーをひくと、ひときわ大きな弾がうずをまくように放たれ、ターゲットの中心を貫いた。渦の回転はターゲットやペラペラのドアを巻き込み、すべてを中心に巻き込んでゆく。ほんの数秒で、はじめから何もなかったかのように、映っている景色が元の状態に戻った。ドアがぺらっぺらになってもいなければ、赤黒い化け物がうごめいていたりもしない、なんのへんてつもない、静かなコンビニ裏の倉庫前の景色だ。
『今度こそ倒したの?』
「はい、もう大丈夫です」
『そっかぁ。でもさぁ、これ画面がなんか”やばい”気がするけど?』
先ほどまでの特別なショット向けのエフェクトは消え、”まじやヴぁいです表示”に戻ったようだ。ひび割れたエフェクトが入ったままの画面は赤く点滅を繰り返していて、なにかもうひとつ攻撃でも喰らったら、危険なことになりそうなやつだ。
画面の端に見えるゲージは少し残っているし、痛みは感じないとはいえ、そのままにしておいてよい状態でないことはたしかだろう。
「直撃だったため、このままだと大変なことになります。リーサ、まずは治療を!」
「(ニャ!)」
背中のほうに、ほんのり重さを感じる。手を伸ばすと柔らかいものにあたる。
「(ニャ!おナオシするので、じっとしててほしいニャ!!)」
リーサが身体のあちこちから上半身をのばして、ぺたぺたとさわってくる。
じんわりあたたかい感触とともに、画面のひびわれや減ったゲージが戻ってゆく。
完全回復ではないが、ひびとか点滅とか、危険そうな表示はなくなっていった。
「これでだいじょうぶです。残りは少しずつ回復してゆけばでしょう。あとは速やかに帰還、おうちにかえりましょう。あ、ヘッドセットはもう外してだいじょうぶです」
画面は移動モードに戻っていたが、モノクロ表示で、操作も受け付けなくなっている。何か文字が表示されているが、やはり読めない文字だった。
『(なんか”今回は終わり”的なメッセージなのかな?)』




