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どちらかが馬鹿 11


被告人が二人。でかいのと小さいの。傍から見てでかいのが小さいのを押し倒しているように見えて、傍から見て小さいのはでかいのに押し倒されているように見えた、らしい。

要するに自分たちだった。流石に靴を脱いで靴下になったでかいのはリビングの床に正座させられ、その横に未だに事態を把握出来ていない小さいのが何度も首を傾げながら正座させられている。自分が巻き込んだわけだがなんとも気の毒な女だった。

「はい言い分を聞きましょう。ともりくん」

「…詳しくはあとで説明するけど御影が危ないかと思った。慌てて学校から走って帰って来たらリビングで御影が倒れてた。抱き起こしたら特に何の問題もないことが分かって安心したから脱力してた」

「はいユキ」

「…少し疲れたから横になって休んでたらいつの間にかこんなことになりました…」

何がなんだか分からないという表情の彼女に同情した。単なる被害者じゃねえか。

「はい言い分は分かりました。ともりくん、つまり悪意も害意もないと?」

「ない」

「同意もないと?」

「……」

ない。

裁判官であらせられる三木は深く深くため息を吐いた。

「…これが同意の上ならユキに春が来たってみんなで大騒ぎ出来るのに」

「面目ないです…」

「全くだよ。あんたに彼氏出来ないのを三十七人が心配してるんだからね」

「心配が重い…もてなくてごめんなさい…」

「はあ…まあ、いいや。どうせ事故なのははじめから分かってたし」

「え。そうなの? なんで私正座させられてるの?」

「ユキが正座したからでしょ」

「おかしいな…飛び込んで来た般若が『はい貴様らそこ正座ァ!』って叫んだ気がしたんだけどな…」

「あ?」

「吉野大好き!」

痛々しい笑顔だった。

「まあ、もう正座はいいや。会議するから床拭いて、片付けよう」

ちゃっちゃと三木が手を振って立つように促した。妙に様になっている。

やれやれと立ち上がり、自分が踏み荒らしたリビングを少しの罪悪感と共に見やる。フローリングにくっきりと足跡が残っている。

「大丈夫大丈夫。掃除機かけて水拭きすれば。シートもあるよ」

簡単に御影が言っててきぱきと動き出す。あっという間に土汚れは取り除かれたので、シートをもらいなるべく丁寧に磨くようにして拭いた。その間に三木が紅茶を淹れる。あたたかい匂いがふわりとリビングに広がった。

「わーアールグレイ」

「あとでミルクティーにしな」

「うん、ありがと」

「どういたしまして。ーーーで? ともりくん」

真剣な面持ちになった三木に振られ、渡されたマグカップを受け取りながらうなずく。

どこから話せばいいのか。どこまで話せばいいのか。

御影の視線が自分を見つめるのを空気で感じながら、考え考え言葉を紡ぐ。

「…兄弟が、いる。双子の兄弟が」


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