国体を観よう! 〜その8・了〜
『徳と信用 信徳国体!』
いよいよ最終日です!
決勝戦、順調に進んでいますが、団体総合優勝は今のところ開催県の信徳県と同じ沿岸ブロックの高南県が激しいデッドヒートを繰り広げているようです。
引き続き江波一成です。
ここまでの試合結果なんですが
【ピン級・決勝】
◯相良直紀(沿岸ブロック・信徳学院)【3ー2】羽嶋 奏(沿岸ブロック・高南工業)✕
【ライトフライ・決勝】
◯具教達規(沿岸ブロック・信徳学院)【4ー1】山田信一(沿岸ブロック・大咲南)✕
【フライ級・決勝】
◯斉野平均((沿岸ブロック・信徳学院)【RSC2R・1分56秒】我那覇遼楠(南大陸琉球ブロック・琉球)✕
ここまで軽量級立て続けに信徳県勢が優勝を決めています。
ピン級、ライトフライ級は相当な接戦だったんですけれど、いずれも信徳県勢の手が上がりました。
ライトフライ級、大咲南の山田さんは素晴らしいスピードのフットワークで3ラウンドを戦いましたが、どうもジャッジは山田さんのフットワークを
『エスケープ行為』
とみなしていたらしく、思っていた以上に点差が開いてました。
そして圧巻だったのがバンタム級とフェザー級の決勝戦でした。
【バンタム級・決勝】
◯梶川元貴(沿岸ブロック・高南工業)【KO2R・17秒】三木重光(沿岸ブロック・信徳学院)✕
【フェザー級・決勝】
◯護山蒼次郎(沿岸ブロック・高南学院)【5ー0】田中 隆(沿岸ブロック・信徳学院)✕
いや、すごかったですよ。
バンタム級の決勝なんですが、この2人は沿岸ブロックの試合で何度か対戦していまして、既に格付けが出来上がっちゃってる感じだったんです。
だから梶川さん、もう最初から攻めまくって2ラウンド目にしぶとく抵抗する三木さんのみぞおちに左アッパーを叩き込んで10カウントを聞かせてました。
勝利の瞬間
「どんなもんじゃい!」
と、リング上で雄たけびをあげてレフェリーから注意されてましたけど。
試合後、梶川さんは着替えもせずに汗だけざっくり拭くとすぐさまフェザー級の決勝戦、護山さんの応援に回ってました。
高南県内での試合経験しかない護山さんは全国的にはもちろん無名の存在で、ハードパンチを武器に決勝まで勝ち上がってきた信徳県、田中さんとの試合。もちろん下馬評は田中さんに傾いていたと思います。
しかしながらリング上での護山さんは、とても護山さんとは思えないくらい何と言いますか?光を放っていたというべきでしょうか?
改めてこんなことができる人なんだと思い知りました。
細身の護山さんが見るからにハードパンチャーな田中さんに対して、いきなり踏み込んでのワンツーストレートをきっかけに、接近戦と言うか打撃戦を選択。
開始早々、火の出るような真っ向勝負に場内大歓声!
なぜこの戦法を選択したのか?
後に護山さんはこう言いました。
「田中は見るからに乱打戦を好んでいたから、その土俵でやり合っても俺がやり合えるってところを最初に見せておいたってわけ。そうすればあいつは自分の得意なパターンに持って行きづらくなって、俺のやりやすい展開に持っていけるからな。ペース争いの初歩ってわけだ、がはは!」
確かにその言葉通り、護山さんは、強打を荒々しく振り迫ってくる田中さんに対し、接近戦でも、うまく回り込みポジションを取りながら細長い腕をしっかり畳み込んで、ショートの左フックや右アッパーを効果的に使い、少し空間がいたらショートのストレートを間髪入れず送り込むなどして、本来、田中さんが好むはずの接近戦を見事に支配しました。
一見消耗戦のように見えて、護山さんは序盤で完全にペースを掌握したのです。
とはいえ、田中さんもやはり強豪、信徳学院の実力者。
2ラウンドの中盤に接近戦の中で護山さんのボディにパンチを集めて距離が中途半端に開いたところを狙ってクロス気味の右フックをヒットさせ、護山さんの膝を揺らしました。
ここで護山さんは逆に下がらずにカサにかかって攻め込んできた田中さんにワンツーのショートストレートを放って追撃をさせませんでした。
そうして迎えた最終ラウンド、護山さんは、それまでの接近戦から普段通りの出入りの早いボクシングに切り替えて田中さんを翻弄。
ここで序盤の布石が効いて、田中さんは強引な攻めができず、そのまま試合終了。
「ただいまの競技の結果をお知らせします。5ー0のユナニマスディシジョンによりまして、青コーナー護山蒼次郎選手。沿岸ブロック高南学院高校のポイント勝ちです」
場内アナウンスが響いた一瞬だけ、感極まったような表情を見せた護山さんでし た が、すぐにいつもの様子に戻ると誇らしげに両手をあげて胸を張りました。
負けた田中さんも脱帽したかのように護山さんに拍手を送ってから一礼してリングを降りて行きました。
大変だったのはリングから降りた後でした。
「もりやまさ〜〜〜ん!よかっだ・・・本当に嬉しいっす!!」
・・・・あの梶川さんが、あの顔をぐしゃぐしゃに崩して涙ボロボロに流しながらわんわん泣いて護山さんにすがりついているんです!
「おれわぁ〜おれわ・・・前からずっと護山さんの、もりやまさんにふさわしいこの姿こそ見たかったんですよぉ〜〜・・・・」
・・・・絵面がちょっとあれですけど、感動的な場面だと思います。
実際、高南県の皆さんは拍手大喝采、感極まってもらい泣きしてる人さえいますから。
あの高南工業高校の岩倉先生も高南学院高校の顧問の先生も、目を潤ませて本当に本当に嬉しそうですね。
本当にいい試合でしたし、護山さんの人となりがよくわかるお話になりました。
誰ですか!?
ヤクザの幹部が泣きながらチンピラにすがり付いてるみたいだなんて言っているのは!
こんな感じで信徳県と高南県とのデッドヒートが展開し、ウェルター級の決勝戦。
【ウェルター級・決勝】
◯李 泰誠((沿岸ブロック・高南工業)【RSC2R1分27秒】五戸甚伍朗(陸奥ブロック・陸奥商業)✕
高南工業高校3年の李さんが陸奥ブロックの選手に強烈な左フックを決めて2ラウンドRSC 勝ちを収めて信徳県と高南県の優勝者は3−3のタイスコア!
決戦はミドル級の決勝戦へ。
この大会で引退する堂園さんと今年のインターハイでミドル級を制した高南工業高校3年の伊南口さん。
この2人は学年で言えば同級生になる年で、過去に2度国体の沿岸ブロックで対戦して2度とも伊南口さんに軍配が上がっているそうです。
そしてこれが2人にとって最後の対決。
信徳県と高南県とのデッドヒートもありまして、場内の盛り上がりは最高潮です。
プレッシャーをかけてじわじわと前進する伊南口さんと、185cm超の長身から速い左を突いてフットワークを使う堂園さん。
信徳県サイド、女子の声援がすごいですね。
これまでの試合では、伊南口さんの圧力が堂園さんのスピードを殺してコーナーに詰めては攻め立てて勝負をものにしていたそうですが、今回はそうなる前に堂園さんが巧みに体を入れ替え回り込んでは左右ストレート、離れ際に左ジャブで牽制と接近の機会をことごとく潰していっています。
最終ラウンド、信徳県サイドの女子たちの声援が最高潮に達する中、ついにロングレンジから堂園さんが伊南口さんにワンツーからストレートの3連打を決めてダウンカウントを奪取。
これが決定打となりました。
「只今の競技の結果をお伝えいたします。5−0ユナニマスディシジョンに寄りまして赤コーナー堂園晴貴選手沿岸ブロック信徳島田ボクシングジムのポイント勝ちです」
コールの瞬間、堂園さんは天を仰ぐように顔を上げるとそのままポロポロと涙を流し始め、空いている方の手を握りしめて小さくガッツポーズ。
リング中央で伊南口さんとハグして健闘を称え合いリングを降りた時、信徳県サイドから『大』堂園コールが・・・
あぁ、あの人たちは堂園さんの勤め先の人たちかな?
みんな心の底から嬉しそうだなぁ。
ふと見ると試合を見ていた僕たちのすぐそばでは顧問の西木先生も優しい目で拍手を送っていた。
そして言ってました。
「人にはいろんな選択肢があって、どれを選ぶのもその人の運命。それを素直に受け入れて素直に向き合うことができればどんな形であれ、結果は出るんだと信じたいね」
【ミドル級・決勝】
堂園晴貴(沿岸ブロック・信徳島田ボクシングジム)【5−0】伊南口徹(沿岸ブロック・高南工業)




