薙沢県スポーツ難民の独り言
はじめまして。
自分は薙沢県出身の高校3年生で、いまはとある県のとある高校のボクシング部員をやらせていただいております、しがない三下でございます。
以後お見知りおきの程を。
え?お前の名前はどこの誰?
いえいえいえいえいえいえいえいえ、そんな名乗るほどの大層な名前ではございません。
そうですねぇ、モブ山モブ次郎とでもしておいてください。
さて、高校生活最後の夏休み、全国大会出場の夢やぶれ、他のボクシング部員たちと共に薙沢県に帰省してまいりました。
他校のボクシング部にも薙沢県出身者は結構いましてね、高南、信徳、武領、唐河の4県にいる薙沢県出身者が勢揃いしますと結構な人数になりますよ。
まぁスポーツ留学なんてそんな結構なもんじゃなく、各県の学校関係者の間では
『薙沢県スポーツ難民』
なんて呼ばれ方をしています。
すボクシングに限ったことじゃなく、野球サッカーバスケットテニスに柔道空手にハンドボールにバドミントンに剣道にレスリングに茶道に書道に合気道・・・・これらをやりたくても薙沢県にはそんな環境が全くもって整ってないから他県に脱出する青少年少女たち・・・・将来を担うはずの若者たちがどんどん地元を見限って他県に流出しているってどうなのよ?
教育県を名乗る県としてどうなのよ?
・・・・そんなことをしがない自分が言っててもしょうがないから久々に揃った地元ボクシングのコミュニティで高校生活最後の合同練習に参加するとしましょう。
少し興味のある話も聞きましたしね。
薙沢県内の高校に初のボクシング部?ボクシング同好会が発足したと風の噂で聞きまして、帰省した時に、十河学園ボクシング部の連中が偶然、国際教育大学付属国際高校ボクシング同好会の連中に遭遇したと聞きました。
聞けば誰を見ても何か一癖ニ癖ありそうな雰囲気で、驚愕したのはそのメンバーの中にUJ 時代対戦相手を再起不能にして、山中に埋めた疑惑がある井口という選手が紛れ込んでいたということです。
その真偽のほどはともかく、今日から薙沢県スポーツ難民・・・・ではなくて薙沢県出身者ボクシングコミュニティ合同練習が始まります。
合同練習の場所なのですが、国教大附属国際高校ボクシング同好会顧問、西木先生のご尽力により国教大附属高校体育館を使用させていただけることになりました。ご協力感謝いたします。
薙沢県にボクシングだけで実はこれだけ潜在的な競技志望者がいるという事実を県はどう受け止めるんでしょうかね?
広々とした体育館に国教大附属国際高校ボクシング同好会の6名他各県の各高校ボクシング部に所属している薙沢県出身者、ざっと30人はいますよ?
これどういうこと?
この場にいる人間で唯一の教師である西木先生が随分と手慣れた様子でトレーニングスケジュールをみんなに伝えています。
ちょっと待って先生!?
噂で聞いたんですけど、先生って全く全然これっぽっちもボクシングの経験ない、って聞いたんですけど?
なんか手際が良すぎません?
「いやぁ~同好会の顧問になってからたくさん勉強したからねぇ、あはは」
・・・「あはは」で済むことなの?
どうなの?・・・って、あれ?誰かが俺の服を引っ張っている。
なんだ、練習に紛れ込んできた小学生じゃねえか?
と、自分不用意に口を開こうとしましたら、あちらの方から十河学園高校ボクシング部の部員がすっ飛んできて、こそっと耳打ち。
「(小声)国教大附属の1年ですよ。間違っても子供とか小学生とかと言わないように。あの井口が(ヤバいヤツ)認定しているくらいですから」
背筋に寒いものが走った。
え?よかったらミット一緒にやりませんか?って?
こうしてみると無害な感じなんだがな?
ま、自分はミットを受けるの『だけ』
は、うまいと言われて3年間ボクシング部に居座り続けた男だ。
どれ叩いてみたまえ。
・・・・なんだかペチペチ叩いていて妙に可愛さがあるな。
〜数ラウンド後〜
「モブ山さん、大丈夫ですか!?」
肘を押さえてのた打ち回る自分を心配そうに覗き込むチビくんの気遣いで却って心が痛い・・・・
え、これ続くの??
〜薙沢県スポーツ難民の独り言その2に続く〜




