〜プロローグ・それはどうしようもない始まり〜
それはとある地方で繰り広げられた奇跡のような日々の軌跡を辿る青春の日々
ある年の暮れのこと、薙沢県、国立国際教育大学附属国際高校美術教諭の西木匠は今日の職員会議のことを脳裏に浮かべて美術室の椅子に深く腰掛けて大きくため息をついていた。
教育県を掲げる薙沢県に美術教諭として赴任して数年、この進学校と名高い男子校は薙沢県の教育に対する歪な姿勢をそのまま色濃く引き継いでいる運営体制であり、この年自身が顧問を務めていた美術部を「学科外活動の見直し」を理由に廃部に追い込まれ、西木匠はこの学校で教鞭をとると言った情熱が目に見えて薄れて行くのを感じ、それがついさっきのため息に繋がっている。
それにしても今日の職員会議の内容もそうだった。
国際教育大学附属国際高校。
生徒たちの学科外活動すなわち部活動などに対しての捉え方があまりに歪であり野球部さえも存在していない、極めて稀な高校となっている。
おそらくは一部の保護者から教育委員会に対して告発があったのだろう。
部活動の存在を認めない学校側の偏った運営について。まともな運動部はほとんどなく、文化部も名前だけでまともに活動してるかどうか怪しいところばかりである。
むしろ唯一まともに活動していた筈の美術部がなぜ廃部にまで追い込まれたのか?
西木匠は一人ごちた。
「美術、芸術は金食い虫だから、ということか」
あの時自分はどんな顔して職員室で職員会議に参加していたんだろう?
一本調子の覇気がない声で、だらだらと司会進行する学年主任の教諭。
職員会議中だというのに職員室内はテレビの電源がつきっぱなし。
議題が自分たちにとって面倒極まりないからサクサク流そうとしているだけ・・・・興味を失って窓の外に目をやってぼーっとしていた西木匠に突然声がかかった。
・・・・では西木先生にお願いしましょうかね?
突然名前を呼ばれて意識を職員室内に戻すと職員室のつけっぱなしのテレビからNHK 教育テレビでやっているアマチュアボクシングの中継が流されていた。
「お願いしますよ、西木先生。ボクシング同好会の顧問をね。美術部潰れて暇だったでしょう」
教育県の進学校が教育委員会の監査をかわすためだけに立ち上げが決まった同好会の顧問を押し付けられた西木匠は改めて一息つくと教卓の上に置いてあったスマートフォンを手にしてどこかに電話をかけ始めた。
初めまして
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