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商人の護衛



 「鈴木さんか……話しかけたくないな……。」


 剣崎と隼は九条に頼まれ、鈴木という天鷲城 配下のプレイヤーを護衛するため、鯨波という港町へとやってきた。


 鯨波のようなmillionwarsに存在する港町は、プレイヤーの所有できないエリアということもあり、多くのプレイヤーやNPCが交流の場所として利用している。


 「剣崎、この中からどうやって、その鈴木さんを探すんだ?」


 「……一番目立つ人。それが鈴木さんだ。ハァ……見つけた。」


 赤い髪の毛に体中に身につけたキラキラと光る装飾品、剣崎は鈴木と一度挨拶をしただけの中だったが、問題なく鈴木を見つけ合流することができた。

 

 「迎えに来ましたよ、鈴木さん。……すごい荷物ですが、今度は何を買ったんです?」


 「今回は城に住むNPCのための武器を九条さんに頼まれてね、城に戻ったら見せてあげるよ。それより、そこの彼は新人さんかな?はじめまして、僕の名前は鈴木。リアルでもよくみかける苗字だから、本名じゃないか心配されることが多いけど、安心してね、本名じゃないから。この名前だと海外の人に受けがいいんだ。」


 鈴木との簡単な自己紹介を終え。剣崎と隼は町の外に待たせている兵士百人と大量の荷物を乗せた馬車を操る鈴木と共に天鷲城へと向かった。


 「鈴木さん。今回、交流島ではどんなものが売られてました?」


 「まぁまぁの品揃えだったよ。レア武器は少なかったけど実用性のある武器が多かったね。お陰で売った武器のお金全部使っちゃったよ。」


 海外のサーバーも日本サーバーと同様に群雄割拠の時代が再現されており、取り扱われる武器や防具もサーバーによって異なっている。 


 そのため本来手に入らない別のサーバーの武器や防具の取引を行うための島、交流島が作られた、

 

 「止まれ!」


 馬車の中で剣崎、駿、鈴木が話しに夢中になっていると、木陰からプレイヤーが馬車の前に飛び出し、道を塞いだ。


 「悪いが、馬車を置いていってもらおうか。」


 別の木陰からゾロゾロと一人また一人現れ、あっという間に周囲を囲まれていた。


 野良のプレイヤー。それも盗賊を生業としている厄介な類いのプレイヤー。


 「……【ハイエナ】か。」


  朝飛の率いていた【朝飛傭兵部隊】のように盗賊として遊んでいるプレイヤーの中にも組織を結成しているものたちがいる。


 そして、その一つが【ハイエナ】と呼ばれる組織。【ハイエナ】にはリーダーというものが存在しておらず。野良プレイヤー特有の死亡時のランダムリスポーンを利用して、各所で集まったプレイヤーで徒党を組みプレイヤーを襲っている。


 現在目の前を囲んでいる存在もだが、その実力と統率力は見事なもので、失う物のない彼らの略奪は高レベルのプレイヤーが警戒するほど。


  

 「……剣崎くん、駿くん。この買ってきた武器の出番だ。タイミングは任せるから、君たちは兵士五十人を使って後ろの馬に乗っている盗賊の相手をしてくれないか?僕は残った兵士に命令をして、正面の盗賊の相手をするから。」


 小さい声で囁かれた鈴木の作戦に二人が頷くと、鈴木は馬車から飛び出し、馬車から離れた場所で道を塞ぐように立っている盗賊と会話を始めた。


 「なぁ!取引をしないか?」


 「……取引できる状況だと思ってんのか?」


 「まぁ、聞いてくれ。こっちは騎馬が十人と歩兵が九十人、そしてプレイヤー三人。そっちは、プレイヤーが五十人ってところか?この人数で戦ってもお互い損失のがデカイだろ?」


 「……それで?」


 「お前たちの所にNPC五十人を使って馬車の武器を半分運ばせる。だから残りのNPC兵士と俺たちプレイヤーは見逃してくれないか?」


 「……ダメだな、お前は残れ。それなら半分のNPC兵士とお前以外のプレイヤーは見逃してやる。」


 「……わかった、それでいい。では、先にプレイヤー二人と兵士五十人を通すから道を開けてくれ。」


 鈴木の命令で兵士五十人は馬車へと向かい、武器を手に取り鈴木の前に並んだ。


  「おい、それはまさか……!」


 驚いた盗賊の頭に一本の矢が突き刺さった。


 「相手が射程に入ったら、じゃんじゃん撃ってね〜。」


 鈴木の運んでいた武器の名前は諸葛連弩。連弩を、かの有名な諸葛孔明が改良したもので、連弩の上部には弾倉が備えられており、装填から射撃までの動作を連弩に付いているレバーを往復させることで行うことができる。


 これにより、通常の弓よりも扱いやすさと速射性が優れた連弩は連射性能を兼ね備えた武器となった。


 「ぐ……!くそ……近づけねぇ!後ろの奴らは何してんだ!」

  

 盗賊たちは、鈴木の命令で馬車を守るために、連弩を構えて広がったNPCにより近づくことが出来ず、馬車の裏に配置した仲間の強襲を待つほかなかった。


 だが、馬車の裏側から聞こえる金属同士のぶつかり合う音や男たちの低く響く雄叫びにより、盗賊たちは馬車の裏側でどの様なことが行わているのかすぐに理解した。


 「相手はたかが百人!天鷹城の兵士の力を見せつけてやれ!」


 兵士に預けていた馬に跨った剣崎の号令により士気の上がった兵士たちは、数で勝る盗賊たちを圧倒していた。


 「なんなんだこいつら!ただのNPCのはずなのにめちゃくちゃ強ぇ!」「聞いてなかったのか!?こいつら天鷹城の奴らだ!」「そんなの勝てるわけないだろ!」


 剣崎の命令で動くNPC兵士により、盗賊の半分は装備を残し消滅して、もう半分は盗賊らしくちりじりに逃げた。


 「鈴木さん!お待たせしました!」


 馬車の裏に位置していた盗賊を撃退した剣崎たちは、前で連弩を使い、盗賊たちを馬車に近づけないよう戦っていた鈴木たちと合流した。


 「悪いね剣崎くん、面倒をかけて。隼くんは初めての集団戦闘どうだったかな?」


 「すっごい迫力でした!!……それと結衣さんの言っていた、腕っ節だけじゃダメって言葉の意味を改めて理解しました。」


 隼は目の前で起きていた戦いの光景と自分の可能性に目を輝かせながら鈴木に対して元気よく答えた。


 「そうだね……腕っ節だけじゃ、このゲームで勝ち残ることはできない。さぁ、ここからはボーナスタイムだ!存分に勝者の特権を味わおうじゃないか!」


 突然、目の色の変わった鈴木はNPCの兵士から馬を奪い、勝ち目のなくなった戦いから逃げようとする盗賊たちを追い立てるように馬を走らせた。


 「ふ……ふざけるな!俺たちを襲ってなんの得があるってんだ!盗賊の装備なんてたかがしれて……!!」


 「確かに、君たち盗賊の装備は安物ばかりでたかが知れている。だけどね、どんな安物でも、いつかの備えになるかもしれない。悪いけど根こそぎ貰うことにするよ。」


 鈴木は逃げる盗賊の背中に槍を突き刺し、剣崎を手招きして逃げた盗賊を一網打尽にした。



 「ふぅぅ……大量、大量!」


 鈴木の前には倒れた盗賊のプレイヤーの残した装備が大量に集められており、NPCの兵士が鈴木の命令で積めるだけ馬車に詰め込んでいた。


 「鈴木さん、馬車に載せられない分はどうしますか?」


 NPC兵士たちと共に装備を馬車に運んでいた剣崎盗賊隼が鈴木に尋ねた。


 「そりゃもちろん、皆で運ぶに決まってるでしょ!」


 「え………………」


 こうして剣崎と隼による鈴木の護衛は、予定していた何倍もの荷物を運ぶこととなり、一部は馬車で、残りは剣崎、隼、そしてNPCが片手に携え天鷹城へと運んだ。


 ……後日談なのだが。まだ高校生である剣崎と隼に、予定していた以上の時間を浪費させたことで鈴木は九条に年甲斐もなく叱られたという。

 



 

 

 

 



 

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