訓練場
「やっと来た!こんなに待ったんだから楽しませてくれないと許さないよ!」
剣崎と隼は結衣との約束で訓練場を訪れていた。訓練場には様々な種類の木造武器が置かれており、それを使うことでNPC兵士や仲間のプレイヤーと模擬戦闘をすることができる場所。
「っで隼くんは何の武器を使うの?ちなみに私は薙刀!薙刀はいいわよ、力の弱い私でも体を上手く使えば男と互角以上に渡り合えるもの!」
「俺は……やっぱり初めは慣れてる木刀ですかね?」
「ふーん。まぁ何度でも付き合ってあげるから試してみたら?剣崎、合図お願いね。」
隼と結衣は、お互い木でできた武器を持ち、空いているスペースへ移動し向き合った。
「始め!」
二人が武器を構えるのを待ち、剣崎の一声で模擬戦が開始した。隼はなんでもソツなくこなすタイプの人間で、高校から始めた剣道も剣崎と共に三年生を差し置いて大会メンバーにも選ばれていた。
そんな隼は剣崎に勝つことに執着し次第に剣道の世界にのめり込んで行った。だが怪我により剣崎は剣道を離れmillionwarsというゲームで腕を磨いているという。そんな理由で始めたゲームだったが隼にとってもmillionwarsは特別なゲームとなった。
「だーー!ダメだ!勝てねぇ!」
隼と結衣の模擬戦は五回行われ、初めの試合は結衣が圧倒的な力を見せつけた。初めに攻撃を仕掛けようと隼が薙刀の間合いに詰めるが、結衣は脇構えからの胴打ちで冷静に打ち込んだ。
結衣が放った胴打ちはよく訓練されており、体を反転させる際いの力を薙刀に乗せ打ち込んでいた。薙刀の長さも相まって打ち込まれた一撃は強力な一打となり隼のガードを大きく弾いた。
すかさず結衣は再び脇構えからの胴打ちを放ち初めの試合を勝利で終えた。その後の試合も結衣は薙刀のリーチと体を上手く使うことで、終始一方的な攻撃を仕掛け、隼に一本も取らせずに勝利した。
「あんまり落ち込んでなさそうだな。俺が初めて結衣さんに負けた時は木刀の間合いに踏み込ませてすらもらえないことにめっちゃ凹んだんだけどな……。」
「いや、悔しくないわけじゃないけど。今はそれよりも面白いが買ってるだけ!剣崎、お前はこの天鷲城の中で何番目くらいに強いんだ?」
「二十番目くらい……」
「つまり俺より強いやつがもっといるってことか!」
「あんたたちが言う強さが何を示しているのかは分からないけど。このゲームで腕っ節の強さなんて些細なものよ。力に知識、経験に技術、全部できるようになって、ようやく一人前なんだからね。」
「はい!あの、結衣さん。今度時間がある時でいいので薙刀の使い方教えてもらえませんか?」
「薙刀に興味があるの!?なんなら今からでもいいわよ!」
「いえ、今日は剣崎にこのゲームのことを教えてもらいたいので、明日以降お互いの都合がいい時にでも教えてください。」
結衣との模擬戦が終わり、剣崎は隼を連れ再び城内の案内へ戻った。