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予期せぬ襲撃



 剣崎と剛翼の戦いが終わり、休憩に入った天鷹城陣営に城から離れた場所に見張りとして配置していたNPC兵士から敵襲来の通知が届いた。


 「……一騎打ちイベントの開催期間だからと油断したか」


 millionwarsには幾つかの暗黙の了解が存在している。一騎打ちイベントの最中は城を攻めない、敵対する際は宣戦布告を行う。当然、暗黙の了解なので、必ず守らなくてはいけないものではない。


 「何か問題でも起きましたか?」


 対抗戦の相手である小鴉城 城主の潤色が天鷹城の異変を感じ取り九条に声をかけにやってきた。


 「……天鷹城に向かう敵兵の影あり、と。NPC兵士からの連絡がありました。申し訳ないのですが……」


 「あぁ、はいはい!対抗戦は一時中断しましょう。それで、我々はどうしましょう?お手伝いしましょうか?」


 「いえ、我々だけで問題ありません。……勝っても負けても合併することですし、もし、お暇でしたら、是非安全な距離から観戦していてください。」


 九条の異常なまでの自信に、潤色は驚いていた。宣戦布告なし、それも一騎打ちイベント期間を狙った対抗戦の最中。どんなに多く見積ってもNPC兵士の生産量は千人いたらいい所。準備万端の相手を打ち負かすには心許ない。


 「さて……と。」


 『敵兵襲撃、至急城門前に集合』九条が全体メールで送った内容は以外なほどシンプルなものだった。メールを見た、その場に集まった天鷹城のプレイヤーたちは急いで城の前へと走って向かった。


 (流石は、あの天鷹城のプレイヤー。メール一つで騒ぎ立てることなく行動に移せている。)


 二戦の敗北により、既に潤色は小鴉城へと天鷹城を吸収することから城主 九条の実力を見極めることに目的を変更していた。


 「杉下さん、今回は弓弦さんの弓騎兵を主軸にして『十兵』で行こうと思います。」


 「……あれ、精神がすり減るから嫌なんですけどね。でもまぁ、それしかないですよね……」


 杉下は地図を取り出して、全てのシステムを使用できる城主と指揮官だけが使用できる『部隊指揮』を開始した。『部隊指揮』とは遠隔でNPC兵士を操ることができるシステム。


 城主と指揮官は城内に存在する駒師をしているNPCに依頼をして、大(千人)中(百人)小(十人)、それぞれの大きさの駒に『歩』『馬』『騎』『弓』『長槍』『弓騎』という文字の刻まれた駒を金銭と引き換えに手に入れることができる

 

 駒は地図上で自分の在籍する城内か城門前に置くことで兵士の姿で現れる。洗われたNPC兵士は城主、または指揮官の手によって簡単な命令を与えて動かされる。




 だが、一見万能そうに見える『部隊指揮』には弱点が存在している。


 「……杉下さんは戦場に行かれないのですが?」


 そう、地図には敵、味方の姿が反映されないのである。故に使用するものは少なく、いたとしても指揮官が自ら戦場に赴くことがほとんどだ。


 「私が天鷹城から離れたら天鷹城を守る人がいなくなってしまいますから。それに……」 


 杉下は地図上の天鷹城、城門前に一つ『弓騎』の文字が刻まれた中くらいの駒を最前列に置き。

 『弓』『騎馬』『歩』『騎馬』『弓』の形で小さい駒を大量に並べた。


 「私は弱いので!」


 潤色が杉下と話している間も九条は戦いの準備を進めていた。


 「萩村さん、朝飛くんに、俺の合図で出陣できるよう準備するよう伝えて。それから、戦場の情報を杉下さんと朝飛くんに事細かく伝えるように。」


 九条は仲間に甲冑を身に纏うのを手伝ってもらいながら、仲間に指示をだす。


 「潤色さん。俺たちは行きますが、潤色さんたちも着いてきますか?」


 「……勉強させていただきます。」


 潤色は杉下の指揮官としての実力を見たい気持ちを押し殺し、天鷹城の戦場での戦いを小鴉城の連れてきた仲間と見学することを選んだ。


 九条たちが城門前にやってくると、既に天鷹城のプレイヤーはおらず、新しく杉下により配置された百人の騎馬に乗ったNPC兵士と馬がプレイヤーの人数分配置されていた。


 「どうやら戦いはまだ始まっていないようです。急ぎましょうか。」


 九条たちは馬に乗り、敵の姿が目撃された場所へと馬を走らせた。


 「お、ちょうど始まったみたいですね。」


 九条の視線の先では大量の十人の兵士を率いる天鷹城のプレイヤーが相手を押している奇妙な光景が広がっていた。


 (……もしかして『十兵』という戦法は弓兵対策なのか?)


 VRMMOが流行り始めた頃、大量のシューティングゲームが世界で流行した。しかし、一般人が気軽に銃火器の訓練を受けれることを危険視した国連は銃火器を使用するVRMMOの使用を禁止した。


 当選、millionwarsにも火縄銃などの銃火器は登場しない。火縄銃がないのなら戦場における最強の武器とはなにか。剣や槍、薙刀では決してない、弓兵である。


 九条の編み出した『十兵』は火縄銃の登場により生まれた『散兵』と同じもので、一斉掃射による被害を減らすためのもの。


 (とはいえ、ここまで圧倒するものなのか……)


 敵の総数五千を千人で圧倒する天鷹城。要因は両陣営のNPC兵士の使い方にある。


 敵陣営のNPCは指揮官ではなく、複数のプレイヤーにより指揮されており、指揮するプレイヤーはその場における自身の最適な行動をとるため動く。


 それに対して天鷹城は、端に配置された弓兵を指揮官である杉下が操作することで、騎馬と歩兵をを指揮するプレイヤーたちは弓兵の合わせて『十兵』でありながら、軍として動くことができていた。


 「さて、そろそろ敵が増援を送る頃だね。萩村さん、朝飛くんに和蛇田(わだだ)城を責めるように伝えてください。」


 「……増援が来るのに、ここではなく敵の城を攻めるのですか?」


 「朝飛くんは傭兵時代に城主からの依頼で様々な城を防衛した経験があるから城の構造に詳しいんです。朝飛くんが城攻めをしてくれれば、城に帰城させるため兵を退くか、我々と戦い続けるかのどちらかを相手は選ばないといけない。まぁ、どちらを選んでも相手にとっては負けですけど。」


 九条は戦場から目を離さずに潤色に命令の意図を伝えた。


 「勇さん。ここから兵を五十連れて、杉下さんが指揮する右の弓兵を一つに纏めて。俺は左に向かう。」


 勇は「コクリ」と頷き言葉を交わすことなく右の戦場へと向かった。


 「全員、戦いながら聞け!」


 九条が左側に配置された弓兵の元に辿り着くと、弓を構えていたNPC兵士たちは一瞬だけ九条の顔を見ると、敵に視線を戻し、戦いに集中した。


 「敵へと放つ矢がなくなり次第、お前たち弓兵の指揮は俺がとる!弓の弦が切れようと、矢がなくなろうと、城に戻るまでは戦ってもらう!共に最後まで戦い抜くぞ!」


 「「「ウォォォォォォォォ!!!」 」」


 (どうして、こんな言葉で士気が上がるんだ……!)


 潤色の知っている九条からは想像もつかない厳しい言葉。そして、その厳しい言葉で士気が上昇する天鷹城のNPC兵士に驚愕していた。


 millionwarsの戦いにおいて、重要な要素『士気』。出陣時の士気はNPCとの『友好度』に比例して上昇している。戦いの中、低下する士気を維持し続けるには的確な言葉で鼓舞するか、プレイヤー同士の一騎打ちで勝利する必要がある。


 millionwarsの城内に存在するNPCは、プレイヤーの存在を個人、個人で判別しており。それぞれに『友好度』が定められている。


 当然、何度も言うように九条の『友好度』は日本サーバーで最も高い。九条が自分の為に死ねと命令をしてもNPC兵士の士気は上昇して命をかけて戦う。


「我々はこれから敵部隊の左側面に攻撃を仕掛ける!俺に続け!」


 矢が尽きたNPC兵士たちは、弓を捨てて九条の率いる五十の騎馬兵の後ろに並んだ。歩兵となった弓兵に馬の足を合わせ、できる限りの速さで敵部隊の側面に突撃をかけた。


 先程まで弓兵の壁となり徐々に削られていた天鷹城のプレイヤーが率いる『十兵』部隊が、左右から即席の部隊で九条と勇が横槍を入れたことで攻撃に転じ始めた。


 「 (くそっ!左右からも敵が……だが、今は)誰か、あの部隊を止めろ!!」


 和蛇田城が何倍もの兵を持って押し切れずにいた理由。それは、弓弦の率いる弓弦弓騎兵にあった。


 弓弦弓騎兵は弓兵のいない場所を的確に狙い、周囲を周回しながら和蛇田城のプレイヤーのいる場所へ的確に矢を撃ち込んでいた。


 結果、敵の部隊はNPCを指揮するプレイヤーを失い天鷹城の動きに対処できず、九条と勇による側面による挟撃により逆転の一手を打つ暇も与えずに、完全に勝敗は決した。



 


  


 

 

 

 

 

 

 

 


 


 

 

 

 


 

 


 


 

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