【番外編】約束(5)
「メリディアナは馬上槍試合に出場している騎士を見て、カッコいいと言いましたよね? 見事に攻撃する姿を見て、いいと言いましたよね?」
エリダヌスの言葉に、私は「まさか!」と思う。
でもその「まさか!」は正解だ。
「嫉妬されたのですか……?」
そう聞きたいと思ったが、聞けるわけがない!
しかも嫉妬した結果。
自身が馬上槍試合で戦う姿を、私に見せたくなった。
そこでエキシビジョンの開催を、国王陛下に申し出た。
しかも全力で取り組み、見事な勝利を収めている。
……正直なところ、副団長は巻き込まれたようなもの。
だってエリダヌスは自分以外の騎士を賞賛する私を見て嫉妬していた。
自分を見て欲しいと強く思い、全力でエキシビジョンに挑んだのだ。
本気のエリダヌスに勝てる騎士なんて……この国いないと思います!
ということで副団長には可哀想なことをしたが、最終的に名馬を賜れることになったのだ。そこはラッキーと思い、今回巻き込まれたことは忘れてもらうしかない!
「わたしとしては、勇姿をメリディアナに見せられれば満足でした。ですが陛下が望むものを与えると言われたので……。“不死鳥の石”を提案してみました。もしメリディアナに贈るにしても、わたしの使い古しではなく、新しい“不死鳥の石”の方がよいでしょう」
「そんな、古いとか新しいとか、そんなことは気にしません。ただ、御守として持っているものなら、エリダヌスが持ち続けた方がいいと思います。きっとエリダヌスを守ってくれると思うので」
真摯な表情で告げる私を見て、エリダヌスは「そうですね。分かりました。わたしの既に持っている“不死鳥の石”は、このまま御守として持ち続けます」と応じる。
私はそれを聞いて、こう思う。
これからお揃いの御守として“不死鳥の石”を二人で持つのね……。
なんて考え、顔がにやけそうになっている。
「それで、どうなのですか? エキシビジョンを見て、そして“不死鳥の石”を贈られることは」
少し照れたようにエリダヌスが尋ねる。
そんな姿を見せる推しが愛おしくてならない!
「エキシビジョンを見て、もう驚きました。あんな戦術を考え、実行できるところに。やはりエリダヌスが一番です。世界で一番カッコいいです!」
エリダヌスは「当然です」とクールに応じているが。
その口元には笑みが浮かんでいる!
つまり表情とは裏腹に、心の中で喜んでいるに違いない。
「それに“不死鳥の石”を贈られたら……とは一度は考えたことです。馬上槍試合にエリダヌスが出場し、見事優勝を果たし、新たに手に入れた“不死鳥の石”を贈ってくれたら、嬉しいなと考えていました」
「わたしに欲しいとリクエストすればいいものを。メリディアナはまだ、願い事をわたしにおねだりしていないのですから」
「あ、そうでしたね。では今回の」
「却下です」
「え……」
そこでエリダヌスは私の目を真っ直ぐに見て告げる。
「メリディアナが心から望む願いを叶えたいのです。誘導されて口にするのではなく、メリディアナ自身がお願いとして、わたしに伝えること。その願いを叶えたいのですよ」
推しの優しい気持ちに胸が熱くなる。
「すぐに思いつかなくてもいいです。いつでもわたしは聞きますから」
かなり甘い雰囲気になり、これはキスをしたくなる流れ。
だが。
馬車にはマルシクが同乗している。
さすがにこの状況でキスはない。
ということでそこは我慢だ。
「それにしてもわたしに叶えて欲しいことは、そんなにもないのですか?」
「! ち、違いますよ。些末なことは沢山あります。でもそんな小さなことではなく、もっとちゃんと有意義なことをお願いしたいと思ってしまい……」
「そんなところは意外と欲張りなのですね。……メリディアナは、わたしが名前で呼びたいと一つだけ願い事を口にしたら、三つも願いを叶えると言い出しました。実に太っ腹です。わたしもここは男気を見せたいところ。一つとは言わず、叶えられるだけ、叶えますから。遠慮はする必要ないですよ」
いつもクールなエリダヌスが嫉妬して、そして最高のデレでエキシビジョンを見せてくれた。
そして二つ持つ人はいないと言われている“不死鳥の石”。
エリダヌスは初めて二つ目を手に入れることになった。しかも私にプレゼントするために、“不死鳥の石”を国王陛下にリクエストした。そんな大胆不敵なことをした上に、叶えられるだけ、願いを叶えると言う。もっとおねだりしろと言ってくれるのだ。
本当に。
夢みたい……。
6月。
初夏を迎えたエリダヌスと私の愛は、さらに深まることになった。
お読みいただき、ありがとうございます。
イースターエッグハントからつながる物語はこれにて完了です~
そして次はあの話を公開予定。お時間くださいませ☆彡


















