表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/112

【番外編】後日談(前編)

 『新緑の夕べ~フローラル・シンフォニー~』という演奏会のペア招待券を、お詫びで手に入れていたエリダヌスと私は。5月に入り、その演奏会へ向かうことになった!


 新緑の気持ちのいい5月の日曜日の昼下がり。


 演奏会は、なんと野外音楽堂で行われる。


 勿論、席は満席(ソールドアウト)


 そして私達の席は中央最前列という最高のポジションだ。


 野外音楽堂は円形で、席が階段状に配置されている。

 ゆえに敷地外から舞台は見えないが、演奏は聞こえるのだ。

 その結果。

 野外音楽堂がある公園には、チケットが手に入らず、でも演奏を聴きたい人々が大勢集まっている。


「これはすごい人出ですね。普通にエスコートでは、はぐれるかもしれないです」


 新緑に相応しいアクアグリーンのセットアップ姿のエリダヌスは公園に着くと、驚きで目を丸くする。エリダヌスに合わせ、白の生地にアクアグリーンのフリルのついたドレス姿の私は、もう苦笑するしかない。リール・ペテレンが指揮をする。その姿は見えなくても、演奏が聴けるとなると……。


 貴族だけではなく、平民も公園に大集合だった。


「こうなったらこうするしかないですね」


 そう言うとエリダヌスは、私の手をぎゅっと握る。

 それは前世で言う恋人つなぎだ!


 マルシクも見ているのに!


 ……でもマルシクは手をつなぐぐらいでは、もう動じないわね。

 だってキスをしているところを、既に何度も目撃しているのだから。


「メリディアナ、また何か破廉恥なことでも考えていたのですか」


「!? ち、違います! ……そんな変な顔をしていましたか、私!?」


「そうですね。少々、はしたない表情をしていたような?」


 これはエリダヌスの冗談だったけれど、私は大いに焦ることになる。

 だって。

 推しとのキスについて、一瞬でも思い出していたのだ。

 涎を垂らしそうな顔を、ほんのわずかな時間でもしてしまった可能性は……あるかもしれないのだから!


 ということでなんだかあわあわしているうちに、野外音楽堂の中へ入場している。


「団長!」「ウェリントン公爵令息!」「エリダヌス様~!」


 さすがリール・ペテレンが登場する演奏会。

 しかも争奪戦のチケットを入手している。

 つまり今、席にいる方々は、有力な高位貴族の方々ばかり。

 ソールドアウトしたお高いチケットを購入できる財力、そもそもチケットを入手する人脈をお持ちの方々ばかりだった。そしてそれすなわち、公爵令息であるエリダヌスのことも、当然知っているということ。


 皆、エリダヌスに一通り挨拶すると、私にも声を掛けてくれる。


 なんだかんだでいろいろあった私ですが。

 今はエリダヌスの婚約者。

 皆、恭しく接してくれる。


 ということでひとしきり社交を終えると、オーケストラが舞台に登場し始めた。


 皆、着席をして、開始を待つ。


 音合わせをしていたオーケストラが、一つのメロディを奏でた時。


 今、最もホットな指揮者であるリール・ペテレンが登場した。


 ◇


 指揮者登場と同時に始まった曲の演奏が終わると、いきなりの拍手喝采。


 ブルネットの髪を一本で後ろにまとめ、紺色の瞳をしたリール・ペテレンは、三十歳になったばかり。


 四歳でピアノを弾き始め、六歳で交響曲を作曲し、八歳で指揮者としてデビュー。神童と言われていた。国王陛下はペテレンの才能に心酔し、宮廷音楽家に彼を迎えようとしたが……。


 なんとペテレンは自由な創作活動を望み、その申し出を拒否。


 当時の国王陛下はまさか断られると思わず、それはもう驚いたとか。

 無理強いはしないと言いつつ、宮殿の客間に滞在させ、実質幽閉のような状態にしたところ……。


 ペテレンはレクイエムばかり作曲するようになる。


 その曲は重苦しく、聞いている最中に具合が悪くなる人が続出。もっと軽やかな曲をとリクエストするが、ペテレン自身が陰鬱となり、レクイエムしか作曲できなくなってしまったのだ。


 こうなると国王陛下は、自身が幽閉していることが原因と思わざるを得なくなる。


 そこで一年に一曲でいいので、王家のために曲を書いて欲しいと頼み、ペテレンを自由の身にした。


 するとペテレンはまさに水を得た魚。市井の中で自由に作曲活動を楽しみ、指揮者として自身の曲を世に広め、至る現在だった。


 演奏会の最中、トークを一切しないペテレンは、次の曲に入る直前、目と手の動きで観客にも合図を送る。その独特の動きもペテレンならではだった。


 今日はどんなパフォーマンスを見せるのか。

 ペテレンは楽譜に手を伸ばし、次の曲のため、譜面をめくろうとしたが……。


 まるでうっかり熱々の鍋に触れてしまったかのように、譜面に触れた手を引っ込めた。


 そのオーバーリアクションに、観客は笑うのを堪える。

 これから演奏が始まるのだから、笑うわけにはいかないからだ。


 だがしかし。


 ペテレンは本当に火傷したかのような動きを続ける。


 すると。


 エリダヌスが席を立ったと思ったら、舞台に上がり、いきなりペテレンを押し倒したのだ……!

お読みいただき、ありがとうございます!

新作がスタートしました~

【これぞ究極のざまぁ!?】

『悪役令嬢は死ぬことにした』

https://ncode.syosetu.com/n0493kb/

ページ下部にバナーがございます。

ぜひ応援いただけると嬉しいです。お願いします☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●じれじれの両片想い●
バナークリックORタップで目次ページ
陛下は悪役令嬢をご所望です
『陛下は悪役令嬢をご所望です』

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ