40話:推しでコスプレ!?
昼下がりのアンブローズ公爵邸に、エリダヌスが迎えに来てくれた。
エントランスで馬車から降り立つエリダヌスは、その整った顔で優美に微笑む。
「お久しぶりですね、アンブローズ公爵令嬢」
久しぶりに会ったエリダヌスは……いい男度が上がっていた。
サラサラのブロンドは相変わらず艶があるが、今日はその前髪の分け目を変えており、さらにかっこよく見える。碧い瞳はやはり吸い込まれそうな透明度で、自然とウットリしてしまう。
それに着ている衣装。
アイスブルーのセットアップは、涼し気で見た目にも爽やかだ。一方の私はエリダヌスの碧い瞳を意識して、白のドレスに淡い水色のフリルやレースがあしらわれたドレスを着ている。並ぶとなんだか……お似合いに見えると、私は勝手にご満悦だ。
「では参りましょうか」
馬車に乗り込むのは、エリダヌスと私だけではない。
彼の従者、私の侍女、そして濃いグレーのマントと同色の上衣とズボンのマルシクだ。つまり馬車は六人乗り。
向かうはお店が立ち並ぶ、ショッピングアベニューという通りだ。
「団長様、いらっしゃいませ!」
そこはオーダーメイドの紳士服店。隣接したお店では、騎士達がよく使う装備も取り扱っている。ゆえに騎士の顧客も多く、店主とエリダヌスは顔見知りだった。
「今日はマントを一着新調しようかと。こちらのメリディアナ・リズ・アンブローズ公爵令嬢が見立ててくれます」
「メリディアナ・リズ・アンブローズ公爵令嬢! 新聞を拝見しましたよ。今回は……」
あの裁判の件を知っている店主は目を輝かせ、私に話しかけながら、マントにおススメの生地を紹介してくれる。私はトークを楽しみながら、生地を選び、色を絞り込んでいく。
選んだ生地は、エリダヌスの背中に合わせ、完成品をイメージするなど、実に楽しい!
マントにつける飾りを選び、派生して帽子や手袋、ついには上衣やブーツと、トータルコーディネートをしてしまう。
これはなんというか……エリダヌス……推しにコスプレをさせている気分だ。
「ウェリントン団長、この全身コーディネートでプレゼントしてもいいでしょうか! 完成品を着用されたお姿を、まずは私だけに見せてください!」
もう鼻息荒くお願いし、快諾してもらうことができた。
これを着た推しの姿絵を、画家に描かせたい……。
そんなことを思っている私を、ウェリントン団長はディナーに誘ってくれる。
気づけばもう、そんな時間だった。
ティータイム休憩も挟まず、エリダヌスのコスプレ(!?)に燃えてしまったわ、私!
ということで店を後にして、エリダヌスおススメのレストランへ案内してもらった。
案内されたレストラン。
そこはかつて王族が、離宮として利用していた建物で営業していた。
つまり外観も素敵だが、内装も大変ゴージャス!
廊下に敷かれた赤絨毯、豪華なシャンデリア、壁に飾られた名画の数々。
ゆとりある配置の座席と思っていたら、案内されたのは、三階のバルコニーに面した半個室席!
窓からは建物に併設された庭園が見えるが、彫像のそばはランタンで照らされ、大変オシャレだ。しかも教会の尖塔や時計塔以外は平屋が多いので、王都の街並みも素敵に見えていた。街灯も増えているので、この世界でも相応に夜景は楽しめる! それでいて前世ほど、街の明かりは強くないので、星空も楽しめるのだ。
最高の眺望!
「どうですか、窓の外から見える景色は?」
「店内のシャンデリアの明かりが抑え目なので、外の景色がよく見え、素晴らしいです!」
「気に入っていただけたのですね」
「はい!」
侍女やマルシクは、扉に近い付き人専用の席で食事となる。
ここでようやく初めて、エリダヌスと二人きりになれた形だ。
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