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36話:謎が解ける

「つまり御者であるあなたは、轢き殺すフリをしたのですね。そしてそのフリをしたのは、お金を貰い、やったこと。あるじであるアンブローズ公爵令嬢を貶めることになるかもしれないが、脅され、従ったわけですね」


 裁判長に問われたジンは「その通りです」と応じる。


「ふむ。ではあなたが雇用されている地方領の領主と、そちらの二人との関係性は?」


 そちらの二人、すなわちリギルとラーンとの関係について、裁判長が尋ねた。


「裁判長、それは調べが済んでいます。当該の地方領の領主、名はラウル・クリソン。男爵令嬢ラーン・イングリスの母方の叔母の嫁ぎ先です。イングリス男爵夫人が、本件に関与している可能性も浮上しています」


 これにはもうラーンが青くなり、手を強く握りしめ、腕を震わせている。

 リギルはずっと魂が抜けている状態だ。

 そして二人の弁護士達は、想定外で登場した二人目の証人に、歯ぎしりするばかり。

 その場での反論は難しいようで、次回へ持ち越しで、この日は閉廷となる。


 さらにこの日、ラーンは裁判所の警備兵に囲まれ、法廷を後にしていた。

 前回の卵投げ事件があり、完全にマークされている。裁判所から出るまで、警備兵に囲まれ、もう私へ手出しはできない状態だ。


 一方の私は控え室へ戻り、そこにいるラサとラナ、そしてロメダとその婚約者となる子爵と会うことになり、もうビックリ!


 だがロメダがジンに対し「お兄さん、ありがとう!」ということで、謎が解ける。


「御者の名前は聞いていたので、わたしの方で信頼できる人間を雇い、少し動いてもらいました。その結果、ロメダがジンの妹であることが分かったのです。ジンは妹がいることを伏せていました。公爵家で御者をやるにあたり、娼館で働く妹がいると分かると、マイナスのイメージになると思ったからでしょうね。よって通常で調べたら分からないことです。ですがわたしが雇った人間は、そういう秘密を暴くのに長けています。妹の存在を調べ上げることができました」


 エリダヌスが再会を喜ぶロメダとジンを眺めながら、種明かしをしてくれる。

 彼が動かしてくれた、秘密を暴くのに長けている者……おそらく騎士団とつながりのある諜報部だろう。彼らは通常は王命で動く。よって個人的なつながりで今回、動いてくれたに違いない。


 私のために、諜報部の人間まで動かしてくれたエリダヌスには、感謝しかない。


「ロメダがジンの妹であると判明した。そこからは少しの賭けです。少なからず、アンブローズ公爵令嬢は……リズベルトとして、ロメダと接点を持っています。その中で、彼女の体調不良を解き明かす手伝いをしました。その縁で兄であるジンの居場所を探れるのか。証言に立つことを取り付けることが出来るのか。結果はこの通り。あの日、ロメダの相談に乗った君の勝利です」


 これにはもう、人の縁の不思議に感動するしかない。

 偶然だった出会いが、後々の奇跡につながることもあるのだと実感。


「次の裁判が最終弁論になる可能性も高いでしょう。……いや、最終弁論になると思います。通常は一か月から二か月後に、次の裁判があるはずです。ですが陛下との取引もあります。よって想像以上に三回目の裁判は、早く行われるでしょう。そこで反論はなく、和解の提案が出て、それを退けることで……裁判長が弁論の終結を宣言。その後は数週間で判決がでるはずです」


 エリダヌスは、弁護士と変わらないぐらい法律の知識を有している。本人は「公爵家の嫡男ですからね。法律についても学ぶことになりました。そんなに大したことではないですよ」と笑うのだけど……。


 騎士団の団長もしているのに。私の推しはやはりすごいと思わずにいられない。


 その後、この日はせっかくみんなが揃ったからと、控え室に料理をデリバリーしてもらい、皆で食事をした。あの卒業舞踏会で、断罪されて以降に知り合うことになったラサとラナ、そしてロメダとその婚約者である子爵令息、彫刻家のラスペルバ、セフィナ、エリダヌス、弁護士チーム、そして護衛騎士のマルシクと一緒に。


 短期間で知り合ったメンバーばかりだったが、その絆はとても強いもの。だからこそみんな、私の裁判のためにここにいてくれる。両親も兄も今日も傍聴席で、私を応援してくれていた。もうすぐ全てが終わり、家族にも会える。


 楽しく食事をしながら、その日が来ることを願った。

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