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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
1000年目
134/196

27 義兄1 ※空




 ※※※ 空 ※※※



「まだ見つからないのか!この役立たずどもが!」


男に役立たずと言われた者たちが首を垂れる。

それすらも気に入らなかったのだろう。


「もうよい!!」と話を終わらせて、男はひとり自分の私室に入った。


乱暴にドアを閉め、苛々とした様子でカウンターの上から酒瓶を取ると自らグラスに酒をつぎ、一気に飲み干した。


空になったグラスをカウンターの上に乱暴に戻す。

そしてその身を暖炉の前に置かれた重厚なソファーにおろした。


「くそっ。いったいどうなっている」


男が忌々しそうに大きく息を吐いた時だった。



「こんばんは、ダザル卿」


いきなりの声に男がぎょっとする。


「誰だ!」


男は慌てて薄暗い部屋の中を見まわした。

ほどなくしてベランダへと続く窓の手前に立つ声の主に気付いたようだ。

声の主の顔を凝視して、男――ダザル卿は眉根を寄せた。


「………サージアズ卿?」


サージアズ卿は笑みを浮かべお辞儀をした。


「はい。ご無沙汰しております。

いつぞや《王宮》でお会いして以来でしょうか。

我が領地のお酒を気に入っていただけたようで、大変光栄です」


「……何故、貴方がここにいる。

酒を持ってきてくれたのか?しかし一体、どうやってこの部屋に入った?」


「ご挨拶に伺ったんですよ。隣の領地を任されたものでね」


「隣?……あの長く領主が決まらなかった土地のことか?確かにあそこには

新領主が入ったと聞いてはいるが。それは貴方ではない。確か……」


「コドリッド伯」


「そうだ、コドリッド伯が――」


「――私です」


「何?」


「私の名前ですよ。そう。3つ目の、ね」


「3つ目?」


サージアズ卿は微笑むとカウンターの前まで移動した。

胸元から砂時計を取り出し、先程ダザル卿が置いたグラスの横に置く。


「まあそれはいいでしょう。それより。

とうとう『空の子』様は見つけられなかったようですね」


「……何のことだ」


グラスの横に置かれた砂時計を見ながらダザル卿が言った。

サージアズ卿は微笑んだままだ。


「隠さなくてもよろしいのですよ。全部把握しております。

貴方が『空の子』様を捕らえようとしていたことは」


「何を言うのか!そんなことはしておらぬ!

……第一、『空の子』様は《王宮》の《南の宮》におられるはずだろう。

私に何ができるというのだ」


「おや、ご存知ないのですか?

『空の子』様は今、ここ――貴方のご領地にいらっしゃいますよ。

先日、私もお見かけしましたからね。確かです」


「何っ?!どこで見た!」


ダザル卿ははっとして顔色を変えた。

サージアズ卿はくすりと笑う。


「やはりご存知でいらした」


「知らん!驚いただけだ!」


「御子息が全てお話ししてくださいましたよ。

貴方と二人で『空の子』様を捕えようと躍起になっていたと、私に全て打ち明けてくださいました。

御子息は『空の子』様に危害を加えることに恐れをなしたようですね」


「何っ?!息子が?そんな馬鹿な!」


「今はお薬を飲んで眠っていらっしゃいますが」


「――っ貴様!まさか息子に自白剤を!」


「ああ、語るに落ちましたね。自白剤を飲めば御子息は認めるわけですね。

『空の子』様を襲おうとしたことを。


助かりましたよ。『空の子』様のお話を聞くのは貴方だけで良さそうですね。


なにせ、お話しいただける時間には《限り》がありますので。

無駄は省きたいんですよ。


御子息には《横領》など、お仕事のお話しを山ほど聞かねばなりませんしね」


ダザル卿は何か言いたげに口を開けたが声は出なかった。

かわりのように頭を横に振る。


額に手をやった。

その身体がぐらりと揺れ、ソファーに沈む。


サージアズ卿はそんなダザル卿を見ながら続ける。


「――さて、では貴方の方にお聞きしましょうか。


何故『空の子』様を狙ったんでしょう。

ああ、もしかしたら第3王子殿下の祈りで現れた、というのが気に入らなかったのですか?


何故でしょうか。

第3王子殿下を気にする必要などなかったでしょう?


貴方は前王妃様の父上で国王陛下の義父。そして王太子殿下の外祖父だ。

その地位は不動のものであったでしょうに」


ダザル卿が完全に目を閉じたのを見届けると、サージアズ卿は砂時計を逆さに置きなおした。


さらさらと砂が流れ落ちていく。


サージアズ卿は静かに言った。



ーーーさあ。話していただけますか?その胸の内を。




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