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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
1000年目
135/196

28 義兄2 ※空




 ※※※ 空 ※※※



ーーーさあ。話していただけますか?その胸の内を。



サージアズ卿は静かに言った。


カウンターの上では砂時計の砂がさらさらと流れ落ちていく。


ダザル卿はソファーに身を預け、目を閉じたまま話しだした。



「私の地位は不動か。

王太子殿下が何事もなく国王となられた場合は、だろう!


第3王子は聡い。そしてあの国王陛下の寵妃、リュエンシーナ姫の子だ。

いつ王太子殿下にとって変わられるか。恐ろしくてたまらなかったよ。


第3王子に王太子となられたら我が家は終わりだ!」



ーーーそうですね。

貴方は国王陛下が王太子殿下であられた時からの、陛下の最大の支持者。

前王妃様の父君。


その地位を利用してかなり手広く《儲けて》こられましたからね。

国内からも、国外からも。



「そのくらい許されて当然の権利だろう!

今の王家があるのは誰のおかげか!


今の国王陛下が王太子だった時代は王家の危機だったのだぞ?!


前国王夫妻には現在の国王陛下しか子がなく、しかも二人いた王弟殿下も子を残さず早世された。


次世代の王族は今の国王陛下のみという有様で、王家はいつ滅ぼされてもおかしくなかった!


それを助けたのは私だ!

私が王家を支持し、国王陛下の後ろ盾となり、娘まで妃にと差し出して危機から救ってやったのだ!


今の王家があるのは私のおかげではないか!」



ーーー単にご自分に都合が良かったからでしょう。

力のない王家だ。最大の支持者の《多少の悪戯》くらい目を瞑るだろうとね。

ああ、《過去》の話は結構ですよ。

第3王子殿下の話を聞かせていただけますか?



「邪魔な存在だよ。いなければ良かったと何度思ったことか。

……だいたい国王陛下がいけないのだ。

政略で結ばれたとはいえ、我が娘が産んだ王太子殿下がいたら充分だろう。

それをあんな。娘のようなリュエンシーナ姫を王妃にして。忌々しい」



ーーーリュエンシーナ姫に手を出したのですか?



「はっ!馬鹿を言え。手を出せたわけがなかろう。

国王陛下が《北の宮》の奥深く囲い込んでいたんだ。誰も近づけはしなかった。

私とて同じだ。――我が娘のようにはいかんわ」



―――おや。これは聞き捨てならない言葉が出てきましたね。

我が娘のようには、というのはどういう意味でしょう?

まさか……前王妃様には《何か》したのですか?



「……小さな菓子をひとつ渡しただけだ。一緒に食べようと誘って」



―――菓子?



「仕方がなかったのだ。国王陛下に似ていない子など産むから」



―――第2王子――リューク公のことですか……



「国王陛下に全く似ていない。《あれ》が成長するにつれ私は恐ろしくなった。

《あれ》の髪色は娘の昔の恋人そっくりだ。切れたと言っていたのに……。


娘は否定したが、私は疑いを捨て切れなかった。

《あれ》を娘が身籠ったのは王太子殿下を出産後、幾月もしない頃だ。


国王陛下と王妃――娘の関係が、冷え切ったものであることなど誰の目にも明らかだったのに。


第一子の王太子殿下が生まれてすぐ第二子を授かるなど……。

不思議な気はしていたのだが、生まれた第二王子を見て驚愕したよ。


まさかそんなはずはない、と思った。


だが当時、娘は実家に――《王都》の我が屋敷に訪れることがあったからな。

《宮殿》に比べれば格段に自由がきく実家。そこでもしかしたら過ちを……と。


考えれば考えるほど、そうとしか思えなくなった。


《あれ》が――第2王子が国王陛下の子ではなかったら。

王妃が――娘が不貞をはたらいていたら。


しかも不貞をはたらいた場所が我が屋敷だ、などとなれば。


私は破滅する!


考えただけで寒気がはしった。


《第2王子は国王陛下の子ではない》といつか人の噂になるのではないかと。

いつか王妃の――娘の不貞が露わになるのではないかと。


想像しただけで夜、眠れなくなるほど恐ろしかった。


幸い《あれ》は王太子殿下には似ていた。

そのせいか人に疑われることはなかった。


だが王妃――娘だけは真実を知っている。

運命を握るのは王妃――娘だった。


私の築いてきたものを壊されてはたまらない。

《誰であろうと》足元をすくわれるなど冗談ではない。


必要な、間違いなく国王陛下の子――陛下によく似た王太子殿下はいるのだ。


ならば……と」



―――貴方は……前王妃様を。実の娘を手にかけたのですか。



「仕方がなかったのだ!私だってしたくてしたわけではない!

苦しませなかったのは情があったからだ!」



―――確かに心臓が急に止まったようでしたね。



「身体に入ってしばらくしてから効く毒だった。

あの後すぐ国王陛下が《王宮の厨房》を全て関係者以外立ち入り禁止にしたのには驚いたが、結局、《自然死》とされた。

誰も気付きはしなかった」



―――そうですね。まさか実のお父上が用意された物が原因だったとは。



「ひと口で食べられる小さな菓子だ。毒入りは初めに渡したひとつきり。

残りは私も一緒に食べた。二人で食べたのだ。気付かれるものか」



―――教えていただきありがとうございます。

もっと早く知りたいところでしたが。まあ当時の料理長は気にしないでしょう。



「料理長?」



―――ええ、頑固な男でね。

料理人が疑われたわけではないというのに辞めると言って聞かなくて。

今は《王都》でカフェを開いていますよ。なかなか人気のようです。


息子が一人いましてね。

父の跡を継いで《王宮の厨房》に入り、今や王宮一の料理人です。

他にも……厨房の監視など、良く働いてくれていますよ。



「……料理人?」



―――ええ。《知り合い》なんです。良い若者ですよ。

今は結婚して少し前に子どもも授かりました。女の子だそうです。



「女の子……」



―――貴方に良いお話を聞かせて差し上げましょうか。

国王陛下は出生の真実など、どうでも良いとおっしゃってました。

《息子》として。《王子》として育てたのだ。これからもそうである、と。



「………な………?」



―――ああ、すみません。このお話は、もっと早くにすべきだったようですね。




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