黒猫は王様とお話をするようです
こんにちこんばんは。
文字に疲れた作者の仁科紫です。
今回は親の心子知らずの逆、子の心親知らずの回です!
それでは、良き暇つぶしを!
「私が娘と話をするときに、間に入ってくれないかな?」
「にゃっ…?」
え。え、え?今、この王様、なんて言ったのかしら?
まるで、思春期の娘に何を話しかけたらいいのかわからない父親みたいな、凄く情けないことを頼まれた気がするのだけど?
「私だって情けないとは思うんだけどね?ちょっと事情があるんだよ。とりあえず、椅子に座ろうか。
…君は猫だから、執務机の上にでも乗る方がいいかな。
はい。それじゃあ、降ろすよ。」
「にゃん。」
ふむ。話が長くなるということかしら。それなら、確かにその方が聞いてあげやすわね。
それに…まあ、何か事情があるなら、話くらい聞いてあげなくもないわ。急いでいるわけではないわけだし。
そうそう、部屋はね。上品な王様の執務室って感じよ。
執務机があって、大きな黒いソファが二つ、それにローテーブルや、部屋の端に本棚が並んでいる感じね。
うん。執務室っぽい。…でも、他に人はいないのね?秘書さんくらいはいると思ったのだけど。人払いでもしたのかしら?
「それじゃあ、話すよ。
あの子、早めに母親を亡くしてね。
甘える対象が私しかいなかったんだと思うんだけど、甘えに来るタイミングがどうも悪くて。
会議のときや、民からの願いを聞いているときとかに来るんだよ。お陰で、私は娘に対して冷たく当たってしまってね。
それを繰り返しているうちに娘はとんでもないわがまま娘になってしまったんだよ。
自分は王女だ。だから、偉いんだ。とね。
昔は優しくて気が利くいい子だったんだけどねぇ。
もう少し、私が構ってあげれたら良かったんだけど、そういう時間なくてね。
残念だけど、あのままでは次の王は任せられない。
恐らく、他の王族がやることになるんだろうけど、ハズレ役職だからね。決めるのは難航しそうなんだ。」
…なるほど。運が悪いのはどちらかしら?
いえ、でも少し考えれば、仕事が終わるまで待てばいいだけの話よね…?…その頃から自分ファーストの人間だったのでは?
…うん。その場合は言わない方がいいわよね。
あ、もしかしたら、単に幼すぎただけなのかもしれないし!小さい子って何するか分からないものね。きっとそうに違いないわ!
イシュラドさんだって、自分の娘がそんな子だったなんて思いたくないだろうしね。うんうん。そう思う方が平和よね!
「だから、一度話し合いをしたいと思うんだけどね。
…娘からそっぽを向かれてしまってね。毎回この話を出す度に、私は決して王などにはなりません!と言われるんだよ。
困ったなぁ。」
「にゃぁ…。」
うーん?話が一気に別の方向へ向かった気がするのだけど?
それって…。
バァーン!!
「お父様!黒猫を捕まえたと聞いたのですが!?」
「アリシア。入室する前にはノックをしなさい。淑女らしくないよ。
それに、そのことは誰から聞いたんだい?」
ビックリした!急に音を立てられたから思わず毛がブワッとなったわ。
うん。確かにこの落ち着きのなさは王様向きではないかもしれないわ。
イシュラドさんは私を捕まえる前に兵士に言うようなヒトではなさそうだし。私を捕獲した後もずっとお話をしていた(聞いていた)だけだもの。ヒトに伝える余裕はなかったはずよ。
本当に、どこで聞いたのかしら?
「誰からって…。誰からも聞いていません。
扉の前で聞いただけです。」
「…盗み聞きをしていた、ということかい?」
「ええ。そのとおりです。それが何か?」
…これには思わず呆然としてしまったわ。イシュラドさんも驚いているみたいだし。
だって、盗み聞きよ?王女様がするようなことではないわよ?
そもそも、誰かから聞いたのではなく、自分で知ったというのはわかるのだけど、扉の前で盗み聞きって。どうやって?
結構分厚そうよ?ここの扉。
「…凄いじゃないか!スキルを獲得したんだね!」
「うふふ。そうなんです!遂に、スキル〈聞き耳〉をゲットしたんですよ!」
「私の娘は凄いなぁ。初めてのスキルだったよね?」
「えへへ。そうですよ?
コツコツやって、やっと獲得できたんです。
…そうではなく、あの、その猫のことなんですが。」
…はっ!あまりにもの出来事に固まってしまったわ。
そこは褒める所ではなく、叱るところよ!盗み聞きは良い事ではないのよ?
それに、今のやり取りでわかったことは…?
え。ええ?うーんと?つまり、現地人にとってはスキル獲得は凄いことで、アリシアさんは今までスキルを獲得したことがなかったと。
それから、イシュラドさんはアリシアさんを甘やかすことでコミュニケーションをとっていたっぽいっていうこと、がわかったかしら?
「ああ、この子か。この子がどうしたんだい?」
「いえ、その…。」
…何かしら?凄く気になるのだけど。
そうモジモジしないで早く言ってくれないかしら?
こう、なんというか、気になってこっちもハラハラするのだけど。
「その?」
「…。」
「恥ずかしがらずにいえばいいと思うよ。」
「…ぃ。」
はい?え?聞こえなかったのだけど?そんなに引っ張って言うようなことなのかしら。
「ごめんなさい!」
「え。え?ええ!きゅ、急にどうしたんだい!?
謝ったりなんかして!」
「その、さっき、そこの猫さんに怒ってしまったことを、後悔していて謝りたかったんです。それに、お父様が話しているのを聞いて、よりその思いが強まって…。
それに、今までお父様に反抗的な態度を取っていたことも。
本当にごめんなさい!」
なるほどねぇ。別に、構いはしないわ。過ちを認めることが出来たのなら、それ以上言うことはないもの。
「アリシア…!!」
「それで、お詫びにこのお城を紹介させて頂けないでしょうか?」
「うぅ。あのアリシアが立派に…!それなら、王にも…!」
「それは嫌です。それで、黒猫さん、如何でしょうか?庭の案内もしますよ。」
「なんで…。」
「執拗いですよ。お父様。私、好きな人が出来たんです。前にも言ったでしょう?」
…おーい。そこの王様、なんか聞いた話と違うぞー。
うふふふ。これはどういうことかしら。
ねぇ。そこのおにーさん?あははは。見た目が若いから、おにーさんで十分よね?
不敬罪なんて言わないわよね?ね?ね?ねぇ?あははっ。
「う、うん?チェシャ?
なんだか悪寒がするし、視線が冷たいんだけど…。
な、何か、怒らせるような…あ。も、もしかして、王にしたい理由が、自分が説得をしなければならないからっていうことに気付いてしまっていたり…?」
「にゃぁん?」
「ひぇ。わ、私、一応王だし。ね?
あまり、再起不能になっちゃうようなのはやめてもらえると…。ね?家臣も困っちゃうし。」
「黒猫さんはチェシャと言う名前だったのですね。
その怠け者ならいくらでも刻んでくれて構わないですわ。
いつも家臣には迷惑をかけてばかりのだらしない王ですもの。
たまにはいい薬ですわ。」
ふっふっふ。そういうことなら、お構いなく。
周りに迷惑をかける悪い大人は切り捨ててしまいましょう!
「あははははっ!」
「え。ちょっ、なんでわr…。ぎゃああああ!」
ふふふ。つまらないものを斬ってしまった。なぁんてね?
さすがに、軽く引っ掻いただけよ?それなのに、あの叫びよう。クスクス。今思い出しても笑えるわね。ふふふ。
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あの後、私は気になっていた迷路までアリシアさんに案内してもらっていたわ。
「チェシャ。ありがとうございました。
これで少しは懲りたことでしょう。」
「にゃぁん。」
…懲りていたら良いわね。あれはきっと常習犯なのだと思うのよ。私。
多分、また懲りずに王になってと言い続けるのでしょう。
そういえば、アリシアさんの想い人について詳しく教えて貰ったわ。お相手はこのお城に務める騎士なのだとか。
…紹介して貰ったけれど、好青年って感じで変に擦れていない感じがポイントが高かったわ。
出会いは王妃様が亡くなり、アリシアさんが荒れていた頃らしいわ。
それで、娘を取られたように感じたイシュラドさんが拗ねて、アリシアさんに王様になるように言い続けているらしいのよね。
王様、なっさけなーい。
「あ!そうですわ!チェシャに簡単に来てもらえたら、またお父様をとめることができますわね!
それなら、白うさぎの洞穴に登録してもらいましょう。」
「にゃぁ?」
うん?お城に簡単に来れるようになるのは嬉しいのだけど。
部外者が行き来できていいのかしら?
「ああ。構うことはないですよ?
このお庭、実は一般公開されているのですわ。
王都の民は皆、街の白うさぎの洞穴からここまで来ることができるのですよ。
だから、チェシャさんが使っても問題はありませんわ。」
「にゃ!」
なるほど!それならいいわね。
「それでは、こっちですわ。」
《一定の条件を満たしたことにより、
プレイヤー名:チェシャ は
称号【王を罰するもの】 を手に入れました。》
こうして、私はお城に自由に出入りすることが出来るようになったわ。
やったわね!…喜んで、いい事よね?妙な立場になっている気もしなくはないのだけど、気のせいよね…?
次回、黒猫は遊ぶようです。
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




