第四十話:頂点が崩れる時
ついに40話目きましたーーー。
まさかここまで来るとは、作者もびっくりです。
気がつけば、もうこの小説半年近く書いてるということに気がつきました。
こんなに長く続くなんて、皆様のおかげです><
そろそろ終わるかもしれませんが、最後までどうかお付き合いお願いします。
「シヴァ?なんだそりゃ。」
そこに現れたのは、大きな鎌をもったくっぺーの姿。
さっきまでそこで倒れていた奴が、いきなり自分の後ろに回ってきて攻撃をする。
足は完全に逝っているはずだった、なのに傷跡すら残らないような回復を見せている。
そして服もクリーニングに出したかのようにシワは無い、新品のようだ。
「なぜ生きてる。」
「こんなところで死ぬわけにはいけないんだな。」
「あの傷はどうした?」
「俺の変化の時に完全に治癒した。俺の力は物を壊すだけじゃなくて、変化するときに体の傷を完全に治すことができるんだな。」
治ったのは傷だけではなかった。
さっきまでと何かが違う。
生き生きとしているという表現では何か変だが、さっきの諦めていた感じとは正反対の感情で満ちている。
攻撃のスピードも力もさっきより格段に上がっている。
だが。
「時を止められたらどうかな?」
「残念だがそれはできない。」
「なに?」
大きく振りかぶった鎌は、空を切り空気が揺れる。
この部屋全体の何かが変わった。
なにかは分からないが、何かが変わったのは確かだ。
その大きな鎌で何を切った?何か切るものがあったか、私の眼に映らない何かがあったというのか。
「何を切った?」
「なにも切ってねーよ。」
そうか・・・ただのハッタリか。
だったら時を止めて今度こそ確実に――――
「どうした?時を止めないのか?」
なぜだ・・?
と・・時が・・止まらない・・。
こいつの能力には制限があるのか?いやそれは無い・・・。
だとするとなぜだ・・・。
「だりゃあああああああああ」
「しまっ―――」
ガキン。
大鎌と槍がぶつかり合った、鎌のほうが攻撃力面的には上なのだろう鳳花が押される。
その後も何度も鳳花が押されているという感じでぶつかり合う。
さっきの鳳花のペースとは、違って今度はくっぺーのターンだ。
「しかたない、俺だけこのマジックのタネが分かっててもつまらないからね。教えてあげるよ、危険なことだけどね。簡単にいえば時間という概念をブチ壊しました。」
・・・・・は?
時間・・?概念・・?ブチ壊す・・?
そんなことができるのか。
「難しく考えるからいけないんだよ、時を止めれるってことは、時間があるから止めれるわけで、時間が無かったら止めれないただの脳なしなんだよね。そして俺の能力はあらゆるものを破壊できる力。別に物だけしかその能力は使えないわけじゃなく、見えないものすらも破壊できるんだよね、たぶんやったことないから分かんないけど、今分かってることはこの空間には時間という概念は無い。その証拠はお前が時間を止めれないのと多分ここに時計があったら時計はその役割を果たさないと思う。」
「なんだと?・・そんなことができるのか?」
「そそ。だから今ここで君の生命活動さえも破壊できるし、自分に使うこともできる、生きるという概念と老いるという概念を破壊するとそれこそ不老不死になれるのかな?まぁ失敗したらどうなるのか分かんないから怖くてやってないんだけど・・・。」
・・・なんて圧倒的な差だったんだ。
というかこんな能力ありか、うらやましいな、だけど負けるわけにはいかない。
私は堕天使零位、頂点的存在。それがまだ堕天使になって日の浅い奴に負けるわけには私のプライドが許さない。
負けるわけにはいかないんだ、どんなに力差があったって。
こんなところで・・・死ぬなんてありえない。
「新人に殺られるなんて、プライド的に相当クルものがあると思うけど、これだけは言えるよ、どんなに権力をもっていようと、どんだけ部下を従えていても、いずれはその礎は何処からボロが出てそこからぶっ壊れる。永遠なんて無い、ずっとなんてない。」
「そんな分かりきったこと言ってんじゃねー。」
周りの空気が一瞬にして凍った感じがした。
武器を捨て俺の前に現れる、そして俺の襟首をつかみ押し倒す。
「私は・・・私達姉弟はここに来るまで全てを捨ててきた、親戚も親も全てを裏切りここまでのし上がってきた、力があれば何でもできると思っていた、その考えが間違っていたのか。そのためなら何でもした、だからあのヤスとか言う奴も仲間にした。」
大きな涙がポロポロと俺の顔に落ちてくる。
声は少しながら裏返り、泣いている。
力のために、全てを捨ててきた姉弟、簡単にあしらうことはできる、所詮他人行儀どーでもいい。と言ったらそれまでの話。
今ここで鳳花をこの鎌を使い一瞬で殺すこともできる。
だが俺はどうやらこういうのには苦手らしい。
やっぱり俺は泣いている人がいたら気になるし、それが女性ならなおさらである泣きやんでほしいと思う。
そして元気に笑っていてほしいと思う。
その手段が今はただただ鳳花の話を聞くということなのだが。
やっぱり人間は自分の心に弱いね。
冷静に考えれば、殺した方がいいのだと思うのだけど。俺にはそんなことできないな。
良心が許さないや。
「すまない、取り乱してしまった。続きをしようか。私らしくない行動をとってしまった。」
俺の襟首から手を離し自分の捨てた武器、三叉槍を改めて握る。
そして俺に「立て。」と命令する。
ここまで来たんだ、どちらかが倒れないと終わらないよな。
逆にこのまま和解したら、鳳花のプライドなんてズタズタだろうな。
俺はゆっくりと鎌を構える。
シヴァ・・・これが多分最後だ、俺達の力をあいつに見せつけてやろう。
心の中で何かが笑った気がした、なんか恥ずかしいこと言っちゃったな、どこぞの主人公でも言いそうなセリフだな。
鳳花のほうも三叉槍を巧みに操り構える。
両方の息が重なった瞬間俺達の最後の戦いに終止符がうたれる。
「私達は間違っていたようだな、どんなに力をつけても何も変わらない、自分の変えたいと思うものは変わらない。・・・何にも変わってないようだ。変わらないから価値があるのか、残念ながら私は何かを変える力すら無かったらしい。君にはある、何でも変えれる力があるらしい。せいぜい楽しんで生きてくれ。」
鳳花はそのまま地面に倒れる、そのあとを追うように穹と俺を分けていた大きく分厚い壁が鳳花めがけて落ちていった。
そしてこの部屋に突風が吹き荒れる。
おそらく時間のない世界と、時間のある世界が混じり合って生じたものだろう。
混じり合った時間は正しい方向へと導かれる。
なぜこの人が俺に何かを託した感じの口調で話したのかは知らないが。
「せいぜい楽しくバカやって生きさしてもらうよ。」
その言葉だけ残して俺は穹を探しにそこらへんの岩をどけていった。
こいつは化け物だよホントに。
一瞬にして炉華と夏織をダウン状態にさせるとは、予想外だ。
この場には天宮と恭介しか残っていない。
とてもじゃないけどあの悪魔を倒すなんてちょっと無理な話。
頑張って二人の双方からの攻撃で何とか悪魔の動きを止めていると言った感じだ。
少しでもスピードを緩めるとそこを突いてくる。
「ヒャッハッハッハ、いいねいいね。だけどこんなスピードじゃ滅裂目録は止めれないよ。」
俺と恭介が左右から攻撃していて、呪音も両方の腕を振り回しているのだがその表情は笑っている。さらに呪音の攻撃スピードは加速する。
次第に頬や足に傷がついてくる。
呪音の攻撃スピードの速さは早すぎる、簡単にいえば俺は完全に勘で戦っている。
第六感というものをフル活用しているのだ、恭介のほうはどうなのだろうか。
意外と楽です。とかいいそうだな。
「天宮さん何かいい案は無いんですか。」
一度大きく呪音と距離をとる。
いわば臨時の作戦会議の始まりだ、正直いい案なんて無い、思いつかない。
どうすればいいんだよ。
黒紫の空は不安感を生みだしてくる、太陽の光をシャットアウトしている。いわばここの一部だけが周りよりも暗いのだ。
「天宮さん危ない。」
空を見上げてボーっとしていた俺は、呪音にしたらいい獲物なわけだった。
俺も夏織とか炉華みたいに胸を抉られるのだろうか。
痛いのは嫌だな・・・。
目の前には血が飛び散っている、血は俺の頬を伝い地面に向かって落ちていく。
「・・・おい。」
しかし痛くなかった、痛覚が鈍っているとかじゃなくて、たんに俺に攻撃がとどいていないだけだ。
じゃあこの血は誰のか、そうさっき俺を、ボーっとしている俺を気づかせてくれた。
「炉華さん・・・あんたが死んだら駄目でしょ。こういう犠牲は下の者がやるんですよ。」
なに言って―――
そのまま俺は恭介に蹴り飛ばされる、たぶん悪魔から俺を離すためだろう。
恭介の下腹部には一本の剣が貫いている。
冗談じゃないぞ、三人目の傷者かよ。
わりぃなこんなところで逃げたら俺の名が廃るんでね。
空中を蹴り呪音に思いっきり切りつける。
「お前さんってそんな武器だったか?鉈じゃなかった?」
「鉈はこの姿の前の武器だ、今はというより本来はこっちの方が正解だ。」
簡単に俺の攻撃を押し返す。
かなり本気で切ったんだけどね、まだ足りないか。
「なんかお前らも意外と弱いな。」
「それはどうかな。桜神藍嘉。」
気配を消していたのか、俺が気をとられていただけなのか紅亜の姿がそこにはあった。
桜神藍嘉とともに呪音を切り飛ばす、軽く息をつきこっちを見る。
「珍しいじゃないか簡単にやられるとはな、分かっているとは思うがさっさと恭介の治療に行け、夏織と炉華のほうはそろそろ終わるらしいがな。」
「じゃああんたは妖天人のことを―――」
「はやくいけ。」
俺は従うしかなかった、今ここで残ったとしても多分紅亜の足手まといにしかならない。
俺はもう一度空を蹴り恭介の治療に向かう。
「こんなに吹っ飛ばされたのは久しぶりだな。」
さっき飛ばされた呪音が軽くジャンプをしてこっちにやってくる。
「そっか。」
「やる気のない返事だなぁ」
ちょっと不満そうな表情を浮かべる呪音。
戦いをやめるとか言うのだろうか、紅亜は自分の手を見つめている。
刹那との別件もあったしまぁまぁ体力は使っているはずだろう。
「まぁこの力でも使うかなと思っただけだ。」
開いた手のひらを握り、このまま呪音を見つめる。
呪音は特に何もしなかったのだが、さすがにいつまでも待っても攻撃が来ないので苛立ってきた。
「なぁ戦わないのか?楽しくないな。」
あっちが攻撃してこないから、こっちから攻撃を仕掛ける。
左右にたくさん移動しながら紅亜に近付く。
紅亜も剣先を呪音に向け攻撃態勢に入る。
一瞬の出来事だった。
「解放 デス・コントロール」
風よりもなめらかに、河原を流れる川よりも静かに紅亜は剣を振る。
剣は交わることなく紅亜の剣が呪音の腹を切る。
呪音のほうは緊急停止ボタンでも押したかのように、途中で止まりそのまま倒れていく。
眼は完全に瞳孔が開き、心臓はもちろん止まっている。
空は黒紫から一瞬にしていつものような空がそこにはある。
「まぁ死を操ったらこんなもんだな。誰でも殺せる、不老不死以外。」
死を操る能力それが紅亜の能力、死という定めを自由に操ることができる力、その力は巨大すぎるゆえに体にかかる負荷のほうも大きい。
急激な体力の消耗、一時的な出血、神経麻痺。
この三つが主に発生する。
急激な体力の消耗により、呼吸さえもまともにできない。
そして体内部からの出血、内部から壊れているのだ。
それにともない神経麻痺、感覚が一時的だが感じられなくなる。
不意に膝をつく、呼吸は乱れ、そしてそのまま紅亜も同じくして地面に落ちていく。
「悪魔でも簡単に殺せるらしいな・・・つくづく自分の力が恐ろしいと思うよ。」
ただ悪魔は死なない、悪魔は世界で五体と決まっている。
この五という数字は変わらない、変わることはない自然界がそう決めているから。
誰かが死ぬと無作為に何処からから生まれる。
悪魔を殺すことはできても、全滅はできない。
世界がそうできているから、今死んだ悪魔は今どこかで生まれ育っているのだろう。
頑張っていきたいと思います―^^