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魔王の側近の思い

「フハハハッ。」

普段聞くことのない笑い声を聞いた私はブルッとしてしまった。この史上最凶最悪の魔王がなんかしらの感情を持つと大抵ろくなことにならない。それが、冗談で済むレベルでなく、大陸一つを滅ぼすなんて何のそのを本人いわく、うっかりなのだ。しかも、大抵は、怒りやら嗜虐の感情がメインだったが、今回は純粋な笑いだ。何の悪意もないその笑い声は逆に何がそうさせているのか、正直聞きたくない。だが、聞かなくては、これを放置すると世界が滅ぶ可能性があるからだ。

「どうされたのですか?ブラッド様。」

「いや、アスタロト。今回送られてくる生け贄について考えるとつい、笑いが起こるのだ。嬉しさの余りな。」

ここで得られた情報は、主に二つ。今回、魔王様が行った生け贄。これが、笑いを起こした理由。二つ目、嬉しさの余りだと言った。これは、普段無駄なことはしない魔王様が、生け贄なんぞを行ったのだ。どこまで踏み込んでいいか分からないが、命あるかぎり情報を入手しよう。

「そうですか。何があなたをそうさせたのですか?」

「あの生け贄の内に俺と結婚してくれると言ってくれた女がいるのだ。しかも本来の俺の姿を見てもカッコいいねの一言で済ませてしまう美しい人だ。」

「そ、それは....」

魔王様のあの姿をカッコいいねですか。そのような人材は是非必要です。しかもわざわざ、こちらに来ているのだ。魔族の未来のためにももう少し、

「そのお方とは婚約を?」

「ああしているさ。勿論、あいつも了解の上でだ。恐らく俺が初めて恋をした人で、誰にも渡すものか。それにあの人には俺の印を付けている。」

お手が早いようで、でも、いつから?

「それは、いつのことですか。」

「俺が五歳のときだったな。」

五歳.....彼が魔王として頭角を表した時からだ。彼の種族は、自分の存在を受け入れることで、どんどん強さを増していくものだ。だが、そのおぞましい姿により周りから拒絶され、本来なら百年ぐらいして、その姿を諦めの気持ちで認め本来の姿を受け入れることで、絶世の美形の人間形態になれるのだ。この魔王はそれを僅か五歳で成し遂げ、目的のためならどんなことも厭わない恐怖の魔王として君臨したのだ。彼の言う美しい人というのは、恐らくこの魔王を生み出し、そして、この魔王を抑える、最強の拘束具だ。なんとしても守らねば、もし、その存在が殺されたなら....

「お前が、何を考えてるのか知らんが、もし、あの人を傷つけるなら、俺はあらゆるものを破壊する魔神となろう。」

そう言い、笑った。その顔はさっきまでの優しい物ではなく、あらゆる人を堕落させる悪魔の微笑みだった。


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