43.戦力強化
和平が結ばれ使徒が女神の元へ帰っていった、和平の期間は5年間であり、使徒は5年後に和平を継続するか改めて戦うかを決める為に降臨すると宣言している
この5年という期間は女神が使徒を降臨させるための準備期間でもあると見ている、あの使徒がこの事を明言したりする訳は無いが、今までの使徒の降臨の頻度や期間を見ても間違っていないだろう、この5年間が勝負となる、和平を継続するとしても交渉のカードは必要だ、手ぶらで交渉のテーブルに着けばどんな要求を突きつけられるかわからない
急いで戦力の強化を計りたいのだがいくつかの制約で縛られている、私のとって痛いのが異世界から武器を持ち込むことが禁止さていることだ、千尋が手配してくれてた銃器は全て没収されている、「法王国」に提供したという事は確認されていないため千秋はこの世界での戦争が変化することを望んでいないのだろう、このような美学やロマン、戦いを楽しむ性格が彼女の弱点でもある
敵対していなければ素晴らしいと賞賛したかも知れないがこの弱点が私やヒルダにとっての突破口だ、他にも意図的に疫病をばらまくことや人間やエルフを素材としたアンデットの作成も禁止さてているが大きな問題ではない
確かに疫病はダークエルフにとっても最終手段だがこれを使う時はこちらから戦争を仕掛ける時や最後の悪あがきのための道具だ、5年後に使う機会は無いだろう千秋もそれ程気にしている様子はなかった、感染用のネズミを奪われてもいない
アンデットに関してはダークエルフににも死霊術師はいるが主力ではない、どちらかと言えばエルダーリッチに対抗するためのものだった、エルダーリッチの迷宮を引き継いだ弥生殿もゴーレムを主力とした軍団に作り替えている、気にするような足枷でなない
弥生殿は使徒と恋愛関係にある、千秋が「後で和平を結ぶから私を好きにしていい私を魔王にして」と私が千秋のものになると提案していれば誘いに乗っていたと言っていたが、どうやらそっちの趣味が有るようだ
使徒の恋人である弥生殿が魔王軍と人間の国々との境界線上に迷宮を移動させ聖女カーリアの功績を讃える神殿にしている、彼女は聖女カーリアが救った2人の子孫や女神の奇跡で蘇った聖女候補や神殿騎士達の師匠として勇者である香織を含めて彼女たちを鍛えてもいる
その聖女候補が次の聖女になる様だ。立ち位置の確認や今後の動きの探りを入れるため断られることを前提として「エルダーリッチの後継者」としての彼女に魔王軍の強化に協力を求めると意外なことに前向きな返事がもらえた
「このままじゃ5年後に千秋が降臨する必要が無くなってしまう、彼女の「楽しみ」を奪ってしまうといけないわ」
と言ってのけた、この女にとって私達の価値は使徒の狩りのための獲物でしかない、もちろん協力はしてもらうが戦力強化には絶妙なバランス調整が必要だ、胃が痛くなる
「坂本様が魔王となって千秋様と戦えば宜しいのでは、千秋様もお喜びになるでしょう」
「それは良い考えね、私は魔王軍を使い潰してでも千秋に敗北の味を教えてあげる、女神の使徒を奪って私のものに出来たら最高だわ、カミラ様も協力してくれるでしょう?」
魔王の座を譲る提案をしたが、この将来の魔王の誘いに返す言葉が無かった、ここで言う協力には私達が使い潰されることも含まれるだろう
「あら、どうしたの冗談じゃない、本気だと思ったの?私は和平の調停役なのよ、戦力のバランスを取らないと5年後に和平が崩壊するわ、ちゃんと協力するから安心してくれて大丈夫よ」
本気の言葉なのだろう、冗談と笑い飛ばしたことも、戦力強化への協力に対する考えも、ヒルダを魔王という生贄の鎖から解放したいが方法を間違えれば本当に生贄として私と共に使徒に差し出される、更に胃が痛くなった
この後の弥生殿の協力の効果は絶大だった、この世界での銃器の作成までは禁止されていない、想定されていなかったのだろう、つけ入る事が出来る初めての使徒の油断だ、私の短剣を一週間貸すことを条件に、銃器の設計図を提供して必要な金属部品を錬金術で作成し提供して貰った
これにダークエルフの森からとれる素材を魔法で加工した樹脂部品や木材を合わせ銃器を完成させる、弾薬は火薬と薬きょう・ジャケツトを弥生殿が錬金術で作成し、鉛の代わりに魔法を刻んだ銀や魔石を弾芯にした
火薬は魔法を込めた魔石でも代用できる弾薬だけでもダークエルフで自作できるようにしたい、需要な物資の供給を握られていては面白くない、使徒に輸送を妨害されたり、押さえられるリスクはあるが向こうで千尋に弾薬を備蓄させておくことは出来る、弾薬の威力は格段に落ちるが無いよりましだ複数個所に分散して準備させよう
そして有難いおまけも付いて来た彼女が短剣を敵視していたため魔術契約まで結んで貸し出していたが、そのお礼にとオリジナルのコピーを一本作成して渡してくれた、魂の備蓄が無い事と暗黒神に対する繋がりが無いこと以外は性能にも差は見られなかった、丁度いいヒルダに使わせよう暗黒神と距離を置いて自由に生きていける方が良いだろう、弥生殿も自分の為の武器を作成していた
カミラやヒルダに協力しているうちにいくらかお互いの関係も良好になって来た、聖女も神殿に滞在しているため露骨に仲良くは出来ないが公式の場でなければお互いの呼び方も変わっていった
「弥生さん、「魔導国」への復讐に協力して頂けないでしょうか?奴らは千秋様の結んだ和平に参加していません、貴女の協力があればあの国を亡ぼすことも出来ます」
ヒルダが私の力を求めて頭を下げた、面白い話ではあるが少々準備が必要だ
「事前に話をしないといけない相手もいるの、話がまとまればこの相手と共に魔王城に出向きましょう、その際は使いを送るのでカミラ殿と歓迎の準備をして欲しいわ、千秋をもてなした以上のものが必要になるでしょう」
「それ程の相手なのですか、「法王国」の高位の方でしょうか?」
「秘密よ、話がまとまらない可能性がある相手なのよ、まとめる自信はあるけどそれまでまってちょうだい、そうね話し合いの流れによっては魔王ヒルダとして出向いてもらうことになるかも知れないわ、歓迎の準備はそれからでもいいわね、その場合には贈り物の準備になるかしら」
ヒルダに返事をして彼に面会の許可を取るために使い魔を送った、承諾の返事を貰い「魔導国」に向かう準備をする
目立ちたくはないし相手から必要以上に警戒されたくない、2人だけを伴い彼の館に向けて出発する、同行者には香織と私の片腕である真祖のカトレアにした、話し合いである事を示すため香織と私で3人の衣装を整えた、故郷でのドレスやアクセサリーと違い戦闘になった場合を想定して出来る限りの魔法的な強化も施した、神殿の留守を聖女ユリアに頼めば大丈夫だろう、裏の仕事は神仙のダリアに任せればいい




