200.責任
後を部下に託しアルファとオメガを連れてリッチの迷宮を経由してアンジュ殿の迷宮に向かうとツクモ殿が出迎えてくれた、事前に話かける台詞を考えていた筈なのに真っ白になり言葉が出ない
「ダフネどの、面目ない、お預かりしていた部下への目が行き届いていなかった様だ10人程この世界で指揮下に組み入れたゴブリンを連れて出奔した様でな、目的が判らない、如月に行方を探させているがまだ発見には至っていない」
ツクモ殿から謝罪を受けたが私にも心当たりも無い
脱走する様な馬鹿はいない筈だが何が目的だろうか、ゴブリンを戦力化する話は聞いていたが火遊びでもしたくなったのだろうか?狩りにでるのであれば無断で出ていくとも思えないが
「ツクモ様目的は分かりました、他の客人に話を聞いている時に心当たりが有りそうな反応でしたので吐かせました」
アゼルとクレールだったかアンジュ殿に仕えているこの世界のダークエルフ2人が私の部下の男を引きずって来た精神を操る魔法か自白剤か何かの薬を使ったのだろう、足取りがおかしい
「お前の知っている事をもう一度話なさい、上手く話せたらご褒美をあげるわよ」
アゼルに地面に転がされクレールに頭を踏み付けられている
「我々が人間やエルフを襲えばツクモ殿を含めてこの世界に居られなくなると思いダフネ様の元に帰還する事が出来ると考えたのです、ツクモ殿こそダフネ様に相応しい方と考えた次第です」
部下の男は蕩けた表情をして話し出した
その後股間を踏み付けられ喜びながら悶絶している、精神魔法と薬の両方を使用されたのだろうこの後こいつは使い物になるのだろうか?
「うちの馬鹿どもが勝手な事をしました、私の統率力不足です探し出して連れ戻します」
部下の暴走とそれを許してしまった事を謝罪する
私自身が考慮していた手段の一つではあるが指示していない事を独断で動かれるのは見逃せない事態だ、指示待ちしか出来ない役立たずは不要だが、報告も相談も無しに動かれるのは見逃せない、せめて有効活用したいと思うのだが対応が難しい
変に戦果を上げ過ぎても後が怖い、暴走する様な馬鹿が加減を間違わないか?という不安が先に立つ
「目的地は何処なの?もう満足してしまったのかしら?情けないわね」
私が対応策を考えている間も倒錯した尋問の様で何か違う行為が続いている
「イザベルと言うこの世界の古エルフが管理する森を焼き討ちする計画を立てていました」
行先は分かったが面倒な場所をターゲットに選んでしまっている
確かイザベルと言う名の守護者は私の世界で古エルフの支援をしており腹心であろうドライアード達を引き連れていたが、本拠地がもぬけの殻とは思えない、私が最初にこの世界を探った時に侵入すら諦めた場所だ
遠距離から魔法で火を放つ程度で戦果を上げれれるとも思えない、撃退されて逃げ帰るのが関の山だろう、下手に深入りすれば返り討ちに会い全滅の恐れさえあるだろう、切り捨てるべきだろうか?大した被害すら与えられないならその方が問題が大きくならないで済むと考える事も出来る
10人の部下と使い捨てのゴブリンだ諦める事が出来ない程の大きな被害では無いが一晩様子を見た事で状況が悪化したこの迷宮に最悪の送り物が届いたのだ、使い捨ての粘土のゴーレムがゴブリンの首と石化した手足を10人分地上部の森の外縁まで運び自壊したのだ
手足は石化した後に折られたと思われる恐らく部下達の手足で本人達の生死は不明だ、エルフのやり口とは思えない、族長として放置出来ない状況だ、随分と血の気の多い相手の様だ
「ツクモ殿申し訳ありません、これは族長として看過出来ない事態です、ご迷惑をお掛けしてしまいますが落とし前を付けないといけないのです」
流石に部下の前もあり引き下がれない
「これは誰の仕業であるのか確証は有るのか?」
ツクモ殿が冷静に聞いて来た
確かに証拠は無いが状況は私の部下が返り討ちに会い、その上で挑発のための行動としか思えない
「仕方ない某も同行しよう相手に確認すれば良かろう」
頼もしい助っ人が得られた
可能性は低いがまだ交渉で解決する余地は有る、余り多くの人数ではいきなり戦いになってしまうだろう、ツクモ殿と私の2人にアルファとオメガを連れて4人で出発する事にした
「九十九様流石です、きっとダフネ様に助力すると確信していました」
目的地に向かおうとした工程の半ばでキサラギさんが声をかけて来た
「ダフネ様部下の10人は無事です、後で石化も解除しますし手足も繋げますから安心して下さい」
手足の無い石像を抱えたゴーレムを引き連れている
「如月、其方が救出したのか?」
「彼らの記憶では九十九様とダフネ様が2人で助け出した事になっています、イザベル殿の森に着く前に私が追い付いて幻術で良い感じに処理しましたので安心して下さい、この茶番を知っているのはここにいる私達だけですので」
まるで手柄を自慢する様に笑顔で答える
もう少し詳細を聞きたいところだが渡井の部下を石化したのは誰なのだろうか?一つ疑念を抱いたが聞く事が出来なかった
「キサラギさんが私の部下を唆したのですか?」
もう一つの疑念を確認する
「違います、監視はしていたので利用しただけです、こうでもしないと九十九様とダフネ様の関係が進展しないでは無いですか?じれったくて身体が痒くなりそうです」
「それにこのままだと大きな問題に発展しそうですし、お互い悪い虫が付くような事になっても困るんじゃ無いですか?」
私の言葉から洩れる非難や怒りにも気にせずに楽しそうに返事が返って来る
「如月、お前と言う奴」
ツクモ様が呆れた様につぶやく
ツクモ様も弟子がやったと思っている様だ、最悪の事態を止めてくれたとも言えるため非難も出来ない
「弟子の不始末の責任は師である某が取らねばならぬ様じゃ、ダフネ殿其方の力となろう、この世界でやり残した事は無い」
「九十九様、堅苦しい言い訳は無しにしましょうよ、ダフネ様が欲しい言葉が他に有るでしょう?」
「黙れ!お前の前でそのような真似など出来るか!」
ツクモ様がキサラギさんを叱りつけ一旦引き揚げる事になった
結局2人きりになっても愛の言葉は聞かせては貰えなかったが、後でキサラギさんに報告する事を約束して別れる事になった
ようやく欲しいモノを自分の世界に連れ帰る事が出来たが自分のモノにしたとは言い難い関係が暫く続く事となるだろう、早くキサラギさんに惚気話を出来る様になりたいものだ
この後暴走した馬鹿は暫く悪夢にうなされる事になった古エルフから酷い扱いを受ける寸前で救出されたと信じているが悪夢にうなされ信じがたい寝言を言っていたそうだオークがエルフの女にやるような事をされそうになる幻覚を見せられたのだろう
「このポーションで女の身体にしてあげる、受精卵を子宮で育てて貰うからね」
後でキサラギさんが彼らに見せた幻術の内容を教えてくれた、彼らが私を恩人と慕い忠誠を誓う訳が良く分った
「間に合って良かったです、問題を起こす様なら皆殺しにしろと母からゴーレムを預かっていましたので」
確かにあの時きさらぎさんが率いていたゴーレムは異常な力を感じた
「キサラギさんの母とはどなたなのですか?」
「卯月と言う名のアルラウネです、ダフネ様も弥生様の迷宮でお会いした事が有るかも知れません」
アスタが会った錬金術が得意なアルラウネだ
アスタの話しでは力は高かったが策を練る様な印象は無いこちらのリッチと同じ様な研究に没頭するタイプの変人と聞いている
「ヤヨイ様の指示なのですか?」
「そうかも知れませんが私にゴーレムを届けて命じたのは母です、今回は私は指示されていた範囲で最良の結果になる様動いただけです、指示には背けないもので悪しからず」
今までの印象とは違う冷たい言葉にも聞こえたが私のために動いてもくれた様だ
この事件の後にアルファとオメガは彼女の事を尊敬する様になり交配する相手にしたいとも言うようになった2人は私より積極的にアタックをしたが軽くあしらわれていた、魔王様の血の影響だろう2人は成功しなかったが積極性は見習う所があるかも知れない




