第四十三話「ラスモア村調査:後篇」
後篇です。
八月二十六日。
私アール・ノールズとジェイミー・レストンの二人はザカライアス・ロックハートとシャロン・ジェークスの故郷を調査するため、キルナレックの街から二十五km先のラスモア村に向かった。
だが、アルス街道からラスモア村に行く道に入るとき、私たちは非常に驚いた。キルナレックを出発する際、道が判りにくいから、案内人がいた方がいいと言われて、案内人を雇ったのだ。確かに案内人なしでは、その細い道を見つけられなかったかもしれない。それほど細い道で、ほとんど獣道と言ってもいいくらいだった。
案内人に聞いてみると、この夏の時期は草が伸びるのが早く、荷馬車の通行が少ないラスモア村行きの道は草むらと見分けがつかなくなるのだそうだ。他の時期なら、これほど見分けにくいことはないそうだが、それでも大都市であるアルスに酒を供給している村とは思えなかった。
狭い道に入ると、護衛の傭兵たちは周囲の警戒を強めていく。だが、案内人は笑いながら、「精々、野犬がうろつくくらいだよ」とあまり警戒する様子がない。詳しく聞いて見ると、この辺りの魔物はロックハート家が定期的に駆除しており、大人なら単独で歩いても、それほど危険はないそうだ。
午後三時頃、ラスモア村に到着した。
丘が連なる典型的な開拓村で、牧歌的な平和な村だというのが、私の第一印象だった。
案内人に宿について聞くと、一軒だけある酒場が宿を兼ねているそうで、そこに案内してもらった。
村に入ると、きれいに整備された道と、生活用水に使うのか、小さな用水路があった。
家は田舎にある標準的なもので、村人たちが珍しそうに私たちを見ていた。
宿である黒池亭に着き、無事目的地に着けたことに安堵の息を吐いた。少し休憩した後、領主の館に明日の面会の約束を取り付けにいった。
領主の館は連なる丘の一番北にある丘、館が丘の頂上にあるそうだが、それを聞いていなければ、麓にあるレンガ造りの建物に向かったかもしれない。その建物はスコッチの貯蔵庫だそうで、領主の館より立派だった。
領主の館に向かう途中、丘の西側の斜面に木造二階建ての割と大きな建物があった。その周りには子供たちがおり、若い女性が子供たちに話をしていた。後で聞いてみると、そこは学校だそうで、ガーランド一家が教師をしているということだった。
私はこの話を聞いて驚いた。人口五百人ほどの小さな村に学校があることに驚いたのだ。
二千人程度の街でも学校はなく、文字を読める老人が自宅で寺子屋をやっている程度だろう。だが、この村では、ほぼ全員の子供がここに通い、更に希望する大人たちも勉強に来ているという。
調査を通じて感じたことだが、この村の識字率は非常に高い。大人でも三人に一人くらいは文字が読めるし、十歳くらいの子供に至っては、ほぼ全員、読み書きが出来る。
これは驚異的なことだ。普通の村では十人に一人もいれば、多い方だろう。
学術都市であるドクトゥスでも、旧市街はともかく新市街を入れれば、識字率は五十パーセントを割る。
つまり、それに匹敵する識字率なのだ。
いや、今はそうかもしれないが、子供たちが成長すれば、識字率は限りなく百パーセントに近づくだろう。これはドクトゥスの旧市街以上なのだ。
聞けば、数年前に学校が設立されたとのことだが、わずか数年でここまで識字率を上げたのは、ガーランド夫妻の力が大きいと言う。当初は巡回授業を行っていたが、ガーランド氏が学校の設立を領主に訴えたそうだ。更に学習意欲を上げる工夫や、農閑期の大人たちへの特別な授業なども行われているそうで、今回の調査とは直接関係ないが、ギルドに報告しようと考えている。
明日の先触れのつもりで領主の館に来たのだが、従士長らしい五十代の男にそれを伝えると、領主がすぐに面会してくれると言ってきた。
田舎の騎士領ならではだなと思いながら、案内されるまま、領主の執務室に向かった。
出迎えてくれた領主は、三十歳くらいのがっしりとした体格で、いかにも騎士といった男だった。だが、粗野な感じはみじんもなく、笑顔で我々を迎え入れてくれた。我々が宮廷の作法に則り、膝をついて挨拶しようとしたところで、領主マサイアス・ロックハートはそれを止めた。
「見ての通り、我がロックハート家は田舎の村の村長のようなものだ。そもそも先代である父が平民から騎士になった家だ。悪いが宮廷の作法など、我らの方が知らぬよ」
笑顔でそういった後、応接用のソファに座るよう促してきた。
私は恐縮しながら、椅子に座った。
彼が用件を聞いてきたので、「ご子息が首席で合格されました」と伝えた。
恐らくまだ結果を知らないだろうと思い、驚かせようとしたのだが、彼は既に知っているという感じで、小さく頷くだけだった。
「用件はそれだけなのかな? 学院のしきたりを知らぬから、何とも言えんのだが、わざわざ合格の通知をしにきたわけではあるまい」
私が既に結果を知っているのかと尋ねると、三日前に護衛として付けた従士が戻り、結果を伝えてくれたと教えてくれた。
確かに旅慣れた兵士なら我々を追い抜いてもおかしくないと納得した。
そして、私は正直にこの村に来た目的を話すことにした。
「我々は魔術師ギルドの命によって、派遣されました。目的はご領地の調査です」
領主は「調査とは?」と疑問を口にした。
私はギルドで命じられた内容を正直に伝えることにした。
「受験生の首席と次席が同じ地区の出身というのは非常に稀なのです。更にご子息ザカライアス様とミス・ジェークスは乳兄弟と伺っております。ギルドはここに何らかの要因があるのではないかと、我々に調査を命じたのです」
領主は一瞬表情を固くするが、すぐに笑顔になる。
「調べるのは構わんが、ただの田舎の村なのだがな。しかし、いかに首席と次席が同郷だとして、わざわざ調査させる必要があるのかね」
「ただの首席と次席であれば、ギルドも調査を命じなかったでしょう。ご子息は千年に一人の天才と評価されております。また、ミス・ジェークスも既に卒業生並の実力を持つ逸材であり、このような二人が偶然同郷であると考える方が無理があるかと。もし、環境がこのような天才を生み出すのならば、ギルドとしては今後の後進の育成の参考としたいと考えております」
領主は面白い話だとでも言うように大きな声で笑い出し、「いや、済まぬ。ここが天才を生み出す環境かもしれんと言われたことが、無性におかしかったのだ」と言った。
そして、我々に対し、協力を約束してくれた。
「出来る限りの協力はしよう。秘密が見つかれば良いのだが、見つからなくとも我らが隠しているわけではないからな。ハハハ!」
そう言って、屋敷への立入りと、従士や領民への聞き取り調査の許可を与えてくれた。
翌日から、従士や領民たちに聞き取り調査を行っていくが、賢者のようなものがいなかったかと聞くと、全員が首を傾げた後、いなかったと証言する。更に調査を進めていくと、この村の特殊性が徐々に明らかになってきた。
先に述べた識字率も異常だが、この村の生活レベルは開拓村のそれではなかった。すべての地区にトイレが設置され、更に石鹸が各戸に無料で配布されている。その石鹸はレストンが聞いた貴婦人たちが奪い合うような高級品ではなかったが、それでも高品質のもののように思える。
そして、この村には公衆浴場があった。公衆浴場というものがあることにも驚いたが、それが領民に無料で開放されていることに更に驚いた。実際には風呂の管理を輪番制で行っているため、その労賃が入浴料なのだろうが、最初聞いた時には信じられなかった。
その公衆浴場に住民たちは、三日に一度は入っている。
最初は気付かなかったが、この村の農民たちは皆、清潔だった。そして、ここに来る途中で見たような、田舎の村にありがちな薄汚れた者を一人も見ることはなかった。
この村の特徴は先代領主が率いる自警団による治安の良さ、学校による教育の充実、公衆浴場や石鹸の無料配布などによる衛生面の良さだった。そして、この状況を作り出し、更に維持し続けているロックハート家に、領民たちは忠誠を誓っており、領民と領主の関係は非常に良好だった。
また、食料事情もいいようで、子供たちも元気に走り回っており、大人たちは夕方になると酒を酌み交わし、とても幸せそうに見えた。
私にはここが一種の理想郷ではないかと思い始めていた。
十日ほど聞き取り調査を行ったが、二人の天才が生まれる要因は見つからなかった。
僅かに可能性があるのは、彼らを指導したリディアーヌ・デュプレというエルフの女性だ。彼女はティリア魔術学院を首席で卒業した魔術師であり、彼女自身、四属性持ちの天才だった。
確かに幼い頃から優秀な師に指導を受ければ、学院で優秀な成績を挙げられるかもしれない。だが、学院を受験するような子供は皆、優秀な家庭教師に指導を受けている。だから、それが決定的な要因とは言い難い。
我々は調査方法を変えることにした。
優秀な師が導いたという仮説を捨て、他の要因が無いか探ることにしたのだ。
まず、ザカライアスという少年の行動を追うことにした。
聞き取りを開始すると、多くの情報が集まってきた。
彼は幼い頃から、屋敷を出ていろいろなところに顔を出していたようだ。一番多いのが、スコッチの蒸留所で、彼はかなりの頻度でそこに顔を出し、新しいアイディアを出したりしていたようだ。
次に多かったのが、この村の鍛冶師ベルトラムの工房だった。彼はドワーフの鍛冶師であり、手押しポンプや蒸留器など武器以外の物も多く作っていた。
私は蒸留所の責任者スコットと鍛冶師のベルトラムにインタビューを申し込んだ。
スコットは四十歳くらいのがっしりとした男で、暑い蒸留所で働いていたため、面会の時も汗だくだった。
彼にザカライアスのことを聞くと、
「ザック様は好奇心旺盛なお子だったな。鍛冶師のベルトラムさんと従士のガーランド様が蒸留酒を作るって話になったとき、いつもガーランド様についてこられたんだ。四、五歳の子供が見て何が面白いんだって、いつも思っていたんだが、ガーランド様のお話じゃ、蒸留所を大きくすべきだって、お館様を説得されたのはザック様だって話なんだ。まあ、天才だから、俺たちに判らない何かを感じていたんじゃないか。そうそう、“スコッチ”ていう名もザック様が俺の苦労を知って、そう名付けてくれたんだぜ」
私はその話を聞いて、僅かに違和感を覚えた。だが、どこを聞いてそう思ったのかは、その時は判らなかった。
次に鍛冶師のベルトラムに話を聞いた。彼はいかにもドワーフといった感じの鍛冶師で、私が工房に入っていくと訝しげな目でこちらを見ていた。
事情を話し、ザカライアスのことを聞くと、彼は更に我々を警戒するようになった。
「ザックの何が聞きたいんだ? 一言で言えば、あいつは天才だ。俺のような鍛冶師にはそれ以上のことは判らん」
私は何でも良いから聞かせてくれと頼み、彼がどんなことに興味を持ったのかを聞きだした。
彼は金属加工のすべてに興味を持ち、いろいろなアイディアを出した。その中で最も驚いたのは、手押しポンプの開発にザカライアスが関わったという事実だった。当時、僅か四歳であり、ようやく、言葉がしっかりとしてきた頃だろう。その四歳児が手押しポンプという今までにない機械の開発に、アイディアを出したというのだ。
ベルトラムはそれを言った後、しまったという顔を一瞬した。私はそれに気付き、まだ他にも何かあると感じた。そして、更に質問を続けたが、彼はそれ以上大した事実を話すことはなかった。
それから、この村が他の村と異なる点について、ザカライアスの関与を調査していった。トイレの普及や学校の設立に関与した形跡はあったが、大した事実は見つからなかった。
この村の発展については、従士の中で一番の知識人であるニコラス・ガーランドが中心になって進めていったという話しか聞けなかった。石鹸の開発、蒸留酒の製造、学校の設立……これらのことをすべて一人の従士、すなわち兵士が行ったのだ。
私は本当のことだろうかと思い、ニコラス・ガーランド氏にインタビューを申し込んだ。
村に来た当初にも話を聞いたのだが、その時の印象は落ち着いた雰囲気のある紳士というもので、才気溢れるという感じはしなかった。
ガーランド氏との面談だが、彼は多くを語らなかった。元々、口数が多いほうではないようで、しゃべり方も訥々とした感じであり、一つ一つの事実を確認していくのに、一日を要したほどだ。
ガーランド氏との面談で判ったことは、この人物がすべての改革を行ったとは考えにくいというものだった。だが、誰がそれをやったのだとなると、不思議なことにガーランド氏の名しか出てこない。
ザカライアスとシャロンの二人には、更に二人の幼馴染がいると知った。
二人とも従士の子供で、ロックハート家では四人のことを“ザックカルテット”と呼んでいるらしい。
二人はともにザカライアスの一歳年上で、一人はメリッサ・マーロン。もう一人はダン・ジェークス。シャロン・ジェークスの兄だそうだ。
メリッサはメルと呼ばれ、赤毛の元気な少女なのだが、並の兵士以上の剣の腕を持っていた。もちろん、魔術師である私には判らなかったが、護衛の傭兵が“末恐ろしい娘だ”と言ったため、理由を尋ねてみた。
彼は「恐らくスキルレベルは二十を超え、剣術士レベルも二十くらいでしょうな。傭兵で言えば、七級相当。あの歳で一端の傭兵として食っていけるってことですな」と答えた。
従士たちに話を聞くと、先代の領主であるゴーヴァン・ロックハートは有名な剣術士であり、その指導を幼い時から受けているとのことだった。一度、その指導を見せてもらったが、私の方が痛みを感じるくらいの激しい訓練を平気な顔でやっていた。
もう一人のダンという少年も明らかに異常だった。
剣術はメルという少女に劣るが、弓も使え、更に気配を消すのもうまいそうだ。護衛の傭兵の斥候役に、彼の印象を聞いてみると、「ありゃ、プロの斥候ですぜ。いつでも冒険者になれるレベルってことです」と答えた。
十一歳の子供が、すぐにでも大人の冒険者や傭兵と同じ働きが出来る。ザカライアスが一人前の、シャロンが卒業生並みの魔法を見せても異常に思えないほどだ。
それほどまでに“ザックカルテット”と呼ばれる四人は早熟だった。
私には環境がこのような天才を生むとは思えなかった。いや、思い当ることはある。ゴーヴァン・ロックハートという稀代の剣術士がおり、リディアーヌ・デュプレという天才魔術師が指導したのだ。知らぬ者が聞けば、あり得ないことではないと思うだろう。
確かに何十人、何百人と彼らが指導し、その中から一人か二人だけ、天才が現れたというなら納得はできる。だが、同じ時期に生まれた四人がすべて天才で、更に並の子供では耐えられない修業を、幼い時から強制されることなく、継続しているということが異常なのだ。
こうして、一ヶ月近くラスモア村に滞在したが、二人の天才、いや、四人の天才が生まれた要因は特定できなかった。本当に神の配剤で偶然、四人が同じ時期に同じ場所で生まれたとしか思えなかったのだ。
九月二十日。
我々はラスモア村を出発した。
その頃には我々も村人たちに溶け込んでおり、出発の前日には宿で送別会を開いてくれた。そして、その場に領主や従士たちも現れ、身分の差も関係なく、我々との別れを惜しんでくれた。
そして、手土産にとスコッチや石鹸などを持たせてくれた。
十月六日。
我々はドクトゥスに帰ってきた。
調査報告書はラスモア村や途中の街でまとめており、その日のうちにイシャーウッド参事に提出した。
参事は少し機嫌が悪そうで、話をするのを躊躇われたが、報告をしないわけにはいかない。
「……というわけで、我々の調査では、ロックハート、ジェークスの二人が突出した才能を見せた理由を、ラスモア村に見出すことはできませんでした。詳細は報告書にまとめてありますので、不明な点がございましたら、いつでも説明に参ります」
イシャーウッド参事は我々の報告に興味を示さず、おざなりに報告書を捲っているだけだった。
私とレストンはこれ幸いと頭を下げ、参事の部屋を出て行った。
翌日、教育研究委員長であるワーグマン議員から、報告書の説明を求めるとの連絡があり、私とレストンは大物議員に説明するということで、緊張した面持ちで彼の部屋に行った。
ワーグマン議員は上機嫌なようで、報告書について質問してきた。特にザカライアスが何をしたかという点について興味を持っているようだった。
「すると、彼は若い頃から、大人の中で意見を言っていたのだね。なるほど……」
私は議員が言い間違えたと思った。彼は僅か十歳の子供の幼少期を“若い頃”と言ったのだ。
切れ者のワーグマン議員でも、こういう言い間違いをするのだと、私は少し愉快になっていた。
「……で、君たちの報告の結論だが、偶然、魔法の天才が二人同時に同じ場所に現れたということで間違いないのだね」
私は「ラスモア村の調査からはそれしか考えられません。ですが、彼の家庭教師であるデュプレ女史の指導が二人を生んだ可能性は否定できません」と答えた。
議員は静かに首を横に振り、
「デュプレ女史の話をラスペード先生から聞いたことがない。だから、その線はないだろうね。ご苦労だった。ゆっくりと休みたまえ」
議員は我々に三日間の特別休暇を与えてくれた。
私とレストンは大した結果が出なかったのにと思ったが、ありがたく休暇を貰うことにした。
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二人が出ていった後、ピアーズ・ワーグマンは、もう一度報告書を開いた。
彼が開いたページには、
『……ザカライアス・ロックハートに対し、より長く接した者ほど、彼が子供であるという認識がないように思われる。特に古参の従士たちや鍛冶師のベルトラム、蒸留所のスコットは、彼を対等な大人として、更に言えば上役のように感じていることが、言葉の端々から感じられた。そのことを指摘すると従士たちとベルトラムは無表情あるいは不機嫌そうな表情になり、スコットはどこか納得したような表情になった。なお、このことについては小職らの印象であり、確認された事実ではない。だが、件の少年が、四、五歳という幼少期より天才性を発揮していたことは間違いない。ただ、その要因が神の手による先天的なものなのか、後天的なものなのかは我々の調査では解明できなかった……』
ワーグマンはその報告書を静かに閉じ、
(私も一度行ってみたいものだな、そのラスモア村というところに。彼が成したことを見るだけでも価値がありそうだ。まあ、私にその時間はないがな……)
彼は調査報告書にあるラスモア村の特異性について、ザカライアスという少年が関わっていると確信していた。
それはワーグマン自身がザカライアスと話したことにより、ザカライアスが自分の愛する故郷を発展させるために、様々なことをしたと想像できたからだ。十歳の子供が行えるはずがないと言われれば、ワーグマンは素直に首肯しただろう。だが、彼の直感は、ザカライアスがそれらを成したと訴えていた。
(しかし、本当に面白い!……だが、彼には借りがある。この報告書は人目に付かぬ所に保管しておいた方がいいだろうな。この程度で返せる借りではないが……特にマイルズ――マイルズ・イシャーウッド参事――が興味を示すと厄介だしな。幸い、先日のことでそれどころではないようだがな。フフフ……)
彼はその報告書を自らの執務机引出しの奥に入れた。そして、その後、ザカライアスたちの故郷に関する話は二度とギルド内では出さなかった。
第三者が見たラスモア村というものを書いてみたかったため、閑話的な話を入れてみました。




