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ドリーム・ライフ~夢の異世界生活~  作者: 愛山 雄町
第六章「教導者時代:諸国編」

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第十八話「ルナの生活」

ルナの視点です。

 十月一日。


 今日は秋のお祭、収穫祭。

 私も着飾って村の中心のお祭の会場に向かっている。一緒にいるのはザックさんたちで、ザックさんはいつも通りの黒一色だけど、リディアさんたちはいつもより少し華やかな服を着ている。


 皆さんきれいだから、そんなに着飾らなくてもいいのにと思ってしまう。メルさんにそのことを話したら、「だって好きな人には少しでもきれいだって思われたいでしょ」と笑いながら言われてしまった。


 ザックさんたちの他にはセラちゃんとセオ君、そして同い年のライル君、ユニスちゃん、ロビーナちゃんも一緒だ。


 セオ君は青が目立つ騎士服という服を着ている。セラちゃんも同じで、その服を着て外に出ようとした時に奥方様に見つかって叱られたけど、そのまま逃げてきたらしい。後でもっと叱られると思うけど、セラちゃんはあまり気にしていない。


 セラちゃんたち五人のことだけど、もう少ししたらこの村からいなくなる。五人でフォルティスに修行に行くことになったから。

 まだ来ていないけど、ギデオンさんが村に来ることになっていて、帰る時に一緒にフォルティスに行くらしい。


 ギデオンさんが村に来る理由は鍛冶師ギルドの依頼みたい。ザックさんに魔法陣のことを教えてもらう鍛冶師の護衛だと教えてもらった。そのため、一ヶ月くらいは村にいるらしい。



 帝都行きの旅行から戻った後、行く前の生活とは一変したわ。それまでは引き篭もっていただけで何もしていなかったけど、今はいろいろなことをやっているから。

 一番時間を掛けているのは魔法の勉強。私には闇属性の才能があるらしく、ザックさんやシャロンさん以上の魔術師になれるとリディアさんが言っていた。

 自分ではよく分からないけどリディアさんやザックさんが言うのだからそうなのだと思う。


 でも、この勉強はあまり楽しくない。

 身体の中にある魔力を精霊に与えて魔法を発動させるのだけど、全然進歩がない。魔力みたいなものが身体の中心にあることは感じられたけど、それを外に取り出すことができないから。


 その訓練を毎日二時間くらいやり続ける。もっとやってもいいのだけど、集中力を切らした状態では精霊が暴走するかもしれないからということでそれ以上は禁止されている。

 全然進歩がないけど、別に焦ってはいない。


 ザックさんから聞いたのだけど、普通の魔術師でも魔法を使えるようになるには二、三年は掛かるから、たった三ヶ月でできる方が珍しいらしい。教えてくれたザックさんは一日でできたとリディアさんから聞いているけど。


 この訓練の他にこの世界のことも勉強している。

 といっても学校に行っているわけじゃないわ。ザックさん、リディアさん、シャロンさんが代わる代わる家庭教師になって教えてくれるから。

 理由を聞いたら、ザックさんが教えてくれた。


「学校のレベルが低いからな。高校生だったルナが授業を受けても退屈するだけだぞ」


 レベルが低いといっても日本人の感覚らしい。この世界の教育レベルはとても低いから、この村の学校でも世界有数の教育機関だと笑いながら教えてくれた。


 この世界の話を聞くのは結構好き。特にザックさんに教えてもらうのが一番楽しい。

 理由は私がザックさんのことを好きだからというのもあるけど、一番分かりやすいから。

 ザックさんは日本のことを知っているから、よく比較しながら教えてくれる。


「この世界にはいろいろな政治形態があるんだ。帝国は帝政だし、カウム王国やラクス王国は王政。都市国家連合は限定的だけど民主主義で中世ヨーロッパのハンザ同盟に近い感じだし、ルークスは原理主義の宗教国家にそっくりだ……」


 私自身、あまりニュースは見ていなかったけど、中東の宗教の原理主義国家のことくらいは知っている。でも、ハンザ同盟っていうのはよく分からなかったわ。世界史で習った気はするけど。


 世界のことだけじゃなく、神話というか神様についても教えてもらっている。


「この世界には神様が実在するんだ」と最初に言われた時、少し違和感を持った。だって、ザックさんって元日本人だし、宗教とか嫌いそうだから。


 だから「神様にあったことがあるんですか」と聞いてしまった。その時、ザックさんは珍しく口篭った後、「神様っていう言い方がよくなかったかな」と笑って、話を続けた。


「魔法に八つの属性があるというのは教えたよな」


「はい」


「魔法を使うには精霊に力を借りないといけない。でも、精霊っていう存在は地球にはなかったよな」


「はい。私が知らないだけかもしれませんけど」と答えた。


 だって、本当に魔法がないかは疑問に思っていたから。というより、ある方がロマンがあっていいなと思っていたから。


「そうかもしれない。でも、この世界では確実に存在するんだ。俺には見えないが、リディには結構はっきり見えているらしいし、魔法を使うことでその存在を感じることができる。この精霊に力を与えている存在が神だとすれば、神々が存在すると言えるんじゃないかと思っている……」


 私はふーんという感じで聞いていたけど、心の中ではこの世界には神様がいると思っているし、感謝もしている。だって、ザックさんに会わせてくれたから。


 こんな感じの授業を受けている時が一番楽しい。でも苦しい日課もある。

 それは身体を鍛えること。


 ティセク村にいたからなのか、この世界の両親からの遺伝なのかは分からないけど、私の身体は十二歳になるにしては小柄だ。セラちゃんたちと比べると十センチ近く小さいし、二つ年下のソフィアちゃんと比べてもそんなに背は変わらない。


 身体も丈夫じゃなく、たまに熱を出して寝込むことがある。病気の場合はザックさんが魔法で治してくれるから何日も寝込むようなことはないのだけど。


 そんなこともあってザックさんから「ルナは基礎体力を付けないといけないな」と言われている。

 そのために毎日二キロ以上走り、訓練場の横にある鉄棒や木登り用のロープを使って身体を鍛えている。


 そのおかげもあって昔より健康になった気がする。この村に来た頃には丘を登るだけでも息が切れていたけど、今では少し汗を掻くくらい。もっともセラちゃんたちは駆け上がっても平気な顔をしているけど。


 何だか学校生活みたいだけど、魔法の勉強や訓練以外は楽しく過ごしている。

 一番楽しいのは料理を作らせてもらえるようになったこと。今はそれが楽しくて仕方ない。特にモリーさんと一緒に料理を作るのは本当に楽しい。皆さんの分のパンを焼くために夜明け前に起きないといけないけど、全然苦にならないくらい。


 本当は昼食や夕食の準備もやりたいのだけど、時間がなくてちょっと手伝うくらいしかできない。それでもいろんな料理を作らせてもらえるし、私が作る夕食後のデザートは評判がよくて、褒めてもらえるから本当に楽しい。


 このまま料理だけ作って過ごせたら、この世界に来たことがよかったと思えるかもしれない。

 だって、こんなに褒められたり、求められたりしたことなんて、日本にいる時にはなかったことだから。


 でも、それではいけないと分かっているわ。

 この世界は厳しいところ。ロックハート家の人々のように強くても、魔物や悪意を持った人に襲われたら、死んでしまうのだから。


 私が命を落とすだけなら、別に気にしない。もちろん痛いのは嫌だし、死んだからといって日本に帰れるわけじゃないから死にたくはないけど、それでも自分だけならまだ許せる。


 でも、私がいることで他の人が怪我をしたり死んだりしたら自分を許すことはできない。特にザックさんはいつも私のことを守ろうとしてくれる。だから、あの人が傷つくようなことにならないよう、できることはきちんとやらないといけない。



 ちょっと暗い話になってきたから、少し別のことを考えよう。

 そう、あの人のことを。


 六月の終わり頃に村に戻ってきてから、あの人は私の勉強や訓練に付き合ってくれている。もちろんそれだけじゃないわ。だって、あの人はとても忙しい人だから。


 あの人は朝の訓練が終わると、最初に土属性魔法で穴を掘りにいく。最初の頃は貯蔵庫用の地下室を作るためで、一ヶ月ほどでそれを作り終えると、今度は下水道を作り始めたわ。

 下水処理ってどうやるのか知らなかったけど、ザックさんは日本での処理の方法を知っていた。


「俺も詳しいわけじゃないんだが、汚水に含まれる有機物を微生物を使って分解するんだ。もちろんその前に一緒に流れてくるゴミなんかを取り除くし、微生物が分解した後の水も殺菌処理なんかで更にきれいにしているんだ……」


 詳しくないって言っているけど、私には充分詳しいと思った。そのことを聞くと、


「昔、工場の建設で合併浄化槽を使わないといけないところがあったんだ。それで少し調べたことがある。でも、その程度だぞ」


「普通の人は下水処理のことなんて知らないと思いますよ」といってから笑ってしまった。


 ザックさんは「そんなものか」といっていたけど、これに関しては私の方が正しいと思う。


 話が脱線したけど、下水処理にスライムを使うとは思わなかった。でも、そのことをいうと、あの人は本当に楽しそうに説明してくれた。


「俺も初めて聞いた時、本当に驚いたよ。まさか魔物を使うとはってね。でも、よく考えてあるんだ。普通のスライムは魔物や動物の死体を食べるんだが、ゴミや汚物を食べることはない。でも下水処理に使うスライムは常に飢餓状態で有機物なら何でも食べようとする。それに飢餓状態だから、勝手に増えることもないんだ……」


 お酒の話をする時も楽しそうだけど、こういう話も大好きみたい。


 また脱線したけど、朝一番に魔法を使うのは昼の間に魔力が回復するからだって教えてもらった。回復すればもう一度夕方に魔法が使えるようになるから。働き過ぎな気もするけど、魔法は使えば使うほどレベルが上がるからって言っていた。


 地下室や下水道を作りにいった後は私の訓練に付き合ってくれる。といっても午前中は館ヶ丘の中を走っているだけだから、その間は先代様の訓練に参加しているんだけど。

 私が走り終えると、次は鉄棒や木登りの練習になる。この時は訓練を抜けて私に付きっ切り。


 でも、小学校以来というか、十何年ぶりに鉄棒をやったけど、できていたはずの懸垂すらできなくなっていた。腕が棒みたいに細かったから仕方がないんだけど、最初は結構ショックだった。今では二十回くらいできるようになったし、逆上がりもできる。

 その後、マット運動のようなことやヨガみたいな柔軟体操みたいなことをやっている。そのお陰で身体は随分柔らかくなったわ。


 それが終わるといつもお昼ご飯の時間。

 お昼は離れでリディアさんたちと一緒に食べることが多い。ザックさんはというと、その時間を利用して立派な黒馬、“コクヨウ”の世話をしてから、そのままコクヨウに乗って蒸留所か、鍛冶師ギルドの研修所に行ってしまう。


 蒸留所の時は二時間くらいで戻ってくるけど、研修所にいくと夕方まで戻ってこない。ううん、宴会に誘われて夜まで戻ってこないことの方が多いわ。そんな時は暗くなる前にコクヨウだけが戻ってくるんだけど、ザックさんに聞いたら勝手に帰っているらしい。


 本当に信じられないくらい頭がいい。だけど一頭だけで帰ってくる時は何となく寂しそうな顔をしている。私と一緒で相手をしてほしかったんだと思う。

 そんなことを思うようになってから、コクヨウと仲よくなれた気がする。他の人だとなかなか乗せてくれないんだけど、私は割りとすんなり乗せてくれたから。


 蒸留所から戻ってきたら、私の勉強に付き合ってくれる。時間にしたら一時間くらいなんだけど、本当にあっという間に終わる感じ。


 その後は夕食前の訓練に参加する。私も一緒にいくけど、あの厳しい訓練には入れないから別メニューになっている。縄跳びをしたり、腕立て伏せをしたりという感じ。


 夕食の前にお風呂に行くか、離れにあるシャワーで汗を流す。ザックさんたちはお風呂好きだから丘の麓にある公衆浴場にみんなで行くことが多い。


 公衆浴場にいくとザックさんとリディアさんとベアトリスさんは必ずビールを飲む。

 近くにベンチがあるんだけど、そこになぜか屋台まであって、ビールの樽が置いてあるから。

 これはドワーフの皆さんの要望で置かれるようになったらしい。

 ザックさんかシャロンさんが魔法で冷やすか、地下室の氷室で冷やした樽が持ち込まれている。


「プハァ! こいつはやめられないね」とベアトリスさんがおじさんみたいにジョッキを呷っている。こういうことをしなければ、クールな感じの美人なのにもったいないと思う。


 夕食はお客様がきていなければ、屋敷で食べることになっている。子爵になってから訪れる人が多くなったので三日に二回くらいの割合かな。ザックさんたちだけじゃなく、先代様、御舘様を始め、奥方様やロッド様、ロザリー様たちロックハート家の方たちと一緒に食事をするのが不思議な感じ。

 だって私はただの村娘にすぎないのだから。


 もちろん、御舘様や奥方様が養女にしたいとおっしゃっていることは知っているし、ザックさんと同じ世界から来たということも理由の一つだとも思っている。


 でも、ここにいる人たちはこの世界ではとても有名な人たち。元の世界でいったら、プロスポーツ選手とか有名な政治家とかっていうセレブといったところ。

 そんな人たちとただの高校生だった私が一緒というのは未だに信じられない。


 夕食の後は一人で本を読んでいることが多いわ。さすがに夜までザックさんと一緒にいるわけにはいかないから。だって、二人も奥さんがいる人なんだから。


 そのことを考えると少し寂しくなる。

 私の表情が曇ったのに気づいたのか、セラちゃんが「どうしたの?」と聞いてきた。


「何でもないわ。セラちゃんたちがもうすぐいなくなるなって少し思っただけ」


「そうね。私もルナと一緒にいられないのは寂しいわ。でも、こんなチャンスはないから」


 セラちゃんは本当に剣術が好きだ。強くなるためにはどんなことだってするって感じ。その点、双子のセオ君は少し違う。もう少し理論的に強くなろうとする感じかな。


「あと一月くらいか。今日もそうだが、まだ戦勝記念祭もあるし、一緒に楽しんだらいい」


 ザックさんがそう言って私の頭に手を置く。

 ゴツゴツとした手だけど温かいし、心地がいい。でも、子供扱いってところが少し不満。それに少し恥ずかしいからすぐに逃げ出してしまう。


「そうですね。じゃあ、セラちゃん、どこを見にいったらいいかな」といって彼女の手を取って走り出した。


「俺たちはその辺で飲んでいるからな」と後ろからザックさんの声が聞こえてきた。


 こんな生活がずっと続くといいなと思いながら、「分かりました」といって人ごみの中に入っていった。

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本作品とは毛色が違い、非転生・非転移ものですが、こちらもよろしくお願いします。
最弱魔術師の魔銃無双(旧題:魔銃無双〜魔導学院の落ちこぼれでも戦える“魔力式レールガン戦闘術”〜(仮))
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