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ドリーム・ライフ~夢の異世界生活~  作者: 愛山 雄町
第一章「少年時代:ラスモア村編」
3/529

第一・五話「キャラクター作成 詳細版」

第一話「キャラクター作成」の詳細版です。

内容は同じですので、興味のない方は飛ばしても影響ありません。

(ここはどこだ?……ああ、懐かしい部屋だな。アキラの部屋か……何でここにいるんだろう?)


 俺はぼんやりとした頭で、なぜ、中学時代の友人、アキラの部屋にいるのか考えていた。

 アキラの部屋には俺以外、誰もおらず、いつも置いてあるコタツの上には、TRPG――テーブルトークRPG――の説明書と、十面体サイコロが二つ置いてあった。


(十面体サイコロか。懐かしいな……何々、タイトルは“トンネル&ドラゴンズ”、略して“T&D”か。パクリもここまで来たら潔いな(注)……)


(注:タイトルを見て、有名なTRPG、トンネル&トロールズ(T&T)とダンジョン&ドラゴンズ(D&D)を合わせたパクリだと考えた)




『おい、弥太、弥太郎。早くキャラクターを作ってしまえよ。遅いぞ!』


 突然、アキラの声が聞こえてきた。

 周りを見ても姿は見えないが、俺は特に気にすることもなく、返事をしていた。


「ワリィな。でも、まだ説明書すら読んでいないんだ。もうちょっと待ってくれよ」


『分かったよ。さっさと済ませてくれ』


 俺はT&Dの説明書を開き、読んでいく。

 読み進むうちに自分の知っているTRPGと、それほど変わりないことに気付き、気になるところ以外は読み飛ばしていく。


 アキラにせっつかれながら、コタツの上にあるTRPGの説明書――B5サイズで二百ページほどの厚みがある本――を手に取った。

 ページをめくると、そこには懐かしいゲームの説明文が並んでいた。


(懐かしいな、この乗り。やっぱりTRPGの説明書は、ゲーム機の取説とはどこか違う感じがするな……)



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「トンネル&ドラゴンズ(T&D) () (注)」の世界にようこそ。

 本ゲームは、剣と魔法の世界を舞台にしたテーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)です。

 個性豊かなキャラクターを自由に動かし、あなたの夢を叶えて下さい。


注:トンネル&ドラゴンズ及びT&Dは株式会社トリニティ・ワールド・クリエイターズ(TWC)の登録商標です。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(さてと、キャラクターを作るとしますか)


 俺はキャラクター作りを始めるため、説明書のページを捲っていった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――


一.キャラクターを作ろう


 あなたのこの世界での姿、キャラクターの作成方法を説明します。


 キャラクターを作るには、種族、ステータス、才能、特殊能力、出生環境を設定していきます。

 基本的(注)には、十面体サイコロ(付属の赤と白のもの)を振り、その数字に従って、あなたのキャラクターを作っていきます。

 なお、出た目が悪いとあなたが判断した場合、次の工程に進む前に限り、一度だけ振り直すチャンスが与えられます。


注:本ゲームの神に当たるゲームマスター(GM)より、特別な指定がある場合はGMの指示に従います。



 まずは種族から決めていきましょう。


 GMより、特別な指定がなければ、種族は十面体サイコロ二つによって、ランダムに設定されます。

 出た数字が、以下の数字以上であれば、その種族に生まれることになります。


 竜人百、魔族九十六、エルフ九十一、ドワーフ八十一、獣人六十六、人間一


 では早速、種族を決めましょう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(種族からか。でも、今までのTRPGだったら、自分で種族を選べるのにな。ちょっと変わった趣向だな)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


2.ステータス・才能・特殊能力を決めよう。


 次はステータスと才能を決めます。

 ステータスは下の十項目からなり、サイコロを二つ振った一から百までの数字になります。

 一般的な人間のNPCの場合、平均値が五十。標準偏差が十になっています。すなわち、八十以上の数字を持つ者は、千人に一人くらいしか、いないことになります。


 才能と特殊能力は、キャラクターポイント(CP)と呼ばれるボーナスを決め、その数字を使って、生まれながらの能力を付与していきます。

 CPはステータスの向上や、出生環境の条件設定にも使用できます。

 CPは、サイコロを三回振った数の積、すなわち、一から千までの数字になります。



 ステータス

(a)筋力

  物を持ち上げる力や攻撃力に影響します。

(b)反射神経

  咄嗟の判断、先制攻撃権、攻撃回避などに影響します。

(c)肉体制御能力

  命中率、運動関係の成功率に影響します。

(d)耐久力

  所謂ヒットポイント(HP)や持久力に影響します。

(e)魔力

  魔力保有値(MP)と生命力に影響します。

(f)精神力

  精神攻撃耐性に影響します。

(g)知力

  知識習得、魔法成功率に影響します

(h)製作能力

  製作の成功率、罠製作、解除に影響します。

(i)容姿

  同族に対する第一印象に影響します。

(j)魅力

  好感度や交渉に影響します。


上記より算出されるステータスは以下の通りです。


(k)生命力値(HP)

  耐久力×(一〇〇+戦闘技能レベル)÷一〇

(l)魔力保有値(MP)

  魔力×(一〇+魔術レベル^二÷一〇〇)



――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(一般的なステータスか……おや? “運”がないな。普通はあると思うんだけど……何々、“運”について何か書いてあるな……)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ステータスを見て、いわゆる“運”というパラメータがないことにお気づきでしょうか?

 T&D ()では、運はキャンペーンの最初に、GMが決めることになっています。

 これは生まれてから一生、いい運が続くというのはあり得ない、又は、そんな人生は面白くないという考え方を採用した結果です。

 GMの判断でランダムにすることも、GMが設定することも自由に行えますが、運については、プレイヤーには開示されません。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(なかなか、面白い設定じゃないか。確かにバイオリズムみたいなものが、あってもいいな。異様に運のいいキャラっていうのは、面白みに欠けるし……次は才能の項目か……)



 アキラの声が再び聞こえてきた。


『弥太郎、早くしろよ。こっちは早くやりたいんだよ』


「わりぃな。もうちょっと待ってくれ」


 俺はアキラに詫びを入れながら、才能の項目を読み始める。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 才能

 才能は、各技能に対して、生まれ持った上限値と修得速度を指します。

 才能はレベル一~五の五段階あり、スキルの上限と修得速度が変化します。


 レベル〇:上限五〇、 修得速度一・〇倍

 レベル一:上限六〇、 修得速度一・五倍、必要CP  五

 レベル二:上限七〇、 修得速度二・〇倍、必要CP 一五

 レベル三:上限八〇、 修得速度三・〇倍、必要CP 四〇

 レベル四:上限一〇〇、修得速度四・〇倍、必要CP 七〇

 レベル五:上限なし、 修得速度五・〇倍、必要CP一〇〇


 才能レベルの目安は以下の通りです。

 才能レベル一:村一番(百人に一人)

 才能レベル二:街一番(一万人に一人)

 才能レベル三:名人級(十万に一人)

 才能レベル四:天才(百万人に一人)

 才能レベル五:百年に一人の天才(一億人に一人)


 イメージを掴み易くするため、野球に例えてみます。

 才能レベル一で草野球のスター

 才能レベル二で甲子園出場クラス

 才能レベル三でプロの二軍クラス

 才能レベル四でプロの一流選手

 才能レベル五はメジャーリーグの殿堂入りクラス


 上記の例はあくまでイメージです。実際には才能だけでなく努力が必要ですから、必ずしも才能を持っている者全員が、そのレベルに達するわけではありません。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(なるほどね。才能があっても努力しなければ、その道のプロフェッショナルにはなれないってことか。妙に現実臭い設定だな)


 俺は才能レベルを見た後、才能の一覧を斜め読みしていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 武術系の才能一覧(必要CPはレベルによって変わる)

・剣術:剣による攻撃の才能

・槍術:槍による攻撃の才能

・斧術:斧による攻撃の才能

・棍術:棍による攻撃の才能

・格闘:素手による攻撃の才能

・弓術:弓による攻撃の才能

・投擲:物を投げることによる攻撃の才能

・暗器:特殊武器による攻撃の才能

・盾防御:盾による防御の才能

・回避:攻撃回避の才能



魔法才能一覧

・魔法才能(各属性二〇CP、全属性修得一〇〇CP)

  魔法を使うために必要な才能

・魔力効率向上(五〇CP)

  魔力使用量を軽減できる(五〇%使用量を軽減)

・魔力防御(二〇CP)

  魔法攻撃に対する防御力(魔術レベル分ダメージを軽減)

・魔力付与(五〇CP)

  道具、武器などに魔法を付与できる才能



生産才能(必要CPはレベルによって変わる)

・農業:農業に関する技能(食用植物に関する知識含む)

・狩猟:狩猟に関する技能(動物に関する知識含む)

・漁業:漁業に関する技能(魚類、海洋又は河川の知識含む)

・木工:家屋、家具などの製造に関する技能

・鍛冶、金属加工:武器、防具など、金属製の道具の製造に関する技能

・土木:土木関係に関する技能

・薬草学:薬の製造に関する技能(毒に関する知識含む)

・窯業:陶器製造に関する技能

・織物:布類、服の製造に関する技能

・細工師:革、木、金属などを使った道具、装身具の製造に関する技能

・料理:料理に関する技能



その他技術(必要CPはレベルによって変わる)

・体術:特殊な動き(登攀、受け身など)に関する技能。

    不安定な体勢での攻撃や、転倒時のダメージに影響する。

・馬術:乗馬、騎乗戦闘に関する技能

・操船:操船に関する技能

・水泳:水泳に関する技能

・調教:動物を調教するために必要な技能

・交渉:対人交渉に関する技能。値段交渉、尋問などの成功率に影響

・計算:数字を取り扱うために必要な技能

・記憶術:物を覚える速度に影響する技能

・気配察知:敵や罠など、危険を察知する技能

・隠密:自らの気配を消す技能

・罠:罠製作、解除に関する技能

・歌唱:歌を歌う才能

・舞踏:踊りを踊る才能

・画力:絵画を描く才能



特殊能力

・頑健(一〇CP)

  耐久力・精神力に+五〇%の補正。HP減少時のペナルティ軽減

・病気耐性(二〇CP)

  病気に対する抵抗力強化。罹患判定に+五〇%の補正。ダメージ軽減

・毒耐性(二〇CP)

  毒に対する抵抗力強化。判定に+五〇%の補正。ダメージ軽減

・精神耐性(二〇CP)

  精神攻撃に対する抵抗力強化。判定に+五〇%の補正。ダメージ軽減

・視力強化(二〇CP):視力の向上、暗視能力付与

・聴力強化(二〇CP):聴覚の向上

・嗅覚強化(二〇CP):嗅覚の向上

・第六感(五〇CP):第六感の付与。ランダムで危険を察知する

・死力発揮(二〇CP):HP一〇%以下となった時の能力値アップ(一〇〇%)

・前世記憶(五〇CP):

  前世の記憶を保持。プレイ中に現代の知識を応用することができる。

・参照(一〇CP):触ったものの名前と簡単な説明が見られる

・両手利き(一〇CP):左右両方の手でペナルティなしに道具が使える

・一撃必殺(一〇〇CP)

  クリティカル率アップ(武術レベル×消費MP×〇・〇一%)。

  消費MP×〇・〇一秒間、攻撃及び回避行動不能

・魔闘術(二〇CP):

  魔力を纏うことにより、攻撃、防御、回避などの成功率を上げる

・守護精霊(二〇〇CP)

  プレイヤーを守る守護精霊と契約できる。能力はプレイヤーのレベル依存。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(数が多いな。戦闘のシステムが分からないと、どれを選んでいいのか悩むな。とりあえず、ステータスとキャラクターポイントを決めてから、もう一度考えるか……)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


出生環境

・出生家系

王家一〇〇、貴族(公爵九九、侯爵九八、伯爵九六、子爵九三、男爵八五)、騎士七〇

大商人六五、地主五五、商人五〇、職人四五、行商人四〇、農家一五、ならず者六、

奴隷一

・出生家庭環境(昇運九〇、円満七〇、安定四〇、没落三〇、崩壊一)

・出生地(首都九五、地方都市七〇、地方五〇、辺境三〇、係争地二〇、荒野一)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(出生家系は判るけど、家庭環境の意味がよく分からんな。何々、“昇運”は富と運に恵まれ次の階級に上がる直前、“円満”は経済的に恵まれ、家庭内の人間関係も十分以上、“崩壊”は家庭内の人間関係が最悪か。崩壊した家庭では無事成長することを判定する必要があるだと……崩壊は絶対に防ぐ必要があるな。家系は奴隷では難易度が高すぎるな。ならず者でも冒険者にはなれるから、奴隷だけは回避する必要があるな……)


『弥太、早くしろ! ちゃっちゃと作っちまえ!』


 アキラのイライラした声が俺を急かす。


「分かった、分かった。今からサイコロ振るから、声を掛けるなよ」


 俺は集中してサイコロを振りたいため、アキラに釘を刺す。



 一通り説明書を読み終えた俺は、遂にキャラクター作りに入ることにした。


(まずは種族からか。でも、今までのTRPGだったら、自分で種族を選べるのにな。ちょっと変わった趣向だな)


 俺は、横から見ると菱形のように見える、赤と白の十面体サイコロを手に取る。

 いつものように、サイコロの上の数字が“〇”になるように掌に乗せ、スナップを利かせて、コタツの天板の上に転がす。


(この感触。なかなか止まらないドキドキ感。本当に懐かしい……)


 独楽が回るように転がるサイコロが、ゆっくりと止まっていく。

 俺はドキドキしながら、目まぐるしく変わる数字を眺めていた。

 そして、サイコロが止まった。

 出た数字は“四”と“一”。


(四十一か。人間だな。竜人とかエルフとかが、良かったんだけどな。そうは言っても、振り直しをしても、三分の二は人間なんだから、このままでいいか)


 俺は種族を人間とすることにし、手元のメモ用紙に人間と書き込む。そして、次の項目に進んでいく。



 俺はステータスを決めようとして、ふと、一回だけできる、“振り直し”のことを思い出した。


(振り直しが一回だけっていうことは、重要な数字から決めていった方がいいってことになるな。後で悪い数字が出たのに、振り直しの権利を使い切っていたら必ず後悔する……ステータスよりキャラクターポイント(CP)の方が重要だよな、間違いなく。CPから決めてはいけないとは書いていないから、こっちから決めていくか)


 俺は何度かサイコロを振り、相性のいい赤のサイコロに運命を託した。


(この数字が三百以上になれば、かなり有利になる。頼むぜ、俺のラック!)


 俺はサイコロに無駄に念を送って、コタツの天板の上に投げる。


 コロコロ……出た数字は、“九”


(ヨッシャ! いいぞ!)


 もう一度、サイコロに念を送って投げる。


 コロコロ……“十”


 俺は誰もいない部屋でガッツポーズを決める。


(あれ? アキラはどこに行ったんだろう? まあいいか。これで四以上が出れば、目標の三百以上だ)


 三投目、気合を入れ、“てえぃ!”とサイコロを転がす。


 コロコロ……“二”


(ああ、ここに来て“二”かよ。CPは百八十か……さて、振り直しの検討だな)


 俺はがっくりと項垂れながら、一回だけの振り直しの権利を行使するか考える。


(振り直した時に今より悪くなる確率は十分の一、良くなる確率は十分の八。リスクよりリターンの確率の方が断然高い。やる価値は十分にある……よし、キャンセルだ!)


 俺は三投目の数字をキャンセルし、振り直しを選択した。

 そして、もう一度気合を入れ直し、十面体サイコロに念を送って転がした。


 よく転がる十面体サイコロが“コロ”という音を立てて止まる。

 出た数字は“九”。


(ヨッシャ! 九掛ける十掛ける九で八百十。相当ステータスが低くてもリカバリーできる。みんなには悪いが、チートキャラにさせてもらう。ふふふ……)



 俺はほくそ笑みながら、数字を眺めていた。

 そんな姿を見ていたのか、『早くしろよ。遅いぞ!』と、イラつくアキラの声が聞こえてきた。


「わりぃ。つい夢中になった」


 俺は慌ててステータスの設定に入る。


 筋力から決めていく。

 気合を込めて、サイコロを振る。

 コロコロ……出た数字は三と五。


(三十五か。かなり低いな。後でCPで補正できるから、気にする必要はないな。他のステータスをちゃっちゃと決めていこう……)


 最終的に、筋力:三五、反射神経:八二、肉体制御能力:八三、耐久力:二〇、魔力:九六、精神力:四一、知力:九九、製作能力:四五、容姿:八七、魅力:八一となった。


(結構いい数字が集まったな。これだけ見れば、完全に魔法使い系キャラだな。肉体労働は誰かにお任せしますっていう感じだ)


 いい感じの数字に気を良くした俺は、スキルの獲得の項目に移った。


(武術だけでも十個以上。魔法は八つの属性か。才能は高ければ高いほど、スキルレベルの上昇速度が上がるから、本職にするなら三以上、普通に使うなら一でも十分ってとこか)


 俺はステータスの特性を生かし、魔法関連の才能を多めに取得した。


(まずは、全属性修得はほしいな。ちょっと高いが、五属性以上取るつもりなら、こっちの方がお得だし……当然、魔力効率向上と魔力防御も取っておいてと……魔力付与ってのが良く分からないな。五十CPもするし、生産系に関連するだけならいらないか……)


 俺は魔法系で魔法才能全属性修得、魔力効率向上、魔力防御の三つを押さえ、CPを百七十消費した。


 次に特殊能力で基礎能力向上を図る。


(次は特殊能力で基礎能力の底上げだな。キャンペーンの内容次第では、何が起こるか分からないし、病気、毒、精神の三つの耐性は必須だろう。頑健は一〇CPで耐久力と精神力に+五〇%の補正が掛かるお得な能力だな。視力強化もダンジョンに潜るなら必須。聴力と嗅覚は保留だな)


 次に特殊能力のうち、気になる能力について検討していく。


(死力発揮はそんな状況にならないよう努力すればいらないか……いや、普通のシナリオなら、キャラレベルに合わせてギリギリの設定になっているはずだ。っていうことは、死力発揮をせざるを得ない状況になる可能性が高い。これも押さえておこう)


 そして、残りの前世記憶、参照、両手利き、一撃必殺、魔闘術、守護精霊の中から、選ぶべきものがあるか、検討する。


(前世記憶というものの使い方が良く分からないな。現代知識をゲームに持ち込むのは、何となくマナー違反のような気もするけど、これがあれば大手を振って使えるってことなのか? 五〇CPは痛いけど、使い道は多そうだな。参照は制限が多そうだけど使い道はある。一〇CPと安いし。両手利きはいらないな。後でCPが余ったら考えるくらいだな。守護精霊は二〇〇CPか。レベル依存って言うのと高過ぎるのがネックだな。魔闘術は具体的な使い方が分からないけど、魔力が高いから保留だな。さて、問題は一撃必殺だ……)


 俺は“一撃必殺”の言葉の響きと、簡単な説明書きを見て、大きく揺れていた。


(クリティカル率は通常命中率の五十分の一。魔力は高いから千くらい使っても問題ないし、武術レベルが十だとするとこれだけでも一〇〇%も上がる……うん? 一〇〇%上がるっていうのはクリティカル率の話なんだよな。五十分の一が二十五分の一になるだけなのか? 武術レベルが上がれば役に立つけど、魔法使いを目指す俺には関係ないか……でも、アサシンっぽくってほしいんだけど……一〇〇CP消費じゃなければ買ったんだけど……)


 俺は泣く泣く一撃必殺を諦め、特殊能力はとりあえず、頑健、病気耐性、毒耐性、精神耐性、視力強化、死力発揮、前世記憶、参照の八つを選び、CPを百四十消費した。


(ここまでで三百十か。まだまだ使えるな。武術とその他技術で三百くらい使うとするか……)


 武術系は護身用、その他技術は街での情報収集など、戦闘以外のシチュエーションを考えて選ぶことにした。


(まずは武術系だ。やはり護身用に素手の“格闘”は外せないな。あと定番の“剣”だな。長距離攻撃の“弓”も欲しいけど長距離は魔法があるから、弓はやめておこう。そうだ! 大事なのは攻撃を受けないことだった。このためにも、回避は目一杯上げておきたい……)


 とりあえず、回避を五、剣と格闘をそれぞれ一ずつ割り振る。


(才能レベルって四が一番中途半端だな。三もCPを四十も使うのに、二と比べても最高到達レベルはそれほど変わらないし、一と二が得なような気がするな。修得速度を上げたいときには二、とりあえず押さえておきたい物は一って感じか……)


 その他技術の項に入っていく。


(体術っていうのが、抽象的だな。ステータスの肉体制御とどう違うんだろう?……運動神経があっても、それだけじゃ体操選手にはなれない、そんな感じなのかな? まあいいや、ダンジョン内のことを考えたら、咄嗟の時の動作に役に立つから、こいつは押さえておこう。他にも罠と気配察知、隠密は迷宮探索では必須の能力だな)


 残りの技術を見ながら、移動や情報収集などのことを考え、必要になりそうな技術を選択していく。


(後は役に立ちそうなのは移動手段の馬術、情報収集に必要な交渉、水に落ちた時の水泳、動物の使役に役に立ちそうな調教くらいか……記憶術はヒントを元に判定する時にプラス補正でも掛かるのかな? 計算も謎解きに役に立つかも……でも、これって“才能”なんだよな。技術として身に着ける必要があるなら、才能がなくても問題ないかもしれないな)



 そして、念のため生産技術を見直していく。


(食料確保のことを考えれば、狩猟と薬草学はあった方がいいな。どっちも冒険者のクエストでありがちな物だし。でも、これも才能なんだよな。初期は使えるかもしれないけど、成長したら戦闘スキルの方が役に立ちそうだ。諦めよう)


 武術で回避を五に、剣術、格闘にそれぞれ一に割り振る。

 生産系は諦め、その他技術で体術、気配察知、隠密をそれぞれ三に、罠を二に、馬術、調教、交渉をそれぞれ一ずつ割り振った。

 武術とその他でCPを二六十消費した。



 修得した才能を並べると、

 武術系:剣術一、格闘一、回避五

 魔法系:魔法才能全属性修得、魔力効率向上、魔力防御

 生産系:なし

 その他:体術三、馬術一、調教一、交渉一、気配察知三、隠密三、罠二

 特殊能力:頑健、病気耐性、毒耐性、精神耐性、視力強化、死力発揮、前世記憶、参照


 これだけのスキルを修得してもCPは五百七十。


(回避を五にしたから、回避しながら華麗に魔法を打ち込むって感じか。生きていく上で必要なスキルは押さえたし、次は出生環境だな。まずは身分か)



 身分には王家から始まって奴隷階級まである。


(奴隷に生まれるのは絶対に嫌だな。ハンデが大き過ぎる。ステータスにも振りたいし、奴隷以外なら良しとするか。後は出生家系と家庭環境のバランスだな。もし、農民になったとしても環境を昇運にしておけば、成長に問題はなさそうだし、家系は奴隷を回避するだけにしておくか。それにしても五以下なんて確率は二十分の一。勿体ない気もするな。まあ、保険と考えれば安いものか……)


 俺はCPを五だけ使い、五以下の数字を無効にした。

 そして、いつものように気合を込めてサイコロを振る。

 コロコロ……出た数字は〇と三。


(あぶねぇ! CPを使わなきゃ、奴隷だったよ。保険って言うのは掛けておくもんだな……)


 足切りの数字以下であったため、振り直しを行う。

 俺はもう一度、気合を込めて振り直した。


 出た数字は、“七十一”。


 底辺ではあるが、支配階級の騎士となった。


(よし、いいぞ! 騎士の家に生まれた。後で武術の才能を見直すか)


 次に家の状況を決める。


(騎士の家だから、崩壊さえしていなければ、何とかなりそうだな)


 三十以上となるように、俺はCPを三十使った。


 そして、サイコロの結果は三十八の“没落気味”。


(クソッ! 折角三十も使ったのに、三十八かよ。なんか損した気分だな。まあ、落ちぶれつつある騎士の家っていうのも、キャラ設定的にはありってことにしておくか。没落しつつ家を建て直すため、冒険者になった。ありそうな設定だな)


 俺は気楽にそんなことを考えていた。


 そして、出生地を選ぶ。


(首都から人跡未踏の荒野までか。これも説明がないんだよな。常識的に考えれば、首都なら教育のチャンスや人脈なんかで有利になるんだろう。最悪、人跡未踏の荒野でも騎士の家ならありだろう。CPを振るのは勿体ないな)


 俺は、CPは使わない選択をした。

 そして、その結果は、“三十三”の“辺境”。


(……辺境の果ての没落気味の騎士の家。名声と富を求めて旅立つ主人公。完璧な設定じゃないか……)


 出生環境も決まり、残りのCPは二百五。


(さて、ステータスを上げますか。折角、騎士の家系なんだし、武術の項目を先に見直すか)


 そして、再び武術の項目を見ていく。


(剣を三に上げておくか。後は、盾防御も押さえておこう。そうだ。ナイフ投げっていうのも使えそうだな。投擲もついでに押さえておくか。これで四十五か。保留(ペンディング)しておいた魔闘術があったな。これも入れておくか)


 そして、俺が選んだ才能は、

 武術系:剣術三、格闘一、投擲一、盾防御一、回避五

 魔法系:魔法才能全属性修得、魔力効率向上、魔力防御

 生産系:なし

 その他:体術三、馬術一、調教一、交渉一、気配察知三、隠密三、罠二

 特殊能力:頑健、病気耐性、毒耐性、精神耐性、視力強化、死力発揮、前世記憶、参照、魔闘術

 となった。


(これで残りのCPは百四十か。ステータスを上げるか……)


 ステータスを上げる判断材料を探すため、俺は再度説明書を読むことにした。

 才能とスキルの習得方法の説明を見ると、ゲーム開始時を成人(このゲームでは十五歳)以上とした場合、ゲーム開始時にスキルを使うためには、“訓練”による”習得”が必要であると書いてあった。

 そして、訓練でのスキル習得については家庭環境(家が裕福で教師を付けられる)と、訓練の成功判定を行う必要があると書いてあった。

 幼少期の訓練成功判定は精神力以下の数字で成功。訓練実施回数は年間、耐久力数までとなっている。


(つまり、幼少期の訓練は耐久力と精神力によって、習得速度が変わるということか……体が丈夫で根気のある奴が訓練をやり抜く。妙に現実臭いな……どっちも低いんだよな。思い切って上げておくか……)


 俺はまず耐久力を二〇から八〇へ、精神力を四一から八〇に上げる。


(後は短所を改善するか、長所を伸ばすかだな。才能的には十分にとってあるし、残りのCPを使い切ってステータスを上げてしまうか)


 俺はそう考え、筋力を三五から五〇、反射神経を八二から九〇、肉体制御能力を八三から九〇、魔力を九六から一〇〇、知力を九九から一〇〇、製作能力四五から五〇にする。

 余った一を魅力に加えることにし、魅力を八一から八二に上げた。


 最終的には、筋力:五〇、反射神経:九〇、肉体制御能力:九〇、耐久力:八〇、魔力:一〇〇、精神力:八〇、知力:一〇〇、製作能力:五〇、容姿:八七、魅力:八二となった。

 修得した才能を並べると、

 武術系:剣術三、格闘一、投擲一、盾防御一、回避五

 魔法系:魔法才能全属性修得、魔力効率向上、魔力防御

 生産系:なし

 その他:体術三、馬術一、調教一、交渉一、気配察知三、隠密三、罠二

 特殊能力:頑健、病気耐性、毒耐性、精神耐性、視力強化、死力発揮、前世記憶、参照、魔闘術



 すべてのキャラクターポイントを使い切り、もう一度、確認する。


(ステータスの平均は八十。ファイブシグマ、十万人に一人のステータスが二つ、千人に一人のステータスが六つ。平均以下なしか。チートだな。それに才能も豊かだし。育てがいのあるキャラだよ。申し分ないな)


 俺がそう思った瞬間、コタツの天板に突っ伏していた。そして、再び意識が混濁していった。

趣味全開で書いたものです。

これを本文にすると、冗長すぎるなと思ったのですが、消すのもなんでしたので、投稿しました。

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本作品とは毛色が違い、非転生・非転移ものですが、こちらもよろしくお願いします。
最弱魔術師の魔銃無双(旧題:魔銃無双〜魔導学院の落ちこぼれでも戦える“魔力式レールガン戦闘術”〜(仮))
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