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第180話 堕ちた王女

「ぐっ……流石に、疲れたなあ」


 ダレスが地面に倒れそうになると、それをウルが支える。


「お疲れ様。随分と無茶したわね」

「そりゃあ、あんなにも楽しい戦いだったんだもの。多少の無茶はするさ」

「そう。それにしても、よくあの瓦礫から逃げ出せたわね。ラルカたちはどうしたの?」

「ああそれね。とりあえず、見てもらう方が早いかな。ついでに手伝ってくれよ。私1人じゃ無理だからね」


 ダレスに肩を貸しながらウルが下に降りると、驚きの景色があった。


「!? これは」


 気絶しているウェスト支部のメンバーが瓦礫の山から離れた所に避難していたのだ。


「ラルカちゃんが力を振り絞って、私達を瓦礫の山から逃してくれたんだ」

「それじゃあラルカは!?」

「1人で瓦礫の中に埋められた。ほんと、彼女には頭が上がらないよ。傲慢でムカつくところはあるけど、すっごく仲間思いだからね。さ、私達2人でこの瓦礫をどけるよ」


 そう言ってダレスがウルの肩を離れて瓦礫の元へ向かうも。


「およ? おろろろろ」


 数歩歩いただけでふらつき、膝をついてしまった。


「無茶をしないで。貴方だってかなりのダメージを負ってるのに、そんな状態でこの瓦礫をどけるなんて無理よ。おまけに、下手に動かせば瓦礫が崩れ、ラルカが死んでしまう可能性があるわ。だから」


 ウルは胸元に手を突っ込み、そこから白い粉の入った袋を取り出し、中の粉を播きはじめた


「なるほど。それは良い手段だね。あいつらはラルカがお気に入りみたいだし」

「気は進まないけど、贅沢は言ってられないしね。我、ここに汝を呼ぶ。正義の名のもとに集い、平和の礎のためにその身を捧げ給え!」


 彼女がそう言うと、白い粉は輝きだし、強い光を生み出す。そして、その光の中から現れたのは。


「赤き炎は正義の印。スーパーレッド!」


 赤いリボンを付け、短髪の活発な雰囲気のある女性。


「青き水は正義の印。スーパーブルー」


 青いリボンを付け、垂れ目のほんわかした女性。


「黄色い土は正義の印だべ。スーパーイエローだべ!」


 黄色いリボンを付け、大人の雰囲気醸し出すぽっちゃりめの女性。


「……黒い風は正義の印。スーパーブラック」


 黒いリボンを付けた、恐ろしいほどに無表情の女性の4人が揃った。


「4人合わせて、スーパーマンズ! 求めに応じ、ここに参上!!」


 4人が一斉にそう言って、決めポーズを決める。それに呼応するかのように背後で虹色の爆発が起きた。


「おや、ウルじゃないか。また君が呼んだんだね。というか」


 レッドは、後ろから襲ってきた偽熾天使(フラウド・セラフィム)を回し蹴りで蹴り飛ばした。


「戦争みたいな雰囲気出てるね。私たちを呼んだのは戦力増加のためかい?」

「そんな所ね。この瓦礫の山にラルカが埋められてるから、あなた達の魔術で助けてほしいの。ダレスは消耗が大きすぎてまともに動けないし、私じゃこの瓦礫を綺麗にどかす力がない。貴方たちに頼るしかないの」



 それを聞くと、スーパーマンズの全員が血相を変えた。


「なんだと、ラルカ様が埋められている!? 総員、命を懸けてでも彼女を救出するぞ!」

『了解!』

「合体フォーメーションK!」


 レッドの呼びかけに他のメンバーが応じ、その体を巨大な武器のパーツへと変換させて合体していく。それは巨大なクレーンアームへと変化した。レッドがクレーンアームを装着すると、彼女の顔に青いレンズが出現した。


「離れてろ2人とも。この瓦礫を全てどかす」

「気を付けてね。下手に瓦礫をどかしたらおじゃんよ」

「そんなこと分かってる。だからこそこのレンズがあるのだ」


 レンズは地形情報を読み込み、瓦礫の状態、その中に埋められてるラルカの状態をレッドの脳に送り込んでいた。そのおかげで彼女は、どう瓦礫を動かせば安全にどかせるかを完璧に把握していた。


「ウル、後ろから来てる天使共はお前に任せたぞ」

「了解」


 ウルが迫ってきている何体もの偽熾天使(フラウド・セラフィム)の1体を撃ち抜く。


「サンダートランス!」


 指を鳴らすと、矢を纏っていた電撃が周囲の天使たちに広がっていき、網のようにとらえていく。その電撃は天使の肉体を焼いて炭のようにしていった。その後も何度も敵を射抜いていき、1体も逃さずに撃ち抜いていった。その間にレッドは、安全に瓦礫をどかし、ラルカを救出することが出来た。


「ラルカ様! 大丈夫ですかラルカ様!」


 彼女の体は瓦礫のせいでボロボロになっており、両腕も折れていた。スーパーマンズの全員が心配そうな目で彼女を見ている。


「どうしようウル! ラルカ様が目を覚まさない! わ、私たちはどうすればいいんだ!」

「お、おおお落ち着きなさいレッド! こここういうときは深呼吸をするのです!」

「そうだべ。慌てると何も良いことない。とりあえずおにぎりでも食べるべ」


 レッドとブルーが慌てふためき、そこにアワアワしてるイエローがどこかズレた気遣いを発揮し、ブラックはあまりのことに驚いてるのか、白目になって固まっている。


「う、うううウル! 私達は何をすれば良い! 何をすればラルカ様を助けられるんだ!」

「ひとまず落ち着きなさいよ。ほんと、ラルカのことになると冷静さ無くすわね。とりあえず、スーパーマンズはラルカやダレス、ウェスト支部のメンバーを連れて医療施設に向かって。北東の方に野戦病院があるわ。臨時で作ったものだからそこまで良いものでもないけど、ここに置いておくよりずっとマシよ」

「ウルはどうするんだべ?」

「私はまだ余力が残ってる。新しい六神王も来てるみたいだし、そいつらを討伐するわ」

「ろくしんおう、というのが何かは分からないですが、ここはウルの提案に従うのが良さそうですね。レッド」

「分かってる。総員、合体フォーメーションB!」


 レッドがそう叫ぶと、4人がフォーメーションを取って姿を変えていく。ブラックとイエローは巨大な4つの車輪に、ブルーはベッドのようなものが複数並んだ座席のある土台に、レッドは巨大なアームへと変化した。全体的な形としては天井が抜け、アームのついた巨大な馬車のようになっている。アームは優しく、それでいて素早くダレスやウェスト支部メンバー、ラルカをベッドの上に載せていった。。


「ぶ~、もう少し戦いたかったんだけどなあ」

「あなたはもう戦えないでしょ。さっさと病院で体治してきなさい。頼んだわよ。スーパーマンズ」

「分かっている。我らが命に代えても、騎士団メンバーやラルカ様を病院へ送る!」


 スーパーマンズの変形した乗り物は急発進し、病院へと向かっていった。


「さて。私はあの白い化け物どもを止めないとね」


 彼女の前方には何十体もの偽熾天使(フラウド・セラフィム)が来ていた。


「悪いけど、ここから先は、ネズミ1匹も通すつもりはないわ!」


 彼女が矢に魔力を込めて弓を構えた瞬間、緑色のレーザーが空から雨のように降り注いだ。そのレーザーは天使たちの体を消し飛ばしていき、衝撃波が彼女に襲い掛かる。


「ぐ!? この攻撃は」

「おや。こんな所にいたのか」


 そこに現れたのはニーアだった。


「ニーア! どうしてこんなところに」

「お前やダレスの魔力を辿ってたらここに来たんだ。ハデスの魔力が消失したみたいだが」

「あの骸骨野郎のこと? そいつならダレスたちが倒したわ。そのせいで戦線離脱しちゃったけど」

「ほお。あのハデスを倒すとは。思ったよりもやるじゃないか。それにしても、兄様はどこにいるんだ。てっきり一緒に行動しているものだと思っていたが」

「最初は一緒に行動してたんだけど、彼が急に王城に行くと言い出して、今は別行動してるのよ」

「王城? まさか」


 ニーアがあることを考えていると、王城から巨大な魔力を感知した。ウルもそれに気づいたようで、驚くように振り向く。


「!? この魔力。間違いなく六神王。でもこれは一体誰なの?」

「なるほど。兄様はあの女の相手をしにいったわけか」

「誰か分かるの?」

「コードネームはアレクト。全てを失った没落王女だ。奴が兄様と戦うとなると危険だな」


 そういって、彼女は屋上を飛んでいきながら城の方へと向かっていった。


「ちょ、待ってよおおおお!」


 そんな彼女をウルは必死で追いかけて行った。






 同時刻。国王の間にて。


「くそ。親衛隊として、これ以上賊の侵入を許すわけにはいかない!」


 1人の兵士が勇敢に立ち向かうも、何かに捕らえられたかのように動きが止まってしまった。


「な、なんだこれは。いぎゃあああああああ!」


 そのまま体を締め付けられていき、まるで水を絞る雑巾のごとく、ぐちゃぐちゃにされてしまった。その死体の前には、返り血を浴びた真っ赤なドレスの女、アレクトが立っていた。


「くだらんな。すでにここまで来ている敵に対して、侵入を許すも何もないだろう」


 彼女の怨念の籠った目は玉座に座る国王をにらみつけていた。王は役にも立たないだろう従者や宰相を壁のようにしている。



「会いたかったよ。老害国王」

「ま、マリネ。貴様どうやって侵入してきたのだ! 門前には大量の護衛兵がいたはず。貴様程度ではあの数を裁くことなど」

「護衛兵。ああ、門前にうじゃうじゃといた奴らか。あの程度の敵など私にとっては敵でもないが、いちいち戦うのも面倒だからな。少しズルをさせてもらっただけだ。お前の顔を見れて嬉しいよ。私の国を滅ぼしたツケはきっちり払ってもらうぞ。貴様の命でな」

「ふ、ふざけるな。貴様の国が滅んだのは父親がクズで無能だったからじゃろ。貴様の父は秘密裏に人身売買を行い、国民を奴隷にして私腹を肥やしていた。そんな奴が治める国など、滅んで当然なのじゃよ!」

「人身売買。父はそんなことをする人ではなかった! それなのに……貴様らが、貴様らのせいで」


 彼女の脳裏に過去の出来事がフラッシュ縛のように蘇った。城の前に出された檻付きの馬車。糾弾する者たち。次に浮かび上がったのは城の前でクーデターを起こす国民や兵士。それを先導するこの国の王女と国王。愛する父を殺され、妹と共に牢に入れられ、下卑た男たちの欲望のはけ口となっていた忌まわしき記憶。


 彼女の怒りに呼応するように、2対4枚の黒い歪な形の翼が出現する。


「貴様らの先導さえなければ、私の国は滅びなかった」

「儂のせいにするな! そもそもあれは娘が考えたことじゃ。儂には何の関係もない。大体、弱者が強者に蹂躙されるのは当然のことなんじゃよ。そんなことも分らぬのか。没落女が」

「ふふふふふふ。ほんと、清々しいまでの開き直り。変に改心されるよりもよっぽどやりやすいから助かるよ。やはり、貴様のようなクズを刈り取るには、この刃こそが相応しい」


 彼女が鞘から刀を引き抜こうとすると、異質な何かが王の間を包んだ。


「お、おおお王様! どうするんですか。このままでは!」

「やかましい! いざという時は貴様らが壁になるのだ。儂はこの国の王。貴様らとは違って死ぬわけにはいかないんだ!」

「そんな。それはあんまりですよ! 私達だって死にたくないのに!」

「うるさい! 雑用ごときが王族たる儂に逆らうというのか!」


 敵が眼前にいるにも関わらず、言い争いを続ける王たちを見て、アレクトは失笑する。


「愚かだな。こんな時でも醜い争いを続けるとは。死ね!」


 彼女が刀を抜いて王の元へ飛び出した瞬間、天井の一部が円型に切り取られ、王を守るかのように落下する。


「! ふふふ。まさか貴様が来るとはな。今日はラッキーデーだ。殺したい奴がわざわざこっちに来てくれたのだから」


 落下した天井の上にはカイツが立っており、1対2枚の天使のように白い翼を生やしていた。


「よお。マリネ」

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