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第178話 騎士団の奮闘

「いやー。鬱陶しい天使どもをぶっ飛ばしつつ急いで来てみたら、面白いことになってるね。地面がぐちゃぐちゃになってるし、あの骨男も多少は弱ってるけど、すごく強そうだ」


 ダレスは笑みを浮かべ、獣のように鋭い目をハデスに向けており、今にも飛び出しそうな雰囲気だ。ラルカはメジーマの元に駆け寄る。


「大丈夫かメジーマ。すいぶんこっぴどくやられたものだな」

「なんとかね。面目ないです……支部を破壊した元凶さえ倒せず……このざまですから。メリナとリナーテも重傷ですし」

「そうか。まあ後は我に任せろ。偉大なる我が、矮小なる者共のケツを拭いてやる」


 ラルカは彼の肩を叩き、ハデスの方を向く。


「貴様がウェスト支部を破壊した元凶らしいな。この我が裁きをくだしてやる」

「面白い。出来るものならやってみろ!」


 ハデスが紫の波動を放つと、ラルカは鎖を竜巻のように放ち、その攻撃を防いだ。本来なら彼の魔術で無機物の鎖の動きを操れるのだが、それは出来なかった。


「ほお、面白い鎖だな。魔封じの首輪と似たような性能を持っているとは。そのせいで我の魔術が通用せん」

「あいにくだが、我が作りし鎖は、矮小なる貴様にはどうすることもできんぞ! 殺人術・焔刺し!」


 彼女が指を鳴らすと、地面から飛び出した何本もの赤い鎖が飛び出して襲い掛かるが、その攻撃は紫の波動で止められてしまった。


「ふむ。止められるものと止められないものがあるのか。ますます面白いものだな。それにこの力。選ばれし者になれる素質が十分にある。お前、我らと共に歩む気はないか?」

「選ばれし者? 何を言ってるんだ」

「勧誘だよ。我らヴァルキュリア家の目的は、今の世界を壊し、どんな生き物も死なない楽園を作り上げることだ。素晴らしいものだぞ。生きとし生けるものたちの尊い関係をいつまでも眺めていられる。それは夢の世界だ!」

「ふん。それの何が楽しいのかよくわからんし、右腕を痛めつけた貴様らについていくなど、吐き気がする!」


 ラルカは何本もの鎖で攻撃するも、それらは波動で止められ、ぐしゃぐしゃに潰された。


「はあ。これだから妖精族じゃない奴はダメなんだ。六神王も貴様らも、人々の関係がもたらす美しさを全く理解していない。我はそのためだけに、不老の秘術を用いて今を生きているというのに」

「まあ言いたいことは分かるかな。闘争によって生まれる関係というのは良いものだからね。そういう意味では、君がそこまでこだわるのも理解できる」


 ダレスがそう言うと、ハデスは嬉しそうに笑みをこぼす。


「ほお。よくわかってるじゃないか。貴様と我は良い関係を結べそうだ。どうだ。共に来る気はないか? お前なら素晴らしい力と寿命を手に入れ、永劫の時を生きられるぞ?」

「あいにく、私は自分で作った力や強化薬以外に興味ないんだよ!」


 懐から小さな瓶を取り出し、中の白い玉を取り出して飲み込む。四肢の筋肉が少しばかり肥大化し、体中の血管が浮き出た。


「それに、罪のない人たちを犠牲にしていくあんたたちのやり方は好きじゃない。さあ行くよお!」


 彼女は一気に距離を詰めるが、その動きは紫の波動で止められてしまった。


「ありゃ」

「良いスピードだが、その程度は簡単に見切れるのだよ!」


 ハデスが腕を振り上げると、彼女もそれに続くように空に上げられてしまう。


「くっ!?」

「所詮、貴様も我の理解者にはなりえないか。死ね!」


 腕を振り下ろし、そのまま地面に叩きつけられるかと思いきや、建物から飛び出した鎖が縛ったことで、それを免れた。そのままラルカの元へとぶん投げられた。


「どびゃ!? いたたたた」

「全く。手間をかけさせる」

「ごめんごめん。投げられたのはちょい痛かったけど、助かったよ。にしても、あいつの魔術は中々に厄介だね」

「色んなものの動きを止めたり、操ったりする魔術。お前と相性最悪だな。どうするのだ?」

「突っ込むよ。どうせ私が出来ることなんてそれしかないんだし、魔封じの鎖お願い」

「構わんが、お前も魔術を使えんなくなるぞ?」

「良いよ。さっき殴った手ごたえからして、拳を増やす必要はない。あの変な波動に気を付けながら一気に攻めまくる」

「オーケー。では我は支援に回ろう」


 ダレスの両腕を魔封じの鎖が鎧のように包み込んだ。


「よし、行くよおお!」


 彼女は再び接近していく。それに対して紫の波動が放たれるが、それは腕を包んでいた鎖で防御する。


「ほお。鎖で我の波動を無効にしたか。ならば!」


 地面がほんの少しだけ膨らんだ瞬間。


「ダレス、下から攻撃が来るぞ! 避けろ!」


 メリナの叫びが聞こえ、それのおかげでダレスは地面の微妙な膨らみに気づいた。飛び出した骨の槍による攻撃を全て避けて行き、距離を詰めていく。


「あの女、まだ意識があったとは。助言があったとはいえ、避けたことはだがこれはどうだ!」


 上空から何本もの骨の槍が降り注ぐ。それは地面から飛び出した槍よりも数が多く、避けるのは至難の業だった


「まずい……防御しないと」


 メリナは必死に水を操ろうとするも、ダメージのせいでまともに動かすことが出来なかった。しかしそれに対し、ダレスが言う。


「心配ないよ。こっちには優秀なサキュバスがいるからね」


 槍の攻撃が当たるかと思われた瞬間、雷を纏った何本もの矢がすべての槍を破壊した。


「なに!? この攻撃を全て撃ち落としただと!?」

「ふふふ。流石は、絶対命中の(アブソリュート・)狙撃手(スナイパー)だ」





 王国全体を見下ろせる高台。その上でウルは弓と矢を構え、戦闘のサポートや偽熾天使(フラウド・セラフィム)の迎撃を行っていた。


「今のようなサポートぐらいは出来るけど、ここからじゃ、あの骨男は狙えない。倒すのは頼んだわよ、ラルカ、ダレス」





「くそ。貴様らごときに、負けてたまるかああ!」


 ハデスは怒り狂ったかのように紫の波動を出そうとするが、その前に地面から飛び出した鎖がその体をがんじがらめに縛りあげる。


「ぐ!? これは」

「ようやく貴様を縛るチャンスが出来たな。やれ、ダレス!」

「了解!」


 ダレスは一気に距離を詰め、彼の顔を全力で殴りつけた。


「どりゃああああああ!」


 そのままラッシュを続けていく。一撃一撃はかなり重いもので、顔の骨に少しだけヒビが入った。


「ぐっ……舐めるなあああ!」


 しかし、彼もそれに対抗するかのように自身を縛っていた鎖を引きちぎる。


「馬鹿な! 腕力だけで我の鎖を!?」


 彼はその勢いのまま、ダレスの顔を全力で殴る。その一撃は凄まじく、彼女は大きくふっ飛ばされ、何度も地面をバウンドしながら転がっていた。


「があ……ははははは! 結構疲れてるはずなのに、すごい威力だねえ。たった1発でここまでダメージを受けるとは思わなかったよ」

「笑ってる場合か。お前大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ! 鼻の骨が砕けて、ちょっと頭が痛い程度だから」

「全く大丈夫とはいえんぞ。しかし、なかなかにタフな奴だな」


 ハデスの方はダメージを受けていながらも全くバランスを崩しておらず、まだ余裕を残していることは一目瞭然だった。


「全く。どいつもこいつもそれなりに優秀だというのに。我は悲しいぞ。なぜ誰も我らの理念を理解できぬのだあああ!」


 彼は大量の涙を流しながらワンワンと泣き喚く。


「お前の理想に賛同するものなど、イカれた者しかいないからだ。楽園だか何だか知らぬが、人をゴミのように扱い、右腕を苦しめる貴様らが作る世界など想像するだけで嫌になる!」


 ラルカは何本もの魔封じの鎖を地面から発射して攻撃する。


「ゴミのように? 我らを非道な者として扱うのはやめてもらおう!」


 しかし、その攻撃は全て骨の翼で破壊されてしまった。


「ちっ。我の鎖をこうも易々と。腐っても六神王というわけか」

「我らは外道ではなく正道を行く者たち。我らは人類、いや、生きとし生ける全ての者たちの救済者だ。この世に生きる全ての生命には、いつか終わりが訪れる。つまり、生きとし生ける者たちが作る美しき関係もいつかは壊れるということだ。貴様らに分かるか? 大切な者を失う者たちの苦しみが。美しき絡み合いが壊れるのを見ていることしか出来ない者の気持ちが。我は大切な者を失う者たち涙をすくいたい。生きとし生ける者の関係を守りたいだけだ。否定される理由がどこにある。我らは悪の秘密結社ではない。人類の幸せを願う正義の味方なのだ!」

「ざけんな……てめえらが正義だと?」


 その言葉に対し、反論したのはメリナだった。


「私の支部を、仲間をあれだけ殺しておいて……どの口が正義を名乗ってやがる!」

「仕方ないだろう。我は全ての者を楽園に連れて行きたかった。しかし、進化に適応出来ぬような弱き存在はああするしかないのだ。我にとっても苦渋の決断だったよ。出来ることなら、あの者たちも楽園に連れて行きたかったのだがな。うおおおん。悲しい。悲しいぞお。なんであやつらは進化に適応できなかったのだあああ」

「……くだらぬな」


 ハデスがわんわんと泣く中、あきれるかのようにラルカが吐き捨てる。それに対し、彼は憎しみや怒りの籠った目で睨みつける。


「なんだと?」

「くだらぬと言ったのだ。下の者を見下すのは、まあ普通のことだ。上に立つものと下に立つものが見る世界は違うからな。見下したくなる気持ちもよくわかる。だが、貴様はただ見下すだけで、下の者に対する礼儀がまるでなってない。そんな奴が苦渋の決断だの正義だの、ちゃんちゃら笑わせる。自分が上にいると思ってるのなら、もっとそれに相応しい立ち振る舞いを心得ろ。今の貴様は、まるで三下臭漂う雑魚。無駄に背伸びをするガキそのものだ」

「……言ってくれるじゃないか。その大口がどれほど続くか楽しみだぞ!」


 骨の翼から何本もの骨の槍が放たれるが、それらはすべてダレスに弾かれた。


「あはははは! ラルカも言うねえ。中々面白い言葉だったよ」

「ダレス。あの三下野郎はここで叩き潰すぞ。あんなのを生かしていて良い理由などないからな」

「オーケー。心得た!」

「面白い。我らの道が正しいか、貴様らの道が正しいか。勝負と行こう!」

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