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第173話 決戦前の約束

 俺とバルテリアはともに王城へと向かっていたのだが、城に近付くにつれて周りの景色は変わっていった。外に出ている住民が少なく、周りを巡回している兵士もやたらとピリついているし、どいつもこいつも戦争でも始めるのかと思うほどの重武装だ。


「どういうことだ。なんで城に近付くにつれて」

「獣野郎はその程度もわからないのか? 情報格差だよ。庶民の奴らに伝えられてない情報を、富裕層共は知っている。だから兵士たちも重武装なんだろ」

「なんでそんなことを。住民がパニックになることを防ぐためか?」

「自分たちの身の安全のために、あっちに余計な戦力を回したくないんだよ。連中は自分たちの身を守ることしか頭にないからな。連中にとっては、金のない庶民のことは肉壁としか思ってないだろう」


 嘘だろ。自分たちの身を守るために民を切り捨てたということか。それが王族のやることかよ。


「同じ王都に住む人たちだというのに。どうして守ろうとしないんだ。民を守れる力を持ってるというのに」

「ふん。青臭い考えだな。ばい菌らしいくっさいくっさい考え方だ」


 ほんと、こいつは俺に対する当たりがきついな。流石の俺もイラついてきたんだが。



 あまり空気がよくない状態で俺たちは城の前に着いた。そこには多くの兵士がバリケードを作っており、絶対に城に入らせないという強い意志を感じた。城にもいくつか兵器が取り付けられており、まるで要塞のようだ。


「ずいぶんとがちがちに固めてるんだな。これの1割でも民に分け与えれば」

「まあ、自分の身が一番可愛いってのは、誰しも普通のことだからな。そういう意味では、王の気持ちもよくわかる」

「でも、それでも民を守ろうとするのが王族の務めなんじゃないのか?」

「ふん。ばい菌らしい幼稚で青臭い考えだな。大人には色々あるもんなんだよ」

「そうかい」


 そこから城の中に入るのは大変だった。何度も何度も身体チェックをされ、武器を取り上げられ、魔封じの首輪をはめられてようやく城の中に入った。騎士団の人間だというのに警戒しすぎな気がするが、なぜここまで警戒するのだろうか。


 色々と面倒なことを終え、ようやく国王のいる広間へとたどり着いた。中央は長い階段が建てられており、その先に巨大な玉座があった。そこには王様が座っており、階段の周りは何十人もの兵士が守っている。玉座の周りも透明な壁があり、ずいぶんと厳重に守られているのがよくわかる。


「来たか。ずいぶんと遅かったの。ヴァルハラ騎士団」

「20分前なら早いほうでしょ。相変わらずうるさいんだから」

「貴様ら騎士団は30分前行動が当たり前じゃ。その程度もわからんのか。このバカ者どもが!」


 開幕からこの王様のことが嫌いになりそうだな。なんでここまでボロクソに言われないといけないんだ。


「はあ。儂は悲しい限りじゃ。お前たちヴァルハラ騎士団はもともと、王家を守るためだけに生み出された存在じゃった。しかし、貴様らの総帥がなにをとちくるったのか、人々を守るとかあほなことをほざき、騎士団はすっかり堕落した。おまけによこした兵も多くない。国王である儂が要請したというのに」

「色々忙しいのですから仕方ないでしょう。それに、そっちの兵士もすごい数がいるじゃないですか。この王の間にもびっしりといるし。何をそんなに恐れてるのやら」

「うるさいわ! こんなものを見たら、恐れるのも当たり前じゃろうが!」


 そういって王が取り出したのは、ロキ支部長が見せた手紙と同じものだった。恐らく、あれにも襲撃の件が書かれているのだろう。


「ヴァルキュリア家とウリエルがこの王都を滅ぼすじゃと? ふざけるな。こういう事態を未然に防ぐために貴様らヴァルハラ騎士団がおるんじゃろうが! おまけにヴァルキュリア家の中には、あのマリネ・レイフィードもおり、騎士団のメンバーと交戦したという話も聞いたぞ。なぜその時に殺しておかんかったのだ。この役立たずの穀潰し共が!」

「ずいぶんと彼女のことを恐れてますね。過去に何かあったのですか?」


 俺がそう聞くと、奴は何かにおびえるような顔を一瞬した後、怒り狂ったようにまくしたてる。


「儂は何も悪くない! あの腹黒娘がすべてやったことじゃ。それに、弱き国が強き国に滅ぼされるのは世の理。儂には何の非もないわ!」


 なるほどな。詳細は分からないが、マリネたちはこの国王たちのせいでクーデターに巻き込まれ、国を追われたようだな。テルネはそんな残酷な人生を経て、最後は俺に殺された。マリネはその復讐を果たすためにヴァルキュリア家に加入し、俺を殺そうとしている。なんとも数奇というか残酷というか。神様なんてのがいたとして、それが人の運命を作ってるのなら、その神様は相当性格の悪い奴だろう。


 にしてもこの王様は。事情はどうあれ国1つを滅ぼしたのだから、報復される覚悟くらいは持っておくべきだろうに。


「ともかく、貴様のような下賤な男が知る必要はない! 貴様らは我ら王家の守護者、ヴァルハラ騎士団。言われるがままに働いていればいいのだ。良いか? まず誰よりも儂のことを優先せよ。民がいなくても国は建て直せるが、王がいなくては国は成り立たなくなる。儂はこの国の心臓そのもの。死に物狂いで守れ。騎士団メンバーは全員この王城で護衛させろ! これは王命じゃ。破ることは許さん! 後で軍事担当と会議を開き、儂を絶対に守るための作戦を考えろ! 失敗は許さんぞ!」


 王は一方的な要求を叩きつけるだけで会議を終わらせ、俺たちを追い出してしまった。

 その後は兵士たちや城の軍事を担当する人間と作戦会議をしたのだが、話す内容は城の王族を守ることに関する内容だけ。門を突破されたときの対処や北門、西門、東門付近の住民を死なせないためにどうするべきかについては全く話すことがなく、グダグダと話したが、最終的な結論は王族の人を死なせない。自らの命を賭してでも王族を守り切る。これだけだった。


 会議の後は専用の部屋を与えられ、その場にいるように命じられた。要はこの城から逃げだすなというわけだ。バルテリアは巨大なベッドの上でダラダラと過ごしている。


「お前、まさかこうなることを分かってたんじゃないのか?」

「まあな。あのドケチで保身に走りまくる国王のことだからな。戦力になる騎士団団員を逃がすわけないと思ってたし、こういう風に監禁紛いのことをするのは予想できた。流石に百合の花をこんな城に監禁させるのはかわいそうだからな。それに」

「俺をあいつらから手放すのにうってつけだった、というわけか」

「ああ。お前のような獣がいなくなり、百合の花は守られた。メジーマは生真面目で性欲のなさそうなお堅い人間だし、酒も飲まない。まず間違いを犯すことはないだろう。ああ、せっかくなら真の百合の楽園をこの目で見たいが、まあ仕方ないな。俺は楽園の守護者。百合の花を守るためならなんだってやってやる。せっかくの休憩時間だし、花をちゃーんと綺麗にしておかないといけないからな」


 最悪だ。まさかこんなことになるとはな。バルテリアがここに監禁されてるのがまだ不幸中の幸いといったところか。作戦ではこいつを南門の守備に立たせる予定だったし。


「まあ心配するな。しばらくしたらこの城からちゃんと出してやるよ。お前を百合の花たちと会わせるのは嫌だが、私情をもちこんでたら勝てるものも勝てないからな、今はとりあえず体を休めな。休むことも仕事だぜ。さてと、俺は絵画でも見てこよう。ここには素晴らしき百合の花の絵画もいくつかあるからな」


 そういって奴は会話を終わらせ、兵士に許可を取って絵画の部屋へと向かっていった。


「はあ。不穏な要素がありすぎるな」

「全くじゃな。これでは先が思いやられるわい」


 そう言いながらミカエルが実体化し、俺の膝の上に座った。さらにアナザー・ミカエルもさらっと実体化し、俺の肩の上に頭をのせる。


「主は大変じゃな。妙な因縁に巻き込まれてばかりで。おまけに体内に変なものを飼っておるし」


 アナザー・ミカエルが同情するようにそう言った。変なもの、恐らくネメシスのことだろう。あいつは今回の戦いをどうするつもりだ。まともに外に出てきていないみたいだが、何を考えてるか分からなくて少し不気味だ。


「カイツ、お主大丈夫なのか? ここ最近で色々あったが」

「問題ない。確かに色々あったけど、おれのやることは変わらない。弱者が虐げられない世界を作るためにも、俺はヴァルキュリア家を倒す。必ず決着をつける」

「あまり思いつめるなよ、カイツ。強すぎる使命感や責任感は、人を殺してしまうことがある。お主の理想も大切じゃが、まずは生き残ること。それが第一じゃ」

「確かに大事だな。けどここで勝たないと、俺は殺されたも同然だし、あいつらを倒さなければ、またテルネのような人たちが生まれてしまう。ここで決着をつけるためにも俺は」

「全く。相変わらず色々考えすぎじゃのお」

「ふむふむ。我が半身も大変じゃな。こうも生真面目というか色々考えすぎな男が器じゃと」

「全くじゃよ。わっちがどれだけ言っても、こやつは無茶をやめんからの。自殺願望でもあるのかと疑いたくなるわ」


 耳が痛い。自殺願望はないが、確かにちょくちょく無茶をしている気はする。


「正直、妾はこれ以上無茶をしてほしくないんじゃが……そうじゃ!」


 ミカエルは妙案を思いついたかの如く手をたたき、俺の目線まで上昇してほっぺを掴む。


「カイツ。この戦いが終わったら、1つ願い事を叶えてもらおう」

「それは構わないけど、何を願うんだ? 世界を今すぐ作り変えろとか、スケールのでかいものは無理だぞ?」

「そんなことは頼まん。この戦いが終わったら、妾と結婚し、(つがい)となれ」

「結婚? つがい?」

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