1 虚しいだけのプロローグ
ライブ会場は………余り所かもうダメだ。100人のキャパで、客は15人。
曲を聞いているのか?聞いていないのか?スマホをイジるならライブ後にしてくれ。カップルでイチャイチャしたいなら、外でやるか、そう言うホテルでやってくれ。
でも、僕はプロだ。ファンは少ししか居ないが、アイドルとしてデビューした以上は最後まで演らないといけない。数が少ないから?自分の都合で?プロがそんな事を言えば消えないと思っている、頭がお花畑の様な奴にはなりたくない。だから、僕は最後まで続けるんだ。
例え、1人でも聞いてくれる人が居るのならば。
⚪
鏡に写るのは僕。
中性的な顔の男が泣いている。身体つきも顔も女性に近い。
まあ、俗に言う中性男子。
化粧を落としても………目は赤い。コレは水では落とせないな。
「もっと化粧とか変えないとダメかな?」
返事は無い。四畳半一間の僕の家で返事をする者は………まあ、1人だから居ない。いや、返事が来たら怖いよな。
………いやいや、怖いから。気持ちを上げていかないと怖くなってきたぞ!
「そう言や………連絡をしないとな」
僕はスマホを取り出して、社長―――僕の所属する芸能事務所の「ラック」の社長に電話をした………。
「はい、もしもし。どうだったかな?」
「無事終了しました」
心配する素振りも見せない社長に、僕は………震える声で答えた。
でも、彼は分かっているかの様子で、何時もの言葉を口にするんだろうな。
「リンク、プロデュース業をやりなさい」
この男は何時もの様子で笑った。
「ですが、僕はアイドルがやりたいんです!」
「リンク、君は人気が無い。だったら社長の言うとおりにしなさい」
この男の言葉は僕を締め付ける。
「…………今度の曲………僕の作った曲を僕に歌わせて下さい!」
「アレは「ツイン」の2人に歌わせる」
「でも、僕が歌えば―――」
「しつこいぞ!」
僕の声は彼に届く前に終わった。
「リンク、君は曲を作れば良い。私の名前で出し、金を受け取る。それでいいじゃないか、ハハハッ」
「もう、社長のゴーストは嫌なんです!」
「君は分かっていない。テレビ局への根回し。スポンサー探し。そして、裏の世界への口利き。スマホで人気者になっても、君には例の事件があるから出来ないだろ?だから、後の事は私に任せなさい」
「………………はい」
「何が欲しい?」
「欲しい?何がですか?」
「作業用のスペース代わりにマンション。金、女、好きな物を言いなさい」
「つまり………」
「正式に契約をしよう。仮ではなく正式に。それで君の生活は楽になるだろう。後は私の代わりに曲を作りなさい。それで良いだろう?」
この男は………僕を物だと思っている。物や人で釣れば言う事を聞くと思っている………クッ!こんな奴の所にしか居れないなんて………。
「考えさせて下さい」
「明日の昼に答えを聞かせてくれ」
そこで………話しは終わった……。
僕の価値。ソレは裏方の仕事………決して表ではない。
タバコに火をつける僕は………天井に目を向けた。
ボロアパートの価値と僕の価値……煙が部屋に立ち籠める。
僕も2カ月後には21歳………タバコは唯一の救いだった。でも、金は無い。もう無理に意地を張るのをやめるか?いや、色んな考えが頭を巡る。
「少し………外に出るか」
気分を変えないと………。
少しの荷物をリュックに仕舞い、誰も僕を知らない町へと繰り出した……。




