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37 初登校

「中学校に行ってみたいの?」

「うん、そう」


 新年度の春のうららかな朝。

 優は怜良に突然、そう言った。


「通学したいってこと?」

「うんとね、そこはよくわからないんだ。今は少し見てみたいって感じかな」


 優は前世で通学したことがなく、今世でも通学したことがないため、学校に通うことや授業に出席することに憧れを持っていた。小学生のうちは小学校に年少の生徒も多いため控えていたが、中学生ならば一定の精神的安定があるから大丈夫かと思い、教室で授業を受けてみたいと思ったのだ。


「そうね。優くんがそう言うなら学校に行って授業に出席したりできるわよ」

「そうなの? きちんと通学することは多分できないと思うんだ。まだやることが沢山あるからね。だからまずは数日間出席して、同じ年齢の人たちと机を並べて体験してみたいんだ」


 前世では学校の授業の様子は小説などの本に沢山でてきていた。経験者であれば当たり前のことであったが、優にとっては憧れの場所だった。


「わかったわ。隣の村にあるから、出席できるように手配するわ。優くんはすでに授業内容の課程は修了しているから、授業を受けるのは退屈だと思うけど、どうしたいの?」

「退屈なんかじゃないよ。僕はただ普通の人たちと同じ経験をしてみたいんだ」

「そうなのね。それじゃあ、とりあえずは一般生徒と同じ教室で、同じ学生生活を体験してみましょう」

「うん、ありがとう。警護が大変だと思うけど、ごめんね」

「いいのよ。本当なら毎日通学していてもおかしくないんだから。それより優くんが普通の経験をしてくれるのが嬉しいわ」


 怜良はそう言って、少し涙ぐんだ。

 こうして優は翌週の一週間、通学することになった。

 



 曙国の人口は五千万人。出生数は毎年七十万人。全国の行政区数は五十なので、各行政区にはおよそ一万四千人が生まれる。学校数は各行政区に小学、中学、高校が各々百校ずつある。私立学校は存在しない。そしてこの世界では全員が高校に進学する。


 一学年は百四十人であり、三十五人クラスが四組まである。これがどの学校にも共通している。一校につき所属男子生徒数はおよそ四人であるが、実際には通学者はいないのが普通である。

 授業は月曜日から木曜日、一コマ一時間半が午前午後に二コマずつ実施される。学力別の区分けはない。体育などの実技科目は課外活動として行う。


 優は自らが名簿上所属する第三十八行政区第七十六中学校一組に一週間通学することになった。朝八時半から夕方四時までの授業となる。


「ちゃんと着れてるかな」

「よく似合ってるわよ。しわがついてなくて初々しいわね」


 怜良がにこにこして優の制服姿を見ている。

 黒の詰襟。襟元には校章。前世で知っていた通り、憧れの制服だ。

 咲坂家には昨日のうちに見せに行き、写真を沢山撮られたりして大騒ぎになった。

 彩やユリばあさんは優の学生服姿を見て、感動して涙を流していた。


 優は身長が百四十五センチになり、少し平均より小さいくらいの背になっている。

 優も前世を通じて初めて着る制服に感動していた。窮屈に感じる着心地も、優にとってはかけがえのない思い出になるように感じた。制服を着て初めて、自分も学生になったのだと実感した。


「それじゃあ、行きましょうか」

「うん、よろしくね」


 優が安全に通学できるように、優が移住する前に小学校、中学校が隣村に移転してきている。従って移動距離は少ない。通学は一般に村の通学生が一緒に誰かの車で送迎されるが、優は怜良が送迎する。この国では人口集中が避けられており通学地域が広いため、寮もあり週四日は泊りで過ごす生徒もいる。寮は安全のために咲原から離れて存在しており、バスが運行されている。

 優はこれまでにも咲原の村の近隣には時々出ていたので、景色は見慣れている。警護官が車で追走している。

 警護官が立っている校門を通過して、今までは遠目に見ていた校舎に到着した。


「優くんにとって初めての学校ね。まずは先生にご挨拶に行きましょう」

「うん。何かドキドキするよ」

「ふふふ。そういう感じが懐かしいわ」


 優と怜良は車を降りて校長室へ向かう。

 登校時間なので、全校生徒数四百二十名の学校には沢山のデザインのいい紺ワンピース姿の女子生徒が歩いている。

 その生徒たちから注目の的だ。誰もが立ち止まって振り返る。


「なんか注目を浴びてるね」

「ええ、それはもちろんよ。男の子の登校なんて、中学校では普通はないからね」

「でも今までも村の交流とかあったでしょ。珍しくないんじゃないの?」

「あれとこれは別なのよ。同世代ばかりで、しかも制服の男の子を見るなんて経験は普通は無いのよ」

「そんなもんなんだね。なんか不思議な感じがするよ」


 優の想像には前世の共学の学校があるので、一人だけ男の子という状況は具体的に想像していなかった。さすがに四百名以上の学校全員が女子という状況には面食らっていた。


「わあ、これが校舎なんだね。上履きって憧れてたよ」

「ふふ。変なところに感動するのね」


 優は真新しい真っ白な上履きを履いて、キョロキョロしながら怜良と廊下を歩いた。

 事務員に声をかけ、校長に連絡をとってもらう。

 その後校長室に案内された。


「おはようございます。校長の長濱千尋ながはまちひろです。咲坂優くんね。ようこそ、第七十六中学校へ。君を歓迎します」

「おはようございます。咲坂優です。お世話になります。よろしくお願いします」


 校長と挨拶を交わす。怜良はすでに校長とは面談で挨拶している。


「今日から一週間、授業に参加するということですね。その後のことは未定ということだから、今回はこの学校のことを色々知って欲しいですね。設備や授業だけでなく、沢山の生徒と交流してみてください。みんないい子たちですよ」

「はい。今回は僕のわがままで、学期の途中に一週間だけの登校となってしまって、ご迷惑をおかけします。この学校の良さを知っていけるように、いろんなことを体験したいと思っています。中学生らしい経験ができたらいいと思います」

「そうですね。男子生徒にとっては普通の中学校生活も特別に感じる部分が多いでしょう。これを機会に良い経験を沢山してください」

「はい。ありがとうございます。ぜひそうできたらと思います。よろしくお願いします」


 そんな会話を交わし、優は頭を下げた。


「それではこの後、担任の黒須先生に案内させましょう」


 校長室を出ると、そのまま担任に案内された。


「おはようございます。咲坂優くんね。あなたのクラスの一組の担任の黒須綾香くろすあやかよ。よろしくね」

「おはようございます。咲坂優です。お世話になります。よろしくお願いします」


 優は頭を下げ、挨拶をした。


「もうすぐ授業が始まるから教室に案内するわね。ちゃんと机やロッカーも用意してあるわ。始めに自己紹介をしてもらって、そのまま授業に参加してね。咲坂くんの周りの子には言ってあるから、わからないことがあったら、その子たちに遠慮なく聞いてね。みんないい子たちよ」

「ありがとうございます。みんなと仲良くなれるといいと思っています」


 教室に到着し、黒須と共に優と怜良が入室する。

 黒板代わりの大きな電子パネルを背に教壇に上がる。廊下の反対側は窓が並び、教室内には机が並ぶ。前世のイメージの通りの景色に、優は感無量となった。


「皆さんおはようございます。席についてください。お話してあった通り、今日から一週間の予定でこのクラスに男子生徒が出席します。咲坂優くんです。皆さん仲良くしてあげてください。付き添いの方は男性保護官の須堂怜良さんです」


 黒須がそう言っている間、三十五名の生徒たちはバタバタと着席し、水を打ったように静かになって耳を傾けた。


「皆さんはじめまして。咲坂優です。咲原から一週間の予定で授業に参加することになりました。仲良くしてもらえると嬉しいです。初めての学校通学なので、わからないことを教えてもらえると助かります。よろしくお願いします。僕は未成年なので男性保護官が付き添います」


 そう言ってぺこりと頭を下げた。


「須堂怜良一等男性保護官です。咲坂くんの保護のため、付き添いをします。皆さんに協力してもらうことがあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします」


 怜良は国内一般市民向けに特等ではなく一等男性保護官と名乗った。

 教室は静まりかえっている


「???」


 誰もが口をつぐんでいるので優が不思議に思っていると、黒須が席に座るように指示をした。教室の真ん中あたりに用意してある。怜良は教室後方に待機する。


 なお重武装の警護官が多数入構して警護している。この学校は優のほか咲原の村人が通うので、確実な警護ができるように警備支援設備が多数設置されている。当然のことながら怜良は一等男性保護官でありながら高性能装備と支援装置で武装している。もし優が狙われるならこの学校にいる間が一番危険だからだ。

 優の通学は初めてなので、警護の演習を兼ねて、男性保護局本部警戒監視センターを含んだ大規模警備を実施している。授業中の警護だけで皇宮に匹敵する警護体制である。ただし生徒に見える位置にはほとんどいない。


 一時限目の社会科目の授業が始まった。前世とは科目分けもカリキュラムも全く異なる。この世界の中学校では担任が全教科を教える。電子パネルを使用して概略や注意点を述べていく。項目による勉強のやり方の指導も多い。板書はせず、後から自宅で授業ビデオで復習できるようになっている。


 このようにビデオ学習制度やコンピュータープログラムの補助教材が発達しているため、わからないところや遅れているところ、先に進みたいところなどは、幼年から生徒が自主的に自宅学習をしているので、教師はペースメーカーとしての役割に重点を置いている。生徒は授業中に他のビデオを視聴して学習していて構わない。

 教育の主体は家庭と本人であって、学校は補助に徹している。


 この世界ではコンピューターが生活のあらゆる部面に浸透しているため、授業では様々な事項に関する深い理解の育成が求められる。知識だけに頼る人間はAIに振り回されるからだ。AIを使いこなしたりAIを超える開発をするには、物事に対する分析や考察の力が求められる。


 授業が続く中、黒須が優を指名し、発言を求めた。


「今日は男子生徒がいるので、意見を聞いてみましょう。同世代男子の意見を聞くのは貴重な経験ですから、皆さんもよく聞いていてください。では咲坂くん」

「はい」


 優が起立すると、クラスの女子生徒たちの視線が集中した。


「世界各国は軍隊を廃止して数百年が経過していますが、現在までのところ不都合が生じていません。それについて何か意見はありますか」


 意外と高度な質問であったので、優は少し考え込んだ。しかし前世と比較するとすぐに回答が思い浮かんだ。


「軍隊とは国家の外敵に対する力です。前世界に存在した軍隊が現世界で廃止された理由は、人口減少による外敵の脅威の消滅が理由の一つですが、実質的には現世界で人口多数を占めるようになった女性の環境適合意思が大きいと思います」


 黒須が微笑む。


「もう少し説明してみてください」

「はい。歴史の授業がまだだと思うので詳細は言いませんが、世界戦略機構の成立により世界は統一管理がなされ、各国社会は大変動を乗り越えて存続しています。これは一見すると制度設計の成功が世界を安定化したように見えますが、実質においては各国社会の多数を占める女性の気質が平和的指向を持つからだと思います。

 なぜなら平和的指向を否定し自国や他国の社会を破壊しようと思えば、現世界においても可能なように思うからです。このような社会が軍隊を保有せずに広く世界に存続していられる理由は、現世界の女性が平和的意思、共生意思を持っているからだと考えざるを得ないと思います」


 黒須は頷き、質問を続けた。


「咲坂くんが言う女性の意思を世界の安定の中心に考えると、男性の存在が理由を失うように見えますが、それはどう考えますか」

「男性は人口の一パーセントに減少したことにより、そもそも社会勢力としては存在の意義を失っています。曙国に存在するたった五十万人の男性が国家や社会を主導することはあり得ません」


 優は言い切った。黒須は微笑んだまま続ける。


「では男性には存在意義は無いということですか」

「いいえ。男性数が減少したことは人口比率としての社会的意義を失わせましたが、女性社会における存在意義は人口比率とは関係ない内容を持つようになりました」

「それはどのような内容ですか」

「直接には女性の狂暴化の防止ということが歴史的事実とされています。しかし現実には男性が社会に存在することにより、女性の平和志向意思、共生意思を生み出していると思います」


 黒須は深く頷いた。


「それはどういうことですか」

「男性というものは女性社会を安定化させる社会装置の役割を果たしていると思います。前世界では男性と女性は男女の恋愛や婚姻という形でその関係を決定する面が大きくありました。現世界ではそのような関係は消滅しましたが、それに代わり男性の存在は女性の意思に日常的に作用し、女性の精神の安定に寄与していると思います。そのメカニズムはよくわかりませんが、僕が観察する限り、この国は男性の安定化作用を制度化して社会を上手に維持していると思います」

「つまり?」

「つまり、軍隊を維持せずとも世界が国家や社会を維持できている理由は、世界各国が男性の精神安定化作用を社会制度に適切に取り込み、男女の人口比率の問題を乗り超えて、女性と男性の共生に成功していることが本質的理由と思います」


 多くの女子生徒のため息が漏れる。

 黒須はニコリと笑顔になり、拍手をした。


「素晴らしいですね。聞いていた通りの優秀さです。皆さんも拍手を」


 教室が女子生徒の拍手に包まれる。

 怜良は後ろでにこにこしている。


「咲坂くん、ありがとうございました。着席してください。

 皆さん、咲坂くんの考えはどうでしたか。理路整然としていることは年齢を超えたものを感じますが、それよりも自分自身による社会の観察から考えをまとめているところが優れています。

 咲坂くんが男性の社会安定化作用と国際的枠組みの関係に気づいているのは、咲坂くん自身が自らの立場を社会の枠組みの中で考えているからです。それは自身を女性社会に役立てようとする意思に他なりません。皆さんも男性との関係を、咲坂くんの考えを考慮に入れて見つめなおしてみるといいでしょう」


 黒須はそう言ってまとめたが、さらに優に問いかけた。


「咲坂くん。咲坂くんの考えをとるとして、前世界ではなぜ社会の安定化作用が表面化しなかったと考えますか」


 優はかつて考えたことを話した。


「前世界では男性だけでなく女性の社会的存在意義が現世界と異なりました」

「それはどういうことですか」

「男性と女性の関係は、お互いに幸福になるための存在でした」


 黒須は真面目な顔をして続けた。


「現世界では違うと考えますか」

「はい。どう違うかははっきりとはわかりませんが、現世界と前世界では幸せの意味や内容が違うのだと思います。その違いを受け入れることができていることこそが、現世界の秩序のあり方の本質だと思います」


 黒須は優を見つめて言った。


「咲坂くんはすでに学術の水準に達しているのですね。咲坂くんにこの学校で授業をしてもらったら面白そうですね」


 黒須はにこりと笑った。


 授業が終わると、周りの女子生徒が話しかけてきた。


「咲坂くん、すごく頭いいのね」

「びっくりしたわ。あんなことを答えることができるなんて、私にはとても思いつかないわ」


 優にとっては同じ歳の子供との初めての会話だ。


「はじめまして。僕のことは優でいいよ。みんなは何ていう名前なの?」

「私は塚原つかはらひよりよ。男子生徒と話すのもクラスメートになるのも初めてだけど、よろしくね」

「私は関原せきはらこのみ。よろしくね」


 二人は名前を教えた。どちらも静かな口調だ。


「塚原さん、関原さん、よろしくね。授業を初めて聞いていたけど、予想と全然違ったよ」

「そうなの? これしか知らないから何とも言えないけど」

「優くんはどんな勉強してきたの?」


 黒板に板書して教科書や参考書で勉強するという前世のイメージでいた優は、全く異なった手法と方針による授業進行を見て感心していた。幼少から自宅での自主学習が主体のこの国の教育において、何故通学をすることが一般化しているのか理解できる気がした。


「僕はただ教育課程を自主的に勉強していただけだよ。ビデオ学習なんてしたことがないし、男性保護官の助けを受けながらだけど、ほとんど独学と言っていいかな」


 優は前世でも事実上独学であったので、ずっと独学で通してきたことになる。ただ今世では前世の蓄積があるので先行していただけだ。


「すごいね。独学じゃ普通は理解があんまり出来ないと思うけど、さっきの優くんの回答を聞いた限りでは誰よりもちゃんと理解ができていると思ったよ」

「うん。大人みたいだったよね」

「そうそう。大人みたい。男の子ってみんなそうなの?」


 二人は無邪気な質問をしてくる。優は小さな子供を相手にしているようで、微笑んだ。


「他の男の子とは少ししか話したことがないけど、他の男の子はかなり違うみたいだよ。結構内気だから、通学して授業で発言するとかは大変だと思う。男性はもっと成長してから大人らしくなると思うよ」

「そうなんだ。そうだよね。男の子がみんな優くんみたいだったら、緊張しちゃうところだったよ」

「自分が子供に思えて、自信失くすよね」


 女子学生らしいとりとめのない会話が続く。こうして女子学生と話すのは初めての経験だが、前世の小説などを思い出し、優は感慨を深めていた。


「僕はみんなと同じ中学一年生だよ。今まで通学してこなかったから、みんなとはいろいろ違いがあるけど、すぐに慣れると思うよ。だから緊張したり自信を失くさないでね」

「そうね。大丈夫よ。ちょっとびっくりしただけだから」

「優くんがこのクラスに出席するって聞いて、どんな子がくるんだろうってみんなで話していたの。そうしたらこうやって話す前に先生が授業で当てるもんだから、みんなびっくりしちゃったんだよ」

「僕も知らないことがたくさんあるから、みんなにいろいろ教えて欲しいんだ。普通の中学生の学校生活を知ってみたいからこうして出席したんだよ」


 優は素直に自分の考えを話した。


「私たちが教えることなんて思いつかないけど、男の子の生活は男性保護局が管理していて、私たちとは違うものね。私たちの「普通の学校生活」ならたくさん教えられるわ。何でもきいてね」

「うん。それならいくらでも大丈夫だよね。というかそれしか無理かも。とりあえずはお昼時間に期待してね。みんなで一緒に食べましょう」

「うん、わかったよ。ありがとう」


 間もなくして次の授業が始まった。

 今度の授業は数学だ。これも前世とは大きく違う。計算技術はほとんど教えない。調べればいくらでも出てくるが、それよりも「数学的分析」が主体であり、解法も教えない。様々な事例を数学的に分析し、それを数学的論理で説明する。だから一つの事例だけでも分析も論理説明もいくらでもやり方が出てくる。


 優はここまでの午前の授業を聞いていて、前世の欧米の大学研究課程の授業に近いものだと思った。コンピューターやAIの発達した社会での学校教育とはこのようになるのだと、感心した。

 コンピューターやAIを多用するということは、前世で言えば沢山の組織や人間を使うのと同じことになるのだろう。だからこの世界の教育はコンピューターやAIに振り回されるのではなく、使いこなすための教育が実施されているのだと思った。


 考えてみれば、勉強が苦手に思える巴でさえ、農業機械を自在に使いこなし、広い農地を彩とたった二人だけで維持している。前世では多数の作業行程があり、機械化は作業の一部しか実現していなかったが、この世界では二人だけで生産、保存、出荷をなし、その基礎となる農地の状態維持、共用周辺環境の維持、金銭その他の管理、生産計画調整などをしており、それに加えて子育て、家庭内教育、家事、介護をこなしている。それでありながら生活時間には余裕が多い。そのうえで生涯同一の仕事ではなく、全く違う職種に転職する。


 こういう世界では柔軟な思考や能力を持つことが必要不可欠なのだろうと優は思った。


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