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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第5章

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第083話 魔王の配慮と巫女の懸念

 ルーシーさんがミニスカ巫女姿で見習いの職務に就くことは避けられた。主に古都音さんのお説教のおかげで。


「辰巳さんといい瞬といい、男どもはまったく! ルーシーさんも、巫女見習いとしての務めを果たそうというのなら、あんな格好をしてはいけません!」

「お、おう。……すまん」


 古都音さんの放つ圧に、ルーシーさんまでたじたじに。


「え、えーっと……古都音さん、とりあえず私はルーシーさんと一緒に境内のお掃除をしてきますね」

「その前に神社全体の案内が先じゃないかしら?」

「へ……?」


 ルーシーさんはもう一通り神社については知っている。今さら案内なんて……


「掃除中に参拝客に質問されることもあるでしょう? 神社での作法は追々覚えてもらうにしても、何がどこにあるかくらいは知っておいてほしいもの」

「そうですけど、ルーシーさんならもう……」

「もう?」


 私の言葉に、古都音さんは眉をひそめた。あれ? 今私、何か変なことを言ったかな……?

 そう思っていると、突然勢い良く肩を組まれた。巫女装束に身を包んだ元魔王様に。そして古都音さんたちには聞こえないよう、ヒソヒソと耳打ちしてきた。


(おい、確かに案内など不要だが、ソウルダイブ中に得た情報は知らない体(てい)にしないとマズいのではないか?)

(……あっ! た、確かにそうですね!)


 ルーシーさんの言う通りだ。古都音さんたちの認識ではルーシーさんがこの神社に来るのは今日が初めてのはず。そんなルーシーさんが案内を不要だと言えば怪しまれてしまうかも。ここは素直に古都音さんの言葉に従っておいた方が良さそうだね……


「そ、そうですね。それじゃあルーシーさん、行きましょうか」

「うむ。案内よろしく頼むぞ」


 ルーシーさんの肩から解放され、今度は私がルーシーさんの手を引く。

 眉間にしわを寄せこちらを見つめる古都音さん。そんな彼女の視線から逃れるように、私たちは社務所を後にした。




「ふう、危ないところでした……」

「おい舞桜、気を付けろよ?」

「は、はい……」


 社務所から出た後。苦言を呈すルーシーさん。


「いいか? 古都音たちはお前をよく知る人間だ。違和感はすぐに怪しまれるぞ」

「す、すみません……」


 今までならルーシーさんの方が不用心なくらいだったのに。そう思うとこのお説教は少々不服だ。


「ただでさえお前は嘘や隠し事が下手でバレやすいんだからな」

「むっ……。それはそうですけど、ルーシーさんだって普段は結構不用心じゃないですか」

「何?」


 ……そうだよ。私だけが責められるのはやっぱり納得がいかない。

 我ながら珍しいことだと思う。でも今は自然に言い返してしまった。


 ――だけど、すぐに阻まれてしまった。


「その指摘はごもっともだが、今は魔族の存在が一般人にも知られはじめているだろう?」

「え、ええ……」

「お前の様子が普段と違えば、身近な人物は違和感を覚えるだろう。そこから魔族との関与を疑われる恐れもある」


 確かに瞬さんはともかく、古都音さんは結構鋭い。私が魔族に取り憑かれていると気付くかもしれない。……実際は取り憑きどころか居候させているんだけど。


「もしかしたらクイン・ルシフェリアの正体がお前だということまでバレるかもしれない」

「え゛っ!?」


 それは困る。非常に困る。百歩譲って巫女スタイルはともかく、魔王スタイルはまずい。あんな格好に変身していることが身近な人たちにバレるなんて考えたくもない。もしバレてしまったら恥ずかし過ぎて生きていける気がしない。


「私は別にそれでも構わんのだが、お前はそうはいかないのだろう? ならばできれば避けたい」

「…………」


 あくまでルーシーさんは私の心配をして……? それなら少し言い過ぎたかもしれない。そう思ったんだけど……


「婆さんに言われてな。私は杞憂だと言ったのだが、それでもお前に配慮してやってほしい、とな」

「お祖母ちゃんが……」


 やっぱり言い過ぎじゃなかったかもしれない。ルーシーさんに言い過ぎたと謝るより、お祖母ちゃんにお礼を言った方が良さそうだ。


「まあとにかくだ。今後はお前の正体がバレないよう私も配慮するさ。なるべくな、なるべく」

「…………」


 どうしてだろう? 結局今までとあまり変わらない。そんな予感がした。




 ルーシーさんに案内をするフリをしながら境内を巡る。その最中、ルーシーさんがポツリと呟いた。


「やはりあそこがベストだよな……」

「ルーシーさん?」


 一体どこの話をしているんだろう? 何がベストなのか、私はすかさず訊き返した。


「ん? ああ、今後の戦いに備えて、スタイルの切り替えや巫女スタイルでの戦いにも慣れておいた方が良いと思ってな」

「そうですね。巫女スタイルに変身したかったのに魔王スタイルに変身して衆目に晒されるなんて展開は嫌ですし……」

「おい。心配するところはそこなのか?」

「当然です!!」


 もちろんまだ巫女スタイルの力を把握しきれていないというのも不安ではある。だけど、私の一番の心配は決まっている。


「格好の心配はどうでも良いが、とにかく自在に変身できるようにはしておきたい」

「どうでも良くはないですけど……自在に変身というのはその通りですね」

「そこでだ」


 ルーシーさんは見上げる。神社の裏にそびえる霊山を。


「昨日優咲と戦った場所。あの辺りなら特訓にうってつけだと思ってな」

「確かに、あの辺りなら人目につく心配もなさそうですね」


 白峰霊山はそれほど大きな山じゃない。神社の関係者以外の立ち入りも別に禁じられてはいない。だからハイキングコースになっていても不思議じゃない。

 でも、実際はそうなってはいない。昔から入ると神隠しに遭うだとか、超常現象に巻き込まれるだとか、あることないこと噂されているから避けられているんだ。


「ではこの後にでも向かうとするか」

「それはいいんですけど、まさかこのまま抜け出すつもりじゃ……?」

「いかんか?」


 ……この人はつい先ほどの話をもう忘れてしまったの?


「私の正体が古都音さんたちにバレないよう配慮してくれるというお話はどこへ行ってしまったんですかね!?」

「お、おう……。そうだったそうだった」


 まったく! ルーシーさんはまったく!!


 やっぱりルーシーさんの言う正体バレへの配慮は話半分で聞いておいた方が良さそう。心の底からそう思った――

お読みいただきありがとうございました。

次回、第84話は10/19(月)投稿予定です。よろしければまたお読みください。

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