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正義のヒロインは魔王様!?〜巫女見習いと元魔王が紡ぐ絆物語  作者: 石島マコト
第2章 漆罪魔現る!

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第032話 サタナスの使い

「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」


 私とルーシーさん、二人のありったけの霊力と魔力を込めた一撃・ルミナスパニッシャー。


 この一撃がスカイ・ベルゼに直撃し、彼女の身体は空へ。そして炸裂し、花火のような輝きを放つ。さらに、光が流れ星のように降り注ぐ。


「ハァ……ハァ……。や、やったの……?」

『ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……。わ、わからん。手応えはあったが……』


 これで決着がついた。そう信じながら空を見上げ、目を凝らす。


『む……? あれは……』

「風茉さんとベルゼが分離しています!」


 黒い影が空に二つ。一つは風茉さん。そしてもう一つはベルゼ。どうやらデビライズが解けたみたい。私たち、勝ったんだ……!


 だけど、勝利の余韻に浸る暇はなかった。二つの影が落下し始めたのだから。


『ま、マズいな……。ベルゼはともかく、風茉がこのまま地面に落下したら……』

「!! た、助けないと……!」


 私たちに残された力はあと僅か。その力を振り絞り、身体に風を纏う。


「お願い、間に合って……!」


 風の魔法をジェット噴射のように利用して加速し、風茉さんの落下地点へ滑り込む。


 ――ズサァァァッ。


 両手を伸ばし、着地地点へヘッドスライディング。まさか未経験のヘッドスライディングを、こんな軽装ですることになるなんて。霊力でダメージが軽減されていなかったら傷だらけになっていたかもしれない。


「い、いたたたた……」

『どうやら……間に合ったようだな』


 私の腕には風茉さんの身体が抱えられていた。無事にキャッチし、彼女を激突から守ることができたみたい。


 風茉さんの身体を優しく地面に下ろし、彼女の様子を確認。胸の辺りがきちんと動いている。


(……よかった。ちゃんと息もあるみたい)


 風茉さんの無事を確認し、胸を撫で下ろす。だけど、それも束の間。


「ベルゼ様!! ベルゼ様!!」


 ベルゼの部下の魔族――確かムーシュと呼ばれていた女性。どうやらベルゼのことは彼女が受け止めていたようだ。


「……よ、よくも……よくもベルゼ様を……!!」


 ムーシュの魔力が増大していくのを感じる。魔法によって操られた風が彼女の周囲で渦を巻く。


「す、すごい力……」

『……舞桜。辺りを見てみろ』

「え……?」


 ルーシーさんに促され、周囲へと視線を向ける。そこで気付く。殺気立っているのはムーシュだけではないと。


「反応が強まっているのは……彼女だけじゃない!?」


 彼らは殺気立っているだけじゃなかった。その殺気に呼応するように、彼らの魔力もムーシュのように増大していた。主を倒された強い怒り。それが彼らの力を増大させているみたい。


『くっ、さすがにマズいな……。私たちにはもう、奴らと戦う力など残ってはいないぞ……!』


 ルーシーさんの言う通りだった。スカイ・ベルゼに放った攻撃はまさに渾身の一撃。今はもう、デビライズの維持も難しく、気を抜けば解除されてしまいそう。それほどまで私たちは消耗していた。


「奴らはベルゼ様との戦闘で消耗しきっている。後は私たちでトドメを刺すわよ!」


 ムーシュの指示で一斉に構える魔族たち。こんなに頑張ったのに、結局私には誰も守ることができないの……?


 またもや無力感が心と身体に重くのしかかる。しかし。


 ――ゴゴゴゴゴ……!!


 突如雷鳴が轟いた。空を見上げるといつの間にか黒い雲が。ルーシーさんと再会したあの日に見たものとそっくりだった。


 直後、黒い雷が戦場を駆け抜ける。


「く、黒い雷……!?」

『こいつはまさか……サタナスの技……!?』


 突如戦場を駆け抜けた一撃。ムーシュたちは怯み、攻撃を中断。私たちが攻撃の的になることはなかった。


「サタナス様の雷はこの程度ではありませんよ」


 空から聞こえた女性の声。見上げると黒い雲の中央に穴が空き、そこから一つの影が降りてくるのがわかった。


『あいつは確か……“バエリア”』

「バエリア?」

『……ああ。サタナスの側近だ』


 突然現れた魔族の女性・バエリア。全身黒尽くめの衣装に身を包み、背中に大きな蝙蝠型の翼を持つ魔族。ムーシュたちを止めてくれたから仲間の可能性も考えたけど、サタナスの側近ということは恐らく敵だ。


 この状況での新たな勢力の介入。彼女はベルゼたちの味方? それとも全く別の敵として戦うことになるの……?

 不安に思っていると、ムーシュが口を開いた。


「……サタナスの部下である貴女が、一体何の用かしら?」


 冷静さを保とうとしているみたいだけど、ムーシュの声は震えていた。恐怖ではなく、怒りを抑えられない。そんな声色だ。


「ルシフェリアはサタナス様の獲物。主であるベルゼが敗れた以上、貴女方にはここで手を引いていただきます」


 対し、バエリアと名乗った女性は至って事務的な口調で返す。


「そんな話は聞けないわね。我々は主をやられているのよ? 仇を討たずにはいられないわ!」


 落ち着いた様子のバエリアにムーシュは噛み付く。だけどバエリアの声のトーンは変わらない。


「はぁ……。わかりませんか? 今すぐベルゼを連れて撤退すれば見逃す。そう言っているのですけどね」

「先程から聞いていれば偉そうに……! 貴女がサタナスの側近なら、私はベルゼ様の側近。同じ漆罪魔の側近同士、立場は同……」


 ムーシュが言い終えるより先に、バエリアの放つ黒い雷がムーシュの身体を貫いた。


「ぐぁぁぁぁ――――ッッッ!!!?」


 ムーシュの叫びが響く。漆罪魔の側近同士みたいだけど、その実力はかけ離れているようだった。


「ここでベルゼ軍を全滅させたくなければ、大人しく撤退し、主の治療をすべきだと思いますよ」

「ぐっ……!」


 ムーシュはバエリアを睨む。だけど今の一撃で敵わないと悟ったんだろう。部下たちに指示し、ベルゼを連れて魔界へ戻るという判断をしたみたい。


 人質となっていた人間たちを解放し、撤退していくベルゼ軍の魔族たち。


「た、助かったの……?」

『いや……油断するな。はっきり言って奴らよりバエリア一人の方がよっぽど厄介だぞ……』

「そんな……!」


 ベルゼを追い返したのにまだ危機は去っていない。それどころか、もっとピンチになっているかもしれないなんて……


「安心してください。貴女方に危害を加えるつもりはありません」

「……何故だ? お前はサタナスの部下だろう? 私を追って人間界へやって来たんじゃ……」

「違いますよ」


 いつの間にか私の背後に幻影を出していたルーシーさんが尋ねる。するとバエリアは静かに、だけどはっきりと否定した。


「サタナス様は名実ともに魔界の頂点に立とうとしておられます。そしてそのためには……ルシフェリア、貴女を直接倒す必要がある。そうお考えなのです」

「何?」


 サタナス。ルーシーさんとは何か因縁がありそうな魔族。その目的はルーシーさんをその手で直接倒すこと……らしい。よくわからないけど、それが本当ならいずれ戦うことになるだろう。


「サタナス様は魔界から貴女を追放し、プライト城を手に入れました。ですがベルゼを始め、まだ漆罪魔たちはサタナス様を真の魔王とは認めておりません」

「チッ……。あいつ、やはり私の城を……!」


 少しずつ明かされていくサタナスの情報とルーシーさんを取り巻く状況。城を奪われてしまったということは、ひょっとしてルーシーさん、完全に帰る場所がなくなってしまったんじゃ……


「だからサタナス様は完全に力を取り戻した貴女を倒し、他の漆罪魔たちを認めさせようとお考えなのです。ですから私は貴女たちに手を下したりはしません」

「なるほどな……」


 良かった……。とりあえず今は戦わずに済むみたい。


「ですが……サタナス様が貴女を倒すのを黙って待っている漆罪魔たちではありません。今回のベルゼのように我先にと考え、命を狙ってくる者は他にもいるでしょう」

「だろうな……」


 うぅ…………。今は大丈夫だけど、残念ながら今後も気は抜けないみたい。


「なので、伝言です」

「何?」

「『俺以外の奴らに簡単に殺されるな』とのことです」

「チッ、サタナスめ。私を裏切っておきながらぬけぬけと……!」


 ギリギリギリ……。ルーシーさんの歯軋りが響く。


 ルーシーさんって普段は明るく振る舞っているけど、実は信じていた仲間に裏切られ、住んでいた場所()まで奪われていたんだね……


 あまりそういう素振りは見せないけど、こんなの絶対辛いに決まっている。私だったらとっくに泣き出して、逃げ出してしまっているよ……


「それでは私はこれで。ではまた(・・)


 バエリアは去っていった。空を覆っていた黒い雲も晴れ、空から日差しが差し込む。


 先のことを考えると不安だらけだけど、ひとまず一件落着……かな?


 ――シュゥゥゥ……パァンッ!


 ようやく一安心。そう思い、気を抜いた途端、私の身体が光に包まれた。そしてすぐに光が爆ぜ、デビライズが解除された。


「はぁ……。つ、疲れたぁ……」


 身体から一気に力が抜け、思わずその場にへたり込んでしまう。ううん、へたり込むだけじゃない。私の身体はそのまま地面に横たわってしまった。


「あ、あれ……? 身体に……力が……」

『いいや、むしろ……よくここまで保った、と言うべきだろう。お前も……私も、な……』

「え……?」


 ――ドサッ。


 それは恐らく聞き間違いのはずだ。私の中のルーシーさんの話す声は聞こえても、それ以外の音は聞こえない。デビライズ中、幻影を出している時は別として、普段は彼女が言葉を発さない限り彼女の状況を知る術はない。そのはずだ。


 だけど、今は聞こえた気がしたんだ。ルーシーさんが力尽き、倒れる。その音が。

お読みいただきありがとうございました。

続く第33話も投稿しております。よろしければお読みください。

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