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DTのまま40を超えた僕が魔法使いから○○になった話  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第五章

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王都に向けて出発です

「アラン! アラン! あれっ、アレがワイバーン騎兵団ですかっ!?」


 僕が頭上を見上げて指差す先には、ワイバーンが群れを成して飛んでいる。そんな僕の興奮した声に笑いながらアランがそちらに視線をやって「アレは兵団じゃなくて商隊だな」と、そう言った。

 一体その群れの何を見てそう判断したのか分からなくて僕が首を傾げると、アランは一匹のワイバーンを指差して「ワイバーンの腹に模様の付いた腹帯が巻かれてるだろう? あの模様が目印だ。騎兵団の奴等の乗るワイバーンにはあそこに兵団の紋章が入ってる」と教えてくれた。

 なるほど、敵兵団だと思って商隊を攻撃なんて事になったら民間人が危ないものな、ちゃんと目印は付いているんだ。


「それにしてもタケルは余程ワイバーン騎兵団が気になるとみえる。そんなに好きか?」

「見た事がないので好きか嫌いかまだ判断できませんが、格好いいとは思ってます!」


 僕の感覚から言えば戦闘機乗りのパイロットみたいなもので、機体を操って戦闘をするって、それだけでもう格好いいだろ!?

 いや、僕は平和主義者だから戦闘を推奨してる訳じゃないけどさ、パイロットってもうその存在自体が格好いいし、電車の運転士と飛行機のパイロットは男の子なら一度は憧れる職業だと僕は思っている。


「タケルは相変らず呑気ですねぇ……今から何処へ行くのか本当に分かっていますか?」


 ルーファウスに少し呆れ顔で言われてしまうが、僕だってそれくらいちゃんと分かってる。僕がくっきりはっきり「王都でしょ?」と返すと、ルーファウスはまたしても溜息を吐いた。

 ルーファウスが王都に行きたくない気持ちは分かるけどさ、もう決まった事をいつまでもグチグチと思い悩んでも仕方がないじゃないか。

 まぁ、ルーファウスが一番案じているのは王都へ行く事ではなく、王都へ行った後に起こるであろうあれやこれやだという事は分かっているけど。

 僕達は恐らくこれから魔王討伐に駆り出され、魔王領へと向かわされて魔物と戦う事になるのだと思う。

 100年毎に起こるとされる魔物の大暴走スタンピードを止めるため僕達は戦う事を決めたのだけど、相変らずルーファウスは渋い顔だ。

 僕達は観光都市リブルのルーファウスの実家に滞在し、数日観光を楽しんだ後に王都へと旅立った。魔王討伐部隊が王都を出立するのは一か月後、僕達はそれを目安に王都へと向かう。今回も引き続き移動手段は馬車である。

 とはいえ人数が増えてしまった僕達が移動するには馬車一台では少し手狭で、どうしたものかと考えていたら「だったら荷台を拡張してしまえばいいのでは?」という提案がルーファウスの口から零れ落ちた。


「荷台の拡張?」

「確かにそんな魔法があるとは聞いた事があるが、確か結構高額なんじゃなかったか?」

「タケル、できますよね?」


 荷台の拡張……ああ! それって空間魔法だっ! 

 そういえばメイズの街で僕は自分の部屋を広げてしまったのだった、確かに空間魔法の『拡張』を使えば荷台だって見た目はそのままに広くなる。

 空間魔法はいまひとつ使いどころが分からなかったのだが、そうやって使えばいいのかと、僕は目から鱗が落ちた。

 まだ僕には応用力が足りないな、そんな事にも気付かないなんて……


「できます、やります!」


 僕は馬車の荷台に飛び乗って荷台の床に手をついて「拡張!」と、詠唱する。すると荷台の中はぐんっと1.5倍ほどに広がった。

 出来ればもう少し広げたいと思い、続けて二回拡張を行うと荷台の中はちょっとした広場のようなサイズにまで広がった。これだけ広ければどれだけ寝相が悪くても蹴られる事はないだろう。


「タケルは相変らず何でも出来ちまうんだな、恐れ入るよ」


 荷台の中を覗き込んだアランが苦笑する。僕は別にアランが言うみたいに何でもできる人間じゃないけれど、そんな風に褒められるとちょっと嬉しい。

 こうして移動手段を確保した僕達は全員で王都へ出発したのだった。

 ちなみに聖女の茉莉は最初「転移魔法で戻ればよくない?」と小首を傾げたのだが「じゃあオロチとは別行動という事で良いですか?」と告げたら、あっさり掌を返して「のんびり旅も良いもんだよね!」とオロチの腕に腕を絡ませていた。

 転移魔法で王都に戻るのは簡単だ、けれどそれには金がかかる。現在金に困っている訳ではないが、せっかく荷馬車を用意して旅をしているのだからそれではあまりにも情緒がない。

 ちなみに茉莉がさっくりと転移魔法という単語を出したのには理由があって、実は彼女は既に転移魔法が使えるらしい。しかも王子と護衛の女騎士のマリーさんも一緒にだ。

 僕はまだ一人での転移魔法もままならないと言うのにやはり彼女も間違いなくチートなのだ。なにせ複数人を同時に転移させる事が可能という事はルーファウスよりも時空魔法のレベルが上という事になる。

 僕はその事に気が付いて何の気なしに茉莉に時空魔法のレベルを聞いたら茉莉の時空魔法のレベルは6だと言う。

 ……あれ?


「タケル、どうかしましたか?」

「ルーファウス、前にルーファウスの時空魔法のレベルは8って言ってなかったっけ?」

「そうですが何か?」

「茉莉ちゃんは時空魔法のレベルが6なんだって、そんでもってルーファウスのレベルは8。なのになんで茉莉ちゃんは複数人連れの転移魔法が使えるのにルーファウスは使えないのかな?」


 瞬間見せたルーファウスの「しまった」というような表情で、僕の疑問は確信へと変わる。本当は少し前からおかしいなとは思っていたのだ。

 ルーファウスは今まで僕と一緒に転移する時には必ず僕を抱き上げていた。転移魔法はとても高度な魔術で自分を転移させるだけでもとても難しい。レベルが上がれば複数人を同時に転移させる事ももちろん可能だが、自分はまだできないとルーファウスは言っていたのだ。

 だから他人を連れて転移する場合は必ず体を密着させてその術を使うのだと、今まで僕はそうやってルーファウスに説明されてきた。

 複数転移、それはレベルが上がればできるという説明だったのに、ルーファウスより時空魔法のレベルが低いはずの茉莉ができる事をルーファウスができないなんてどう考えてもおかしい。


「もしかして僕、今までルーファウスに嘘吐かれてた?」

「え、あ……いや、それはですね……」


 慌てたようなルーファウスに、「どうした?」と首を傾げるアラン。

 別に一度に大勢を転移魔法で移動できるならそれはそれでいいんだよ、だってすごく便利だし。

 だけどなんで今までそれを黙ってた? というか、むしろ隠していたんだと思うのだけどそれは一体何故だ?


「別に嘘を吐いていた訳ではなく……」

「何か理由があった?」


 ルーファウスの視線が泳ぐ。

 ルーファウスは自分が是であると思う時ははっきりと物事を口にする、けれどこれだけ言い渋っているという事は何か後ろめたい事があるという事なのだろう。


「アランが……」

「あ? 俺?」

「あまりにもホイホイ貴方を抱き上げるので……」

「?」

「嘘を吐きました」


 ???

 僕もアランもルーファウスのその言葉のどこに嘘を吐く必要があったのか、その因果関係が分からなくて瞬間首を傾げた。

 確かに僕は出会った当初よくアランに抱き上げられていたけれども、それがどうして……と考えたところではたと気付く。


「もしかしてルーファウスも僕のこと抱っこしたかった?」

「…………」


 沈黙は肯定か。

 要するにルーファウスはアランのように僕を抱き上げてみたかったけど、何の理由もなしにそれをする事ができなくて、嘘を吐き理由を作ってまで僕を抱っこしたかったとそういう事か。

 アランもそうだが、そういえばあの頃はよくロイドも僕と手を繋いで歩きたがっていて、アレもそういう事だったかと今になって気が付いた。

 そしてルーファウスは確かに僕と一緒に転移する時にしか僕に接触しなかった。まぁ、守護印を入れられてからはしょっちゅう触られてはいたけれど。

 僕はアランに抱き上げられるのが嫌な訳ではなかったけれど、戸惑いはしていたし、そんな僕を抱き上げるためには理由付けが必要だった。なるほど。


「もしかしてルーファウスって、僕のこと凄く好きだね?」

「今更、貴方がそれを言うんですか!!」


 顔を真っ赤に染めるルーファウスは可愛い事この上ないな。

 そんなに僕を抱き上げたかったのなら最初からそう言ってくれたら良かったのに……いや、それはそれで僕も拒絶してたかな?

 なにせルーファウスには早々に正体も年齢もバレてしまっていたから、僕もルーファウスの前では子供のように振舞う必要がなかった。だからこそ、ルーファウスはそれを言い出せなかったのだろう。


「そこ、いちゃつくなら二人きりの場所でやれ」

「!? 別にいちゃついてませんけど!?」

「傍からはそう見えるって言ってんだよ。仲が良いのは良い事だが、痴話喧嘩に毎度巻き込まれるこっちの身にもなれ」


 そんなつもりは全くなかったのに、アランにそんな風に言われて我に返って周りを見回すと、唯一ロイドだけはふいっと視線を逸らしたけれど何故かことごとく全員に生温い視線を向けられた。


『主の番相手はそいつに決定か?』

「な! オロチまで何言いだすんだよ!」

『俺様は事実確認をしているだけだぞ。確認は大事だ、雌を巡って争い死闘を繰り広げるとな、土地は荒れ周囲の生き物はことごとく死に追いやられ目も当てられん……と、昔爺さんが言ってた』


 あ~ドラゴン同士の死闘とか、そりゃ本人も周りも大変そうだもんな。ドラゴンの咆哮ブレスひとつで地形だって変わるのだ、巻き込まれる方もいい迷惑だよ……って、そういう話じゃない!


「わぁぁ、そういうの憧れるぅ。もし今、オロチの前からあたしを奪おうって奴が現れたらオロチもあたしのために戦ってくれる?」

『そもそも、こっちにはドラゴンの気配がしないし、それはないだろう』

「ええぇ、でもぉ、例えばドラゴンじゃなくても、そこの馬鹿王子とかぁ~」


 茉莉の言葉に少し考え込んだ様子のオロチだったが、考えた末『人間なんてドラゴンにかかったら瞬殺だぞ』とけろっと返事を返した。僕もオロチの爪先でプチっとされる王子の映像が頭に浮かんだけど、それはさせたら駄目なやつだと思う。

 でもこの場合、茉莉が聞きたいのはオロチが茉莉の為に戦ってくれるか、くれないかという話で、勝てるか勝てないかの問題ではない。「そういう話じゃないのにぃ」と茉莉はむくれるが「でも、そういう鈍いとこも好き♡」と、めげずにオロチの腕に自身の腕を絡めているので問題はなさそうだ。

 そして、本来いちゃついているって言うのはこういうのを言うんだと僕は思うんだけどな。


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