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『ゲロ味の錠剤』  作者: kar777


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第13話 解釈、そして

 時刻は12時。PCの前に座って三十分。画面は真っ白のままだった。

「……どう書けばいいんだよ」

 呟いた声は、部屋の中で溶けた。

 書くべきもの(ストーリー)は決まっているのに、文字にして打ち込むと、何か違う。白石さんの話には合った、グジュグジュの傷に触れるような、嫌な感じが出てこない。

「クソっ」

 頭が押しつぶされるように痛い。指先も震えている。

 ……視界に映るAIのページ。

 助けてやるよ、と言っているようで、黙れ、と返したくなる。

 震える手でキーボードを叩く。

 何か違う。そんな思いを抑えて、書き切ってみよう。


 ……けれど。

「やっぱり……何か足りない」

 頭には未だにガンガンと殴られているような衝撃。視界がにじみ出す。

「……あ」

 そこで気づく。昨日から、寝ていなかったことに。

 キーボードに置いた指が、ゆっくりと滑り落ちた。意識が、遠ざかっていく。

 耳の奥で声が響く。

「大切なのは、その話を聞いたあんたの……解釈だ」

 意識が、ふっと途切れた。


 暗闇の中、目を覚ます。

 キーボードを叩き、眩しさに目を細めながら見る21時の文字。

 胸中にあったのは、白石さん。

 ……俺に似ていた。罪も、苦悩も。だから、重ねた。

 そう、そうだ!

 バンとPCのエンターキーを叩く。軽快な音がこだまする。

「……俺だ」

 呟いた声は、さっきまでの自分とは違っていた。

 胸の奥が、熱くなる。キーボードに置いた手のひら。指先が、勝手に動く。

 どんどん生まれる文字列。それは、苦悩を抱えるシーンで止まった。

 ここまでは、白石さんの話だ。けれど、何かが足りない。

 ――向こう側に、何が見える。何を……想像する。

 AIのページが、きらりと輝いた。


 次の日、火曜の朝。俺はPCを抱えて走っていた。

 いつも聞こえる町の喧騒も何も聞こえず、ただ……

 どうしても、見せたかった。

 スクールの前に着く。

 息を整えることもせず、ドアを開ける。

「……こんにちは」

 声が裏返った。けれどもう、どうでもよかった。

 白石さんがゆっくりと顔を上げる。

「読んでください。……俺の小説を」

 白石さんは、しばらく何も言わなかった。俺の差し出したPCの画面と、俺の顔とを、ゆっくりと往復する。

 そして一呼吸おいて、白石さんはゆっくりと椅子から立ち上がる。歩く。俺の方へ。足音が、やけに大きく響いた。

 目の前に立つと、白石さんは、ほんの少しだけ息を吸った。

「……見せてください」

 俺はPCを差し出す。白石さんの手が、そっとそれを受け取る。

 白石さんは、ゆっくりと読み始めた。



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