第42話 異界からの接触 ―境界の震え―
昼休み。
教室には穏やかなざわめきが広がっていた。
パンの袋を開ける音。
笑い声。
すべてが、平和だった。
だが――
その裏で、何かが確実に“動いていた”。
ガウタムは窓の外を見つめている。
青空。
だが、その奥。
ほんのわずかに――
歪んでいた。
(来たな)
その瞬間。
“音”が消えた。
完全な静寂ではない。
だが、世界の一部だけが切り取られたような違和感。
ガウタムの周囲だけが、わずかに隔離される。
そして――
声が響いた。
「接続完了」
「対象確認:統合存在」
それは、これまでの神の声とは違う。
もっと――遠い。
もっと――冷たい。
ガウタムは静かに立ち上がる。
「……誰だ?」
一瞬の沈黙。
そして――
「我々は“外界”」
「お前の世界の外側にある存在」
空間が揺らぐ。
窓の外の景色が、ゆっくりと“ズレる”。
青空の向こうに――
別の空。
別の世界。
そしてそこに――
“無数の存在”。
形は見えない。
だが、その数と圧だけで理解できる。
(……桁が違う)
声が続く。
「観測記録:完了」
「統合存在の出現を確認」
「よって――干渉を開始する」
その瞬間。
空間が裂ける。
教室の一部が、別の世界へと引き込まれる。
机が歪み、空間が重なる。
だが――
ガウタムは動かない。
ただ一歩前へ出る。
「やめろ」
その一言。
だがその声は、空間全体に響く。
歪みが、一瞬止まる。
外界の存在が、わずかに沈黙する。
「……干渉抵抗、確認」
「対象、既に境界に適応済み」
ガウタムは目を細める。
「俺の世界に、勝手に入るな」
その言葉と同時に――
灰金の光が広がる。
教室を包み込み、空間の歪みを押し返す。
引き込まれた世界が、元に戻る。
だが――
完全には消えない。
裂け目は、残る。
外界の声が、少しだけ変わる。
「興味深い」
「接触段階を変更」
その瞬間――
一つの“存在”が、境界を越えてくる。
無数の中の一つ。
だがそれでも――
神とは比べ物にならない異質さ。
それは人の形をしていた。
だが、どこか歪んでいる。
「……よう」
その存在が、初めて“個”として喋る。
「お前がガウタムか」
空気が張り詰める。
ガウタムは静かに答える。
「そうだ」
存在が笑う。
「いいね」
その笑みは、軽い。
だが――危険だ。
「俺は“探索者”」
「最初の訪問者だ」
一歩近づく。
空間が揺れる。
「安心しろ」
「まだ壊さない」
教室は、静かなまま。
誰もこの異常に気づいていない。
だが――
確実に、何かが始まっている。
ガウタムは一歩踏み出す。
「目的は?」
探索者は肩をすくめる。
「簡単だ」
「お前を――見に来た」
沈黙。
だがその裏にあるのは――
測定。
評価。
そして――選択。
風が吹く。
日常は続いている。
だがその裏で、世界は確実に広がった。
物語は、次の領域へ。
――続く。




