私の特殊スキル(リナリア)
リナリアの番外編の続編です。
一応、完結です。
リシェ様の客室まで来ると、リシェ様は侍女に飲み物を用意するように指示をして中へと入る。
侍女はすぐに紅茶と焼き菓子を並べ、そして何故か部屋を出た。
その事に驚いていると、私の様子に気づいたリシェ様が口を開く。
「互いのステータスの件で話がしたいから下がらせたけど…ごめん、扉は開けたままにするのと外に護衛を置くのは許して?」
申し訳なさそうに眉を下げ首を傾げるリシェ様に「はい。」と返事をし頷く。
先程、聖女様から頂いた羊皮紙を手に…私は顔を上げた。
「プライバシーに関する事なので、盗聴防止の魔法はかけても宜しいですか?」
私のステータスよりも…リシェ様のステータスは恐らく国家機密。
リオンお兄様のような完全な防音魔法とまではいかなくとも、音を誤魔化す盗聴防止くらいの魔法ならば…と提案すればリシェ様は了承してくれた。
「早速だけど、リナリアの“特殊スキル“について教えて欲しい。」
リシェ様は一度、羊皮紙に目を向けたかと思うとすぐに顔を上げて私に問いかける。
質問されるだろうと分かっていた私はリシェ様を見つめ返した。
「この“指揮者“と言うのは…どんなスキルなのかな?」
リシェ様の瞳が少しだけ疑念を持つように揺れ動くのを見て、おそらくは以前の私と同じようにこのスキルが他者を操る為のものだと勘違いしているのが分かる…。
名前からして疑われやすい私のスキルだが、実際の能力は違う。
「幼い時に初めて知った時は人の心に作用する…とても危険なスキルだと思っていました。…ですが、すぐにリリアお姉様と聖女様から否定されました。」
「………え?」
私が苦笑いを浮かべながら話し出すと、リシェ様は眉間に皺を寄せ口を開きかけたが…最後まで聞こうと思ったのかすぐに口を閉じた。
「“指揮者“は他者のスキルを助けるスキルです。補助スキルに分類されるそうです。」
私のスキル“指揮者“は他の方がスキルを発動した際に一緒に発動させる事でスキルを向上させる事が出来る。
単独で発動させても特に何も起きず、あくまでも補助的役割を担っている。
そう説明をすると、リシェ様はホッとしたのか強張っていた表情が緩んでいく。
「…以前、私のスキルは“大切な人を助け、支える為のもの“だとリリアお姉様は仰いました。」
あの時のリリアお姉様の言葉で、私は自分のスキルが好きになった。
いつか…大切な方の為にと思えたから。
そんな私にリシェ様は顔を綻ばせる。
「うん、話を聞いたらそうなんだと僕も思った。…その…とてもリナリアらしいスキルなんだなって…。」
そう言って今度はリシェ様が自身の“特殊スキル“について話し始めた。
“神に愛されし者“として加護を複数持っており、それは将来…王となった時にとても役に立つものばかりだった。
そしてリシェ様の特殊スキル“統治者“は物事を良い方へ導く能力だと説明された。
その説明を聞きながら、どこかリリアお姉様のスキルに似ていると思った。
おそらくは神様に選ばれた者に与えられる特別なスキルなのだと思う。
悪しき者ならば…危険しかないスキルだが、リシェ様なら大丈夫だと神様が判断したのかもしれない。
一頻り話し終えると、リシェ様は改めて姿勢を正し…私を見つめた。
それまでとは違い、その眼差しはとても真剣だった。
「僕がいずれ王位に就いた時…リナリアには僕の隣にいて欲しい。互いに支えあい、国を…そして民を幸せへと導いていけたらって思う。」
膝の上で拳をグッと握り、自身の想いを私に打ち明けてくれるリシェ様に私も姿勢を正す。
この方は国と民の為に尽力してくれる…そう信じ私は深く頷く。
「勿論、私に出来る事でリシェ様の助けになるのならば尽力致します。」
リシェ様と向き合った私が力強く答えると、リシェ様は嬉しそうに頷いた。
リシェ様の隣で…その笑顔をずっと見ていたい。
貴方の隣にいる私を想像して、自分でも驚くほどに心が弾んでいる事に気づく。
きっと嬉しい事や楽しい事ばかりでは無いけれど、リシェ様と一緒ならば大丈夫な気がするから不思議。
まだ見ぬ未来に想いを馳せ…私はリシェ様に微笑み返した。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。
更新が遅く、やっと書く事ができました。
長引いたのは…リナリアの特殊スキルが書きたかっただけです、すみません。
他の兄弟は出てるのに、リナリアだけ出さないのもアレなので。(どれだろう?)
とりあえず、再び完結にさせて頂きます。
他の番外編や新作はぼちぼち…ぼちぼち頑張ります。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。




