70話
目の前で次々に仲間たちが倒されていく。ミックの魔法がこんなにも脅威だとは思わなかった。詠唱や触媒をほとんど使わないだけで、こんなにも厄介な物だとは思わなかった。他者を操作する魔法は幻術があるが、直接相手に触れたり触媒を使わなければかける事は難しい。それを遠距離から放っているのだ。
「火炎弾!」
ミックに容赦なく火炎魔法を放つが、相手の方にも魔法を使う者がいた。こっちはこっちで厄介だ。1人また1人と仲間が倒されていく。残るは私1人だけしかし負けるわけにはいかない。
「くっ、炎の……」
「転ばし!」
最初に唱えた強力な魔法を再び使おうとするが、ミックの方が早かった。突然片足が浮いて体勢が崩れる。そこをミックが小さい身体をぶつけて押し倒してきた。
「離せ! このネクロマンサー共め!」
身体を押さえつけられるが、最後まで諦めたくなかった。死に物狂いで抵抗する。
「リサさん、落ち着いて。僕ですミックです!」
ミックが叫ぶ。そうだ相手はネクロマンサーを追っている間に出会ったあの少年、ミックだ。ミックが墓荒らしのネクロマンサーで、私たちはそれを追って……でも何故ミックが? あんな子供でもネクロマンサーになるのだろうか。
そもそも彼らはどうしてカイナドの町を襲ったのか。疑問が浮かぶ度に視界が歪む。何かがおかしい。私が戦った墓荒らしは本当にネクロマンサーだったのか? どうして私はいつの間にカイナドの町に戻ってきたのか。視界が歪むだけでなく猛烈な頭痛がリサを襲う。なにかがおかしい。
古い記憶が呼び起こされる。あれは村が襲われた時、凶暴な魔物たちが村を襲って両親が目の前で殺されて……違う。村には魔物なんて来ていなかった。遠いどこかの地でドラゴンが現れた。そのせいで凶暴化した魔物に襲撃されて滅ぼされた村があった。そういう話をしていた。その時ローブを着た怪しい集団が突如村に来たのだ。そいつらは村の人にいきなり魔法を放って……その集団は魔法を悪用するネクロマンサーだった。魔法で村が火の海に包まれて……。
両親は私をかばって目の前で殺された。殺したローブの男の顔が見えた。その男の顔がミックだった。ナニカガオカシイ……。
「ネクロマンサーは……ミック、どうして……?」
そして目の前が真っ暗になった。過去と現在の記憶が混ざって訳が分からなくなった。そうだ、師匠だ。師匠はどこにいったのだろうか。私を置いてどこかへ行くなんて、今までそんな事はしなかった。そういう記憶はない。いつも一緒にいた。でも師匠がいない時、自分は何をしていたのか記憶が全くなかった。
私の傍には常に師匠がいた。隣でいつも本を読んで、魔法の修行をして、いつも頬を撫でて……それ以外の記憶を思い浮かぼうとするが、全く出てこなかった。




