68話
「はあ!」
アンジーが向かってきた相手と剣を交えた。ぶつかった剣同士が火花を発生させる。
「こいつら、死体じゃない! 恐らく幻術で操られている冒険者だ!」
アンジーが叫ぶ。つまり、リサを除く敵は墓荒らしと戦って敗北した冒険者たちだろう。今は彼らに幻術で洗脳されて戦わせられているとアンジーは確信した。
「奴らは死体だけじゃなくて、生きた人間を操る術も知っている! 気を付けな!」
僅かに表情の変化があり、体の動かし方で相手が全員生きた人間である事が分かる。しかし、それ故にこちらから手を出すのがはばかられる。ネクロマンサーの卑劣な手段で、アンジーたちは苦戦を強いられた。
「どうすんだよ。ぶっ殺してもいいのか?」
「こいつら全員殺すってのかい? 今後寝覚めが悪くなっていいならそうしな! どうしてもってなら腕や足一本だけ狙って無力化しな!」
そういう物の、アンジー自身も反撃するタイミングを見計りかねている。相手が悪人や魔物ならともかく、操られているだけの被害者だと手を出しにくいのだろう。
「炎の壁!」
杖で篝火の灯火を操って、放射状にこちらへ向けて炎を放つ。下手したら他の冒険者たちにも当たりかねない危険な魔法だ。
「リサさん、ミックです。どうか目を覚ましてください!」
声をかけるが、その声が彼女に届いてる気は感じられなかった。僅かに感じる意志は敵意だけだ。
「ここに師匠と呼んでいた男がいないのは妙だね。あの娘は村が魔物に襲われたって言っていたけど、本当にそれが魔物の仕業だったのか?」
ほんの一瞬彼女の動きが止まった。声が聞こえてない訳ではないようだ。しかし、どうすれば彼女や冒険者たちを幻術から解放できるのか
「動きを止めさせることが出来れば、私が魔法で幻術を解除してみるわ!」
相手は容赦なく攻撃してくるが、こちらは手加減しなくてはいけない。戦う人間も相手の方が数が多くて防戦一方な状況だった。
「しまった!」
リサの炎魔法に気を取られた戦士が武器を弾かれた。後方に斧が飛んでいき、完全に隙だらけになってしまった。そこを操られた冒険者が剣を振りかざして追撃してくる。
「転ばし!」
ミックが放った魔法で、操られた冒険者が片足を滑らせて地面に倒れる。倒れても幻術は解けないが転んだ状態から起き上がる事を想定してないのか、武器を手放す事もせず緩慢な動作でようやく起き上がってくる。その間に戦士はもう自分の斧を拾って戦闘態勢を整えていた。
その様子を見たアンジーが叫ぶ。
「ミック! こいつらは倒れたら起き上がるのに時間がかかる! あんたの魔法どんどん使って動きを止めてくれ!」




