3話
その日は孤児院へと帰る事にした。子供たちがミックを出迎える時、彼らの前では明るく振舞った。
「お帰りミック兄ちゃん!」
「ただいま皆」
「今日の冒険の話聞かせて!」
孤児院の皆はミックにとって弟や妹のような存在だった。ただの荷物持ちだけど、パーティの一員として魔法使いを守って時には身体を張っていると、体験談を脚色して彼らに聞かせる。そうすると彼らが見せる嬉しそうな表情や尊敬するまなざしが嬉しいけれど、騙している罪悪感も感じていた。
「子供たち、そろそろ食事の時間です。準備をするんですよ」
「はーい分かりました神父様!」
孤児院の院長をやっている教会の神父が姿を見せた。孤児たちは急いで食卓へ向かった。
「ミック、お帰りなさい。怪我はありませんか? 無茶はしませんでしたか?」
「大丈夫です神父様。……これ、今日ギルドからいただいた報酬です」
ミックはゴブリン討伐に参加した報酬の入った布袋を神父に手渡した。それを見て複雑な表情で神父は受け取る。
「君には苦労をかけてすまない。本当は私が何とかしなければならないのに、そのせいで危険な目に合わせて……」
「大丈夫です神父様。僕に出来る事はこれくらいだから……さ、食卓に行きましょう。みんながお腹を空かせてますよ」
パーティから外されたことは言わなかった。きっと慰めてくれるだろうが、経営が厳しくなる不安を感じさせてしまう。明日からは一人で稼がなければならない。一人で依頼をするのがバレたら神父様は絶対反対するだろう。だから気づかれないように、あくまで他の冒険者と組んで依頼を受けていると思わせなければならない。
「俺もミック兄ちゃんみたいに冒険者ギルドで働こうかな」
食事の時、不意に孤児の一人フィルがそう呟いた。
「駄目だよフィル! 冒険者は危ないお仕事なんだよ!」
ミックは反射的にそう答えたが、彼はむっとした表情で言う。
「でもミック兄ちゃんは働いているじゃん! 兄ちゃんだけズルい! 俺も剣で魔物と戦いたい!」
確かにミックは冒険者として働いているが、やっているのは荷物持ちで、戦うようなことはほとんどしない。先ほど聞かせた体験談で孤児たちも冒険者に憧れてしまったようだ。
「フィル、冒険者は戦うだけが仕事ではありません。ミックは自分の仕事をちゃんと守って働いているのです。そのためには、もっと大きくならなければいけませんよ」
「ちぇ、じゃあ大きくなったらミック兄ちゃんと組んで一緒に冒険者やりたい! それならいいでしょ?」
「うん、フィルがもっと大きくなったらね」
神父様のお陰で何とかその場は誤魔化せたが、今後もきっとこういう子たちが増えていくだろう。自分はともかく、後輩たちにはあまり危険な冒険者になってほしくないというのが、ミックの本心だった。




