119話
ミックたちは果ての山脈の道なき道を登っていく。魔法使いギルドから支給された登山道具はあるが、それでも、いつドラゴンや魔物が襲い掛かってきてもいいように完全装備で登っていくのは苦行に等しかった。
「あの、オーランドさん大丈夫ですか?」
特に、甲冑を着ているオーランドの負担は凄まじいだろうが、本人は決して自分から根を上げる事はしなかった。
「何のこれしき。過去にはある騎士団が果ての山脈の調査に赴いたと聞く。先人が行った事に、某も倣っているだけの事! ぜぇぜぇ、だから安心召されよ!」
「不死身の吸血鬼でも疲労するもんなんだね」
他のメンバーは登山向きではないとはいえ、軽装の者ばかりなのでオーランドだけが重装備だ。彼に合わせて慎重に果ての山脈の山肌を進んでいく。
「それにしても、不気味なほど静かですね」
山に入ってからあれほど激しかった魔物の襲撃も全くなかった。もっとも、こんな場所では獲物もおらず生きていくには不便すぎるだろう。こんな場所でも生きていけるドラゴンはどうやって生存しているのか。
「まあ、お陰でこっちは安心して進む事が出来るけどね」
しかし、やはり果ての山脈はそんな安全な場所とは言えなかった。
「ちょっと待って、何か聞こえない?」
「む、まさかドラゴンか!」
空から騒々しい鳴き声が近づいてくる。飛んで来たのはドラゴン、ではなくまた今まで見た事のない魔物だった。
「ギャアッ! ギャアッ!」
人間とも猿ともつかないしわだらけの顔をした怪鳥の群れ。ベナガラとは違い、鳥としての特徴の方が多い空飛ぶ魔物だ。
「あれはハーピー。騒がしく不気味な外見だが、人を襲うほど凶暴ではござらん」
「その割には、こっちに向かって飛んでくるよ。備えな!」
オーランドの説明とは違い、ハーピーの群れはミックたちに襲い掛かった。大きさはそれ程でもなく、爪足でミックたちをひっかいてくるが、力も非力でゴブリン程度だ。しかし、足場の悪い場所で襲われたものだから、足を滑らせる危険性で戦いに集中できないのが厄介だった。
「ドラゴンの影響で凶暴化してるのか? 気を付けな!」
知能もあまり高くないのか、足を振り回しながら身体をぶつけてくるように攻撃してくる。それが足場の悪い山肌では却って脅威となった。
「この、こうなったら魔法で……!」
リサが足を踏みしめるが、運悪く崖の縁で脆い場所だった。崩れた拍子に崖の方に滑り落ちてしまった。
「きゃああああ!」
咄嗟にアンジーが剣を捨ててリサの腕を掴んだ。まだそこまで登ってないが、落ちたら死はまぬがれない高さだった。




