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23話:手合わせ3


「どうした? 攻撃がどんどん軽くなっているぞ」


 勝負を始めてから、早20分。

 フィオナの息は既に上がり始めていた。


「まだまだっ、これからなんだから!」


 何度も突き放しても木刀を持ち、立ち向かってくる。

 だが最初に比べて攻撃が乱雑になり、隙も多くなってきている。


 無駄に力が入ってしまい、序盤で体力を大きく削いでしまったのだろう。


「さっきの勢いはどこにいった? もっと相手を見て剣を振るんだ!」


「言われなくても……分かってるわよっ!」


 フィオナは掠ってでも攻撃を当てようと、剣を振って来る。

 だがやはり疲れには勝てないようで。


 一撃一撃にかなり重たさを感じた。


(どうやら、ここまでみたいだな……)


 張り切り過ぎて、最初に力を使い果たしてしまったか。

 

 そういうところも含めて、教えてやらないといけないみたいだ。


「フィオナ」


「な、なに?」


「今日は初回だからアドバイスは一つだけにしておくが、お前の剣術には力強さが欠けている。剣は速いだけではダメだ。相応に相手を押し切る力がなければ、いつかはガス欠になってしまう。今のお前みたいにな」


「で、でも速さで圧倒するのがアタシの戦い方。それを崩すなんてことは……」


「ん、何を言っている? 誰が崩すなんて言ったんだ?」


「え?」


 俺は木刀を構えると。


「今から少しだけ見せる。木刀を構えろ」


「あ、うん……」


 フィオナが木刀を構えるのを見ると。


「行くぞ」


 剣先を真っ直ぐに向け、腰を落とすと食らいつくようにフィオナに木刀目掛けて一突き。

 さらに続けて連撃を重ねていく。


「くっ……うっ!」


「しっかりと防ぐんだ。生半可に防御していては隙を曝すだけだぞ」


「で、でも圧が……」


(なにこれ……攻撃一つ一つの力が強すぎて……)


 何も考えられない。

 フィオナの思考は攻撃を防ぐことで精一杯だった。


「あっ……!」


 俺の一撃が木刀の先を掠め、その衝撃でよろけるフィオナ。


「隙ありだ」


 俺はすかさずその隙を突き、フィオナの木刀を弾く。

 木刀は思いっきり宙を舞い、カタンと地に落ちた。


「な、なに……今の……」


「お前がさっき俺に見せてくれた剣術を真似て改良したものだ。中々の圧を感じられただろ?」


 フィオナはコクリと頷くと、


「これがさっき貴方が言っていた力強さってこと?」


「そうだ。速さで相手を完全に翻弄するにはプラスで何かがないと早急に手を打たれてしまう。相手に隙を作らせるには一定して圧をかけていかないといけない。フィオナもさっき俺の攻撃を受けた時に他のことを考える余裕すらもなかったはずだ」


「ええ。とにかく防ぎきらないとって想いが先行しちゃって……」


「それこそが俺が望んだ結果だ。圧をかけ続け、隙が出来たところで一気に攻め落とす。他にもやり方は山ほどあるが、俺はこれが一番実用的だと思っている」


「なるほどね。やっぱりあんたは流石だわ。あのお父様でも勝てない理由が分かった気がする」


 はぁ……と半ば呆れられながら、そう言われる。

 これは褒められているのだろうか。


「あ~あ、お父様の仇を取ろうと思ったのに。完敗も完敗、ボロ負けね」


 木刀を置き、腰を落ち着かせるフィオナに俺は、


「でもフィオナの剣には光るものを感じた。間違いなく、剣の才能はある」


「ほ、ホント?」


 嬉しそうに目を輝かせるフィオナに俺は静かに頷いた。


「ああ。それだけは間違いなく言える」


 むしろ伸びしろ満載でどこからどう教えようか迷うくらいだ。


 それに……

 

(傷をつけられたのは何年ぶりかな……)


 一瞬だけ。

 腕についたほんの小さな掠り傷を見ると、すぐに服の袖で隠す。


 これはさっきフィオナの連撃を受けてつけられたものだ。

 完全に防ぎきったつもりだったが、どうも()があったらしい。


 俺は今まで人に剣で傷をつけられたことはほとんどない。

 最後につけられたのは師匠との最後の特訓の時。


 それ以降、俺が戦闘でケガを負うことはなかったが。


「ふっ、俺もまだまだってことか」


 自分の甘さを再度認識したところで。


 俺はフィオナと共に木刀を片付けにいく。

 その帰りにフィオナは、ぐーっと伸びをすると、俺に目を向けてきた。


「それじゃ、負けたアタシは約束を果たさないといけないわね」

お読みいただき、ありがとうございます!

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宜しくお願い致します。

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