大丈夫なのか?
(天空都市群グングニル中央島北東地区:第二円形闘技場)
「ダイブキャッチ?」
「そう。言いかえれば、落下する物体を、急下降して補足するの。一か月前、あなたが私にそうしたみたいに」
「ふーん。あれか……」
俺は、一か月前、キーロと出会ったばかりの頃を思い出す。
あのときは、俺に覚悟を示すために、天空都市から飛び降りたキーロを、俺がなんとか助けだしたんだっけ……。
(※詳しくは、第九部「救出」を参照してくれ)
「あのときの自殺未遂みたいなことするのか? 練習器具を落として?」
キーロの意図は分かった。
が、どうにも腑に落ちない。
落下する物体を補足することと、俺の新しい扉を開くことに、どんな関係があるっていうんだ?
「練習器具じゃないわよ。天空都市から落ちるのは」
「じゃ、なんだよ?」
キーロは、察しの悪い俺を睨む。
「もう。モノじゃなかったら、落とすのは人に決まってるでしょ! 私よ、わ・た・し!!」
俺は仰天した。
危険すぎるからだ。
「はあ!? 正気か、お前? 失敗すれば焼却処分だぞ!? 天空都市の下部には、不法投棄されたゴミを地上界に到達させないためのレーザー装置がついてるんだ。駄目だ!! 危険すぎる!!」
俺は彼女の意見に反対した。
失敗すれば、万が一でも失敗すれば、キーロに生命の危機すら訪れる、常軌を逸した練習法だからだ。
が、いつもどおり、キーロは冷静な目で俺を捉える。
「あのねぇ。いつもいつも、感じてることだけど、あなたは否定から入り過ぎるのよ。ちょっとは、私を信頼したら?」
「してるさ、でもだな……」
「ほら、また逆説」
「う。でも、危険だぞ」
「だから、『標の石』を使うのよ。そうすれば、万が一が会ったとき、あなたのところに瞬間移動できるわ」
「……やっぱり、必要なんだよな? この練習」
俺の主治医は、深く頷いた。
「絶対」
それをみて、俺も覚悟を決める。
これまで、俺とキーロは何だって乗り越えてきた。
最北島でのリハビリ。
ミリアムハートjrとの指名戦。
あの襲撃からも。
今度も、きっとそうなるだろう。
そして、それを乗り越えれば、何かが変わる気がする。
俺は、その期待を胸に、キーロに告げた。
「わかったぜ、キーロ。よろしく頼むぜ。あ、でも。危なかったら、すぐにその石、使えよ?」
「わかってるわよ。それに、出会ったときみたいな高度まで、落下する気もないわ。その手前くらいまでであなたに捕まえてもらうから」
「おう! 任せとけよ。あのときとは、怪我の状態が違うんだ。もっと、動けるぜ」
「だと、いいけど。それじゃ、移動しましょ。ザザ、先に再利用施設付近の沿岸部に飛んで行ってくれる? 私、その後、ワープするから。事前に、効果を確かめておかなきゃ」
「了解!」
俺は、迅速にアニマ―ジュして、空へ舞い上がった。
「じゃ、先にいってるぜ!」
そういって、キーロと初めて出会ったトンネル付近の沿岸部を目指す。
でも、実は不安だ。
本当に、キーロが無事で練習を終えられるだろうか?
天空都市の外側は極寒で酸素が薄い。
それに、乱気流だって突発的に発生するのである。
もしかすると、万が一がある可能性もあるのだ。
一度、キーロを救出したあの状況は、はっきりいえば幸運だったのである。
でも。
俺の信頼する主治医が決めたことだ。
きっと、俺の新しい力のためにはなるだろう。
それは、間違いないという予感がする。
あとは。
どう、俺がそれを掴むか、だな。
そして、キーロを俺が守ることだ。
やってやろう。
そうすれば、ギラドアとの戦いにも、勝機が見えてくる。
――そう決意して、俺は沿岸部へ向かった。
(続く)




