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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編

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第五術式

 俺は全身から溶岩を噴き出すと、カオスが振るってきた触手を溶岩で焼き尽くした。


「イイィィィィィアアアアアァァァァァァアァ!!」


 カオスは奇妙な絶叫を上げる。そして再び触手を、しかし今度は五つくらいまとめて振るってくるが、速度が変わっただけだった。溶岩を防ぐ何かしらの対策を打ってくると思ったんだが、どうやら違うようだ。


 溶岩に対抗する術はいくつかあり、カオスは持っている能力の中にそれらがなかったんだろう。溶岩は火と土の性質を併せ持つ結構レアな属性で、そうそう相殺出来るのを持つモンスターがいるとは思えない。まあ魔力での単純な力比べだったら別だけどな。雷をめっちゃ使って溶岩に対抗してくるとか。ってかカオスは属性攻撃をしてこない。耐性をつけてる様子もない。属性攻撃に弱いのかもしれなかった。


 すぐに再生するカオスの触手を全身の溶岩で焼きながら、歩み寄っていく。……そろそろ仕掛けるべきか。もしかしたらこいつは万能じゃないかもだしな。


 俺はそう思い、溶岩から光に変えて、自分の身体を光線にしてカオスの身体を貫き、一瞬で背後に回る。


 さらに俺は四肢を光線に変えて適当に振りながら背後のカオスを振り返り、光線でカオスの身体を焼き切る。カオスはおそらく目がないので魔力感知で動いている。ということは、だ。


「「「……こんな感じか?」」」


 試しに三人の俺を光から生み出してみる。……おぉ、自分が喋ったと思うのに三人分の声が聞こえて不思議な感覚だ。しかも視界が三つある。頭の中で自然に整理されてて有り難い。ペ◯ンはこんな感じだったのだろうか、と思う。あれは視界を共有してるんだからちょっと違うのか?


 まあそれは兎も角、魔力を俺が八、残り二人が一割ずつに分けてみる。すぐに切れて消えてしまうが、実験の一つなので別にいいだろう。


 カオスは自分を焼き切った俺に対して怒りでも覚えているのか、四本の触手で襲いかかってきていた。だが俺の魔力が三つに分かれたことで八割の俺には二本だったがあとの二人に一本ずつ向かわせ方向転換してきた。


「……やっぱりか」


 俺は呟いて、振るってきた四本をそれぞれの俺が光熱で焼き切り、二人の俺をカオスの下に向かわせる。全魔力を消費して自爆する、名付けて俺爆弾。第五術式使用時にしか使えない技だが、まあ魔力の消費も大きい分威力が高い。


 二人の俺は光の速さでカオスにくっつくと、一際大きい光を放って、次の瞬間には爆発した。……あんまり自分が消滅してくのを見るのは気分のいいもんじゃないな。


 そう思いながら、二人の決死の攻撃で大きく身体が削れたカオスを見据える。……これを全魔力で使ったらカオスを倒せそうだが、それだと俺、死ぬんだよな。でもこれで倒そうとか言ったら先に皆に殺されそうだ。


 別の案を考えつつ左腕を木、右腕を土に変える。両手にそれぞれの属性の巨大な剣を作り出し、どうせ重さを感じないので十メートルぐらいの超巨大な剣を作って、カオスに斬りかかる。これは第五術式の欠点なんだが、武器が持てない。そのため属性を武器に変えることは出来ても、名のある匠が作った武器とか伝説の聖剣とかが意味をなさない。だから武器が装備出来ないのかもな。まあ簡単な武器なら扱えるんだが、アーティアから貰った短剣もその一つ。


 創造術式で神器パクった時もそうだが、俺は素手の方が強いってだけで別に武器を扱えない訳じゃない。……もちろん、剣士であるフィネア達から言わせてもらえばド素人だそうだが。ただ単純に振るうだけならどんなヤツにも出来ると、そういうことなんだろう。


「……おらぁ!」


 カオスの身体を二本の剣でズタズタに切り裂いた後、左腕を雷、右腕を氷に変えて巨大化させ、カオスを両手で包み込むようにして痺れさせ、凍てつかせる。だがすぐに残った部分から再生が始まる。……思ったことはカオスが属性に対する力がほとんどないらしいことと、もう一つ。超高速再生の第四術式を使う俺もそうだが、必ず本体に近い方が再生し、切り離されたとすればそこは死滅する。そうじゃなきゃ触手切ってカオスは群れになるとかチートすぎて絶対に勝てない。一体でこれだけ苦戦してるってのに。


 俺はカオスは再び叫び声を上げ始めたので、回復したらしい皆のところに光の速さで戻る。


「……あー、マジ疲れた」


 俺は呟いて第五術式を解除する。そして膝を着いた。


「……大丈夫ですか?」


 どんな時でもメイド服を着込む俺の忠実なメイド、アーティアが心配そうに声をかけてきて傍に寄る。


「……大丈夫だ。傷はないからな。それより魔力が切れかけてる。魔力回復アイテムも残り半分くらいか」


 俺はおそらく十階層で戦った魔物達に勝ったことで俺のレベルも上がり、強化されてるんだろう。じゃなきゃここまで第五術式で戦えない。これで一個飲んで、残り十一個か。


「……さっきの、強かったじゃない」


 フィネアがそんなことを言ってくる。確かに短期決戦なら強いんだけどな。節約が難しい術式ではあるので長持ちはしない。長い目で見ればあまり使い勝手のいい術式じゃない。


「……そりゃどうも。まあでもカオスを消し飛ばす算段がついたんだが、どうする?」


 俺は苦笑してから、ニヤリと笑って言う。


「……さっきの自爆だって言うなら、ぶっ殺すわよ?」


「……言わないって」


 フィネアに釘を刺されてしまった。……マジで笑顔のフィネアが怖い。ヤバいくらいに恐怖を煽られる。


「……聞かせてもらおうか」


 グランが言うので、俺は皆に耳打ちする。


「……それは、いけますかね」


「……さあな。でもその後は任せるからな? 俺魔力切れるし、トドメ刺せなかったら俺はもう上行くから」


 ディメスが言うので俺は苦笑しつつ言って、カオスを見据える。


「……さて、じゃあ頼んだぞ、お前達」


 俺が言うと七人はそれぞれ思い思いの返事で頷いてくれた。……じゃあ俺は安心して溜めてるとするか。


 いよいよ、カオスに対する作戦を実行する時がきた。

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