十階の魔物達
ついに、十階。
もう俺しか残っていない。
これまで継いできた皆の思いを抱えて、一段一段を踏み締めて上った。
気持ちは不安などでいっぱいで重いが、フィネアの言葉のおかげで足取りは軽い。
階段を上る俺の背中を、皆の手が押してくれているようだった。
「……」
ついに階段を上り切る。
薄暗い階段を上ると、暗い光が俺を照らす。
階段の長さとは違う空の高さだが、その天気は青空ではなく曇り空だ。
暗雲が空を覆い尽くし、暗い光が満ちている。
「……」
もちろんモンスターがいる。
しかし、カオスではない。
だが強力なモンスターだということは魔力を感じて分かっている。
「……殺セ、殺セ!」
そのモンスター達はやや片言ながらも口々に叫んだ。
「ウオオオオオォォォォォォォ!」
知り合いとかプライドのため殺してくれとかはなく、理性をなくした獣達は雄叫びを上げて標的の俺に襲いかかってくる。
「……可哀想だとかはあるが、俺の邪魔を、するなよ……っ!」
俺は吐き捨てるように言って、
「第一術式、発動。雷炎術式、氷樹術式……!」
雷と炎、氷と木の混合術式だ。
……本気でやらなければ死ぬ。第四も使うか。他の術式もタイミングを見て使おう。
「第四術式、発生」
これで魔力が尽きるまで死ぬ心配はなくなった。
この二つの術式がいつも使うモノだ。他の術式を使うのは今までにはなかった。二、三は比較的ノーマルなパワーアップで、五はちょっと使い勝手が悪い。操るのが難しいのだ。六はまだ戦闘での活用法が分からないが、ちょっと創造術式に似ている。七は使えない。
「……いくぞ」
俺は小さく呟いて、駆け出した。
「グルアアアアァァァァァァァァァ!!」
喚き声にも似た雄叫びを上げて襲い掛かってくる。
「……四拳」
モンスターの群れを睨みながら呟き、術式として使っている四つの属性で出来た拳が一つずつ出現する。
幅二メートル程の四つの拳は前方に放たれ、モンスターを切り裂き、焼き、凍らせ、縛り、一網打尽とまではいかなくても、数を減らすことには成功した。
残念ながら、四つ放っておいて三体しか倒せなかった。八体ぐらい巻き込んだハズなんだけどな。
「……チッ。こんな威力じゃ牽制にもなりゃしねえか」
俺は忌々しげに舌打ちする。
「第二術式、鼓動」
俺は試しに使った時以来、第二術式を使った。
第二術式は、術式の効果を上げる術式だ。
単純なパワーアップだけでなく、魔力の消費を抑えられる優れモノ。
「雷斧!」
左拳を握り肩へと持っていって、そこに巨大な雷の斧を出現させた。
それを思いっきり開くように振って、雷の斧も連動して突っ込んできたモンスターを薙ぎ払った。
雷に微妙に他の三属性が付加されている。術式の同時使用によるちょっとした効果だ。
雷の斧は豪快に刃を唸らせると、十数体を一気に薙ぎ払った。
「……やっぱ結構威力上がってるなぁ」
一属性でこれだから、また四属性でやればもっと凄いことになるだろう。
「四剣!」
俺は右手を前に伸ばすとそのさらに前から四属性の長さ五メートル程の剣を出現させ、前方に放った。
「ガアアアアァァァァァァァァ!!」
直撃したモンスターの絶叫が響くが、後方にいたモンスターは構わず魔法や口から何かを吐いてきたりと遠距離攻撃を仕掛けてくる。
「………雷炎虎、氷樹龍!」
左から雷と炎の混合で出来た虎を、右から氷と木の混合で出来た龍を出現させ、迫り来るそれらにぶつけ、相殺した。
「四槍」
さらに四属性の槍を放って数体を消し飛ばす。
「……ここからが一筋縄ではいかないな」
槍をくらい警戒してか動きを止めたモンスターの奥、不用意に近付いてこないヤツらがいる。
この中でも別格と言える魔力を保有するヤツらだ。
仲間と同等程度のヤツもいる。
「雷炎装」
雷と炎を纏い、軽くステップを踏んで調子を確かめる。
「……身体が軽い。いけるか」
スッ……と呼吸を整えてから、足に力を込めて跳ぶ。
「ふっ!」
鋭く息を吐いて眼前まで迫ったモンスターを殴り、雷炎で消し炭にする。
「ゴアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!」
すると、遂に後方で高みの見物と決め込んでいたモンスター達が一斉に動き出した。本格的に殺しにかかってきたらしい。
「……同情はしてやるが、俺の邪魔を、するなよ!」
俺は八つ当たりに近い怒りを、四属性を漲らせて周囲のモンスターに放った。
「おらぁ!」
武術とはお世辞にも言えない雑なケンカ腰の殴り方で真っ先に突っ込んできた漆黒のドラゴンを殴るが、ドラゴン特有の頑丈な鱗の鎧がダメージを軽減した。
「っ……!」
俺が続けてドラゴンを攻撃していると、右から蟷螂のような鎌を持った合成昆虫のようなモンスターが俺の右足の腿から切り落とした。
「……邪魔すんなって、言ってんだろうが!」
俺は右拳の裏拳で炎を多く放出し、そいつを焼き尽くす。
体勢を崩す前に右足は再生したので問題なくドラゴンへの攻撃を続ける。
「……ッ!」
すると、俺がなかなかドラゴンを仕留められないのをチャンスを見たのか、四方八方にモンスターが集まって攻撃を仕掛けてきた。
「……邪魔だっつってんだろうが! 四聖群輪!」
俺は両腕を横に真っ直ぐ伸ばし、白い炎、白い雷、白い氷、白い木の直径八メートルの輪をいくつも出現させる。
「……消し飛ばせ」
それらを一斉に周囲に放つと、白い輪に触れた傍から消滅していく。
「……うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
残りのモンスターを狩るために、自分の心を奮い立たせた。




