リフィアの想い
遅れましたすみません
次回からやっと最終決戦になります
……。
…………。
寝不足だ。
連日誰かしらが訪ねてきて、そのまま流される。……まあ、自分から流されているのも少なからずあるので、決してその誰かのせいと言う訳でもない。
しかも昨日はナティア一人だったのにも関わらず、明け方まで続けていた。
……まあ、これ以上はさすがに増えないだろう。
アーティア、ディメス、フィネア、メティ、ナティア。
……五股もかけてるじゃん、俺。プレイボーイ。
ははっ……。
俺は思わず乾いた笑みを漏らしそうになったが、なんとか内心だけで留められた。
元の世界から考えると、金持ちのイケメン並みだろうか? もちろん日本人だ。だが、そんなヤツならもっといるな。
少なくとも、日本では五人と付き合う高校生なんていないと思う。大半が一人と一人だ。
……俺って、生粋の女たらしだったのかなぁ。
最近よく憂鬱に思うことだ。だが俺は以前まで童貞だったどころか彼女すらいなかったんだが。
それは兎も角。
今日は完全な状態だ。今朝治癒力戻ったかもってことで回復をかけてもらったら、回復出来た。これで俺は今日からひたすらレベル上げだ。まだまだレベルが低いので、上げた方が総合的に上昇出来る。
だがその前に、俺はエイラとイシアの二人と買い物に来ていた。
二人は買い出しで、俺は魔力を回復させるアイテムを買うためだ。
「……シューヤさん」
エイラが口を開いた。遠慮がちだが、しっかりとした声だ。
「ん?」
俺はきっとアンドゥー教との戦いについてのことだろうと思いつつ、惚けて聞き返した。
「……アンドゥー教との戦いについてなんですが」
ほら見ろ。
エイラは俺の予想通りに言った。
「……俺は出来れば留守番してて欲しいな。足手まといとかじゃなく、家を、帰る場所を守ってて欲しいんだよ。……まあ、俺が過保護なだけかもしれないが」
俺は苦笑して、先に考えを言う。
「……私達は来るな、と? これでも、頑張って強くなってるつもりなんですが」
「……う~ん。帰ってきた時に出迎えてくれる人がいるってのは、帰ってくる場所があるってのは、いいことだと思うんだよ。少なくとも俺は、あの家に帰ってくるつもりだし、腹減ってるだろうしな」
目を細めて聞いてくるエイラに、さらに苦笑を深めて言った。
「……分かりました。今回は家で待ってますから。今度出掛ける時は一緒ですよ?」
「ああ」
エイラは予め予想出来ていたのか、微笑んだ。
「……帰ってきてね、お兄ちゃん」
イシアが左手を握ったままこちらを見上げてくる。
「……ああ。ーーっ!」
俺はイシアに微笑んで頷いて、妙な気配を察知した。
イシアも察知したようで、より強く手を握ってくる。エイラの表情も固い。
……だが、そこまで強くない。はっきり言ってイシアだけでも簡単に倒せるレベルのチンピラだ。
「……このまま買い物は続ける。終わってから小路に誘って、返り討ちにする」
俺は二人だけに聞こえる声で言った。
二つの魔力は、一定の距離を保ったまま俺達をつけてくる。
……手慣れてる。うろちょろしないでしっかりついてくる。狙いは多分イシアとエイラだろう。
俺達三人は自然を装って買い物をしていく。
食材と俺のための魔力回復アイテムだ。
魔力さえあれば、攻撃も回復も出来るのだ。出来るだけ買い込むのも当然だろう。
魔力量も上がってるが、あるに越したことはないからな。
買い物を終え、紙袋を両腕に提げ、二人にも一袋ずつ持ってもらい、近道しようとか言って、小路に入り、一つ角を早足で曲がり、立ち止まって振り返る。
しばらくして、俺達を見失うまいと走ってきた二人が角を曲がったところで待ち伏せされていたと気付き、立ち止まった。
……もし魔力感知が使えたなら、こんな待ち伏せには引っ掛からない。
「……チッ。やっぱ獣人がいるとバレるか」
一人が舌打ちした。どうやら、イシアがつけてくる足音を聞いたとかと勘違いしているようだ。
「……まあいいじゃねえかよ。武器も持ってないガキだけだぜ? 迎え討ってくれるんなら願ったり叶ったりじゃねえかよ」
もう一人がニヤリとした笑みを浮かべてイシアとエイラを見る。
「……氷術式」
俺はボソッと呟いて、左腕に水色の筋を走らせる。
「あん?」
「……二人を狙ったんだ。覚悟しろよ。ーー氷龍」
俺は感情を込めずに言い、胸の前から手足が短く身体が長い氷で出来た龍を出現させ、二人へと飛ばす。
「ひっーー!」
「魔法使いか!」
ただのチンピラだったらしい二人は呆気なく氷の龍によって氷付けにされる。……やっぱり弱かったな。
「……じゃあ、帰るか」
俺は放っておいたら凍死するであろう二人を置いて、二人はぎこちなく微笑みかけて、帰路に着いた。
……確実ではないが、人を殺しちまった。例えそれが二人を狙う相手だったとしても、何かこう、考えさせられるモノがある。
シュウは殺しておくべきだったと思うが、いざ殺すとなれば躊躇したかもしれない。いや、躊躇いはするが、殺っただろう。
人を傷付けたことは数知れないが、人を殺めたのは初めてだ。……アンドゥー教司祭は殺さなければならない気がするが、一々悔やんでも仕方がない。
俺は多分、仲間を傷つけられるのは嫌で、仲間を傷付けた相手には冷たくなってしまうんだろう。
そういう面から見ると、俺は全員を救う英雄にはなれないらしい。
国と国の戦争で勝国の英雄が敗国からは殺戮者と言われるような、そんな両面性。
……まあ、俺はまだ皆を守るだけで精一杯だが。
▼△▼△▼△▼△
夜も更けた頃。
明かりは月明かりのみとした薄暗い空間で、ぼんやりと起きていた。
夜遅くまで狩りをしてレベル上げに勤しみ、皆も各々で自身を高めることをやっている。
それでも、負けるかもしれないと言う不安。
逃げれば無事と言う訳でもない。アンドゥー教が世界に布教すれば逃げ場はなくなる。
第一、逃げるなどと言う選択肢は端から持ち合わせていない。
逃げたらこの街を襲う、とまで言われているのだ。
……それもあるが、やっぱり今の生活が楽しいと言うのもあるんだろう。
ドォン!
俺が考え事をしている最中に、紅蓮の火柱が床を突き抜けた。
「……」
犯人はまあ、分かるんだが。別に床を焼かなくても普通にドアから入ってこようとは思わなかったのか?
「……妹よ」
「……えへへ。ごめんね、お兄ちゃん。後で直すから」
上体を起こした俺の目に、申し訳なさそうにはにかんで床の穴から這い上がってくるリフィアが映った。
「……で、何の用だ?」
俺は完全に起き上がり、ベッドの上に座って聞く。
「……何の用って、お兄ちゃん。夜這いだよ」
妹はさらっと言って、ベッドの上に座ってくる。俺と対面するような感じだ。
……いや、兄妹だし。リフィアは本当にその気で来たのか、うっすらと肌が透けるネグリジェを着ている。炎使いだからか、赤だ。
「……お前な。俺達は兄妹なんだぞ?」
「……お兄ちゃん。生き別れた義理の妹って、ほぼ他人だよ!」
俺が呆れて言うと、熱く言い返されてしまった。
……まあ、否定出来ない。あっちの世界で会ったことはないし、名字も違う。妹だと言われても戸惑うくらいだ。
「……そうだけどさ。いいのか、俺で?」
「いいの! お兄ちゃんと連絡取り始めたのは最近だけど、私はずっとお兄ちゃんに会いたかったんだから。それが恋に変わってもおかしくはない!」
リフィアが熱弁するが、それはどうだろうか。兄に会いたい気持ちが恋に変わるって、元々ブラコンだったヤツなら有り得そうだが。
「……だからね、お兄ちゃん。お願い、私を貰って? お兄ちゃんになら、全部あげてもいいから」
リフィアは急に大人の女の顔をして、俺に顔を近付けてくる。……俺、節操なしの最低だな。最近理性がすぐ負ける。
「……っ」
最後の数センチと言うところで俺から距離を縮めて、キスをする。
そのままリフィアの身体を抱えながら押し倒すようにして覆い被さる。
……意志の弱い俺。




