ナティアの想い
かなり遅れました
すみません
ヤンデレって難しい……orz
朝の太陽が照り、芝生に反射する。
露のせいか少し湿っぽく冷たい空気が肌を撫でる。
俺は涼しいので上半身は裸、と言っても朝早くに買ってきてくれた包帯をぐるぐる巻きにしているが、肌を撫でる空気が心地いい。
アーティアはいない。アーティアが強くなるには、モンスターを狩りまくるのが最も手っ取り早い。だからモンスターを狩りに出掛けている。
大きな木造のこの家に見合う広さの庭で、各々対峙している。
俺は身体の治癒力が戻るまで見学だ。まあ、ただ見ていると言う訳でもないが。
俺が手っ取り早く強くなる方法がよく分からない。レベル上げがいいとは思うんだが。この身体だと何かあった時に逃げられないので今は無理だし。
アーティアはその分羨ましいとさえ思える。強い魔物を狩るだけで何レベル分のステータス上昇があるんだから。
今までは高値で売るために作法や何かも教育されていたので、そこまで逸脱してはいないらしい。これからは俺の足を引っ張らないように頑張るって張り切ってたな。……そうならいいんだが、今は俺が足手まといだ。シュウの件は相性の問題だろう。影を操る魔物がいたら俺が戦う前に終わってたかもしれないし。
「……火柱」
俺は炎術式を発動させていて、一メートル程先に火柱を起こした。
「……火拳……はダメだろうな、著作権的な問題で。炎拳」
俺が見学の合間に行うことは、魔力を使うこと。魔力は使えば使う程伸びるので、俺に出来るのはこれくらいだ。
それと同時進行で新技を開発していく。……新技と言っても、この前作ったリストでまだ作ってないのを試し、さらには応用技の開発も試みている。
例えば、炎津波。炎を津波のように押し寄せるモノだ。迫力はかなりのモノ。
強力な技を開発する内に、気付いたことがある。自然物を利用出来ないかと。
森で戦闘するなら木術式を使った方がお得感がある。
敵の隣の木から槍を出現させるとか。
海なら海水を使えるとか、そういうのだ。
魔法でも状況に応じた魔法を使うと強化されるらしく、それは出来た。
……要するに、常識だっただけだ。
俺は結局、魔力を使うか技を作るかしかしていない。しかも基本同時進行だ。
「「「……、……!」」」
メティとフィネアとディメスの三人は、座禅を組みやや険しい表情で汗をかいていて、目を閉じて時々唸っている。
イメージトレーニングと言うヤツらしい。
俺にはどうやったら出来るかが分からないが、念話の延長の応用だそうだ。
イメージを相手に送るのが念話の延長で、さらにそれを応用したモノらしい。
イメージの中なら全力で戦いたい放題だからな。
「ちょっと! 何で最後のが避けられるのよ! 現実にはないスピード使ったわね!?」
一戦終わったのか、目を開けて姿勢を崩す三人。開口一番、フィネアがディメスを睨んで言った。
「違います。あれは咄嗟の判断で少々の風魔法を使っただけです」
ディメスはしれっと答えた。
「……フィネアさんこそ、どうやったらブラックホールが斬れるんですか。狡いのはフィネアさんです」
メティがムスッと頬を膨らませて不満そうな顔をしていた。……ブラックホールですか?
「仮にも神なのよ? ブラックホールぐらい斬れるわ」
フィネアもしれっと答えた。……いやいや。ブラックホールって光さえも吸い込むからな? 少なくとも見えないんだぞ?
それとも元の世界とは違ってブラックホールみたいな魔法なんだろうか。メティの実力は底が知れない。
「……メティも充分理不尽ですよ。盾を折り畳むなんて」
ディメスがメティを見据えて言った。
「あれは重力をかけて潰したんです」
今度はメティがしれっと答えた。……結局、どっちもどっちってヤツか。
まあ仲がよろしいようで何よりだ。
グランもいない。
グランには他の異世界人の四人に、正式に協力を要請してもらっている。
定期的にアンドゥー教の様子を偵察してもらうようにしている。不意打ちをされたら堪ったもんじゃないからな。
始祖の言葉を信じない訳ではないが、魔力の大移動が見られないため、不審に思ったのだ。もしかしたら、このためにシュウを連れ去ったのかもしれない。
魔物に魔力封じの枷をさせ、シュウの影を通して移動させる。モンスターが大移動していると言う噂はないのでその線は高い。……そうだとしたら、シュウを仕留められなかったのは痛手になる。シュウが始祖に協力してまた戦ったら、また勝ったとしてもアンドゥー教の殲滅には至らず、結果として負けることになってしまう。
リフィアとナティアは、よく分からないが、質を高めていると言う。
属性攻撃に頼る二人は、属性の質を高めることでさらに威力が増すと言う。
座禅を組んで目を瞑り、集中している。
フィネアが言うには、剣の刃を研いで切れ味を増すようなモノらしい。俺達の中では二人にしか出来ないことだとか。
エイラとイシアの二人は、誰かと一緒にモンスターを狩るか、二人で手合わせするなどして高め合っている。
少しでも皆の力になりたいと言うことだが、俺の本音としては今回の戦いには参加しないで欲しい。
イシアはまだ幼いし、エイラは強いとは言え心配だ。過保護かもしれないが、留守番していて欲しいと言うのが本音だ。
この家を、帰ってくる場所を守っていて欲しいと思うのだ。
それに、家が襲われないとも限らない。アンドゥー教はここを知っているのだ。
……ついて来たいと言うなら、蔑ろには出来ない。二人の実力はそこそこいいし、何しろ戦力は多いに越したことはない、のだが。
俺が考えすぎなんだろうか。二人は立派だ。その辺の人間の冒険者と比べれば強い。
……う~ん。上手く言えないが、俺は二人に戦って欲しくないんだろう。イシアの歳でも魔物は普通に殺すし、この世界にとっては貧しい二人だからこそ余計に、それが当たり前なんだが。
……俺だけが反対するようなら、出来る限り守って、連れていこう。二人は強い方なんだから。
俺はイシアとエイラを連れていくかどうか悩みながら、魔力を使い続けた。
▼△▼△▼△▼△
「……うぅ」
俺は昨日全員で寝ることになったので一人で寝させてもらっていたのだが、極寒の大地にいるような寒さを感じて目を覚ます。……すでに手足は完全に冷たくなってる。布団じゃ到底防げない程の寒さだ。
「……寒い……」
俺は布団にくるまり、もぞもぞ動いて少しでも寒さが癒えないかと画策するが、無駄だった。だが、一つの声が上がった。
「……じゃあ温めてあげるね、ご主人様」
俺のすぐ傍だ。
「……ん?」
身体が冷え切っているのでぶるぶる震えながら、目を開けて周囲を見渡す。
「……ナティア?」
蒼炎帝・フレイオスのナティアことナティアミゼルがショートカットの蒼い髪を揺らして俺の顔を覗き込むようにして、覆い被さるような体勢だった。
薄暗い部屋の中で、黄色い瞳が輝いている。
「……ご主人様」
ナティアはギュッと俺に抱き着いてくる。よく見ると、ナティアは大胆なネグリジェ姿だった。……よく寒くないな。
「ーーじゃなくて、何でナティアがここに? あと、めちゃくちゃ寒いんだけど?」
俺は布団越しのナティアがかなり温かく、熱いくらいだと言うことに気付きつつも、離れられると寒いので、とりあえず聞いた。
「……心配しなくていいよ、ご主人様。私が今、温めてあげる」
どうやって? と俺が聞く暇を与えず、ナティアが顔を近付けてくる。その顔はほんのり赤く上気していて、どこか艶っぽい。見た目とは違い、大人っぽい雰囲気を漂わせていた。……俺はこの顔を知っている。これからすることも、だ。
「……ナティア」
俺はナティアの名前を呼び、それに応じる。無理に避けようとすれば、ナティアを傷付けかねない。……悪い気がしなかったと言うのもあったかもしれない。
「……んっ」
ナティアは僅かに吐息を漏らし、俺の唇にその柔らかい唇を触れさせた。
数秒と言う短い、触れるだけのキスだったが、俺の身体が熱くなっていた。性的に興奮したとかじゃなく、何だろうか。身体がポカポカして、温かい。
「……これで温かくなったでしょ?」
「あ、ああ」
俺は顔を離して妖艶に微笑むナティアにドキッとしながらも頷く。……寒さが気にならない。寧ろ暑いくらいだ。
「……ん?」
それがキスの目的だったのかと、少し残念に思う暇もなく、俺は身体が温まったからか、ナティア以外の周囲が見えるようになる。
「凍ってる……?」
俺の部屋が、ベットと少しの空間を残して透き通る水晶のような氷によって氷付けになっていた。……せっかく直したばっかなのに。
いや、それどころではない。これじゃあ、氷を溶かすか破壊しないと、出られない。監禁状態だ。まあ、脱出出来そうだからそこまでじゃないか。
「……うん。他の女が入ってこないように、封鎖したの。これでようやく、二人きりになれたね、ご主人様」
フフ……とどこか暗いようなうっとりとした笑みを浮かべて、俺の腰辺りに馬乗りになる。……いつの間に布団を剥がれた。
「……ナティア? これってお前がやったんだな? 何で?」
俺は答えが分かっているのにも関わらず、聞いた。
「何で? 何言ってるの、ご主人様? 分かってるんでしょ? ご主人様と二人きりになって他の女を入れないためだよ。ご主人様ったら私を置いて他の女と毎日イチャイチャしてるもんだから。ご主人様が好きなのは私だけなのに、あの女共ったら。ご主人様は私だけのご主人様なのに。まあご主人様は優しいから他の女にも情けをかけてるんだよね。ご主人様は私と結ばれる運命なんだから、あんまり期待させちゃダメだよ? あっ、そうだ。ご主人様子供は何人欲しい? 私、ご主人様との子供ならいくらでも……。生まれてくるのは男の子かな? 女の子かな? ねえご主人様、どっちだと思う? 子供の性別って男の方で決まるんだよね。私は男の子三人と女の子四人くらいは欲しいなぁ。ご主人様はどう思う?」
ナティアが暗いようなうっとりとしたような笑みのままで、早口に言った。……悪いんだが、最初の方と最後の「どう思う?」の部分ぐらいしか聞き取れなかったぞ。だが、多分子供について話してたハズ。
「……あ、ああ。そうだな」
俺は笑って頷いた。……あれ? この答えで大丈夫なのか?
「……っ! やっぱりご主人様もそう思う? ……じゃあ、しよっか」
ナティアは顔を輝かせたかと思うと、妙に大人びた妖艶な笑みを浮かべて言った。
「……ナティア」
俺は最近女たらしが悪化してきていて、さらにナティアが可愛かったので、さっきより少し長いキスをする。
「……んっ」
夜は更けた。だが、まだ夜は続きそうだ。
……最近寝不足なんだけど。




