地下を探せ
だいぶ遅れましたすみません
次回はなるべく早く更新したいと思いますが、どうなるか……
「グラン。地下を探すぞ」
俺は直ぐに家に戻り、グランを呼ぶ。
「ああ。地下なんだな?」
グランに聞かれて、頷く。
「私も行きます。妹が捕まってるのに、じっとしてられません」
エイラが決意を滲ませて言う。
「……分かった。相手は妙なのを使うからな。気を付けるんだ」
対処法が分からない今、エイラを危険には晒したくないが、イシアが捕まってるんだ、仕方ない。
「じゃあ、行くぞ」
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「グランディア!」
俺達三人が魔力遮断膜の範囲に入ろうとした時、後ろからムートガランが駆け寄ってきた。
「ムートガランか。どうかしたのか? 珍しく余裕がないな」
グランがそれに応える。
「……ハニーがアンドゥー教に拐われた!」
「「「っ!?」」」
最強の魔物の一種であるアスラバハムートの最後の生き残りムートガラン。その彼女にして俺と同じ異世界人のハニーことチアキが拐われたという。……同じ最強の一種である戦女神・ヴァルキリーのフィネアでさえ欺かれたんだ。ムートガランが欺かれても不思議じゃない。だが、ムートガランとチアキは四六時中一緒にいたハズ。何でチアキだけが捕まったんだ?
「……俺がハニーの安全を考え、一人で買い物に出た時だ。ハニーの魔力が超スピードでこっちに向かうのを感知してな。急いで来てみれば、お前達がいた」
ムートガランがこれまでの経緯を説明してくれる。……“絶影のスピードスター”か。
「……恐らく、俺達も同じ場所に向かってる。一緒に来るか?」
俺はムートガランを誘う。
「……ああ! ハニーを拐ったヤツは殺す!」
ムートガランが虚空を睨んで言った。
俺達はムートガランを含めた四人で魔力遮断膜内の地下を探していく。
手分けしてもいくつかあり、膜内でも魔力を感知出来ず、十ヶ所以上あった地下をしらみ潰しに探していくことにした。
「……どうも、カモフラージュされてるらしいな」
全ての地下に、皆はいなかった。
「ちっ! 魔力が感知出来ない上にカモフラージュされてるのか! ハニーを助けないといけないのに!」
ムートガランが拳を地面に叩きつけ、小さなクレーターを作る。
「……焦る気持ちは分かるが、落ち着け、ムートガラン。らしくない」
グランがムートガランを静めようとするが、ムートガランは一向に落ち着かない。
「……うるせえ。ハニーの腹には俺との子供が出来たんだよ。そんな時に、落ち着いていられるか!」
……えっ?
「……今何て言った?」
俺は重要なことをさらっと言われた気がして、聞き返す。
「ん? ハニーの腹に俺との子供が出来たって言ったんだが?」
「……そうなのか?」
「ああ。ハニーの腹辺りに別の魔力が、微量ながらにあることに気付き、医者に聞いたら、な。……人間界に来て二ヶ月だが、ハニーと会えて良かった」
ムートガランは優しい目をしていたが、チアキを拐われたことを思い出したのか、表情を歪める。
……待てよ? ってことは、チアキは二ヶ月前にこの世界に来たのか? この街にいる異世界人の筋肉バカは子供が生まれていて、既に一歳くらいだった。ってことはこっちに来て結構経ってるってことだ。俺は最後だしつい最近のことだが、いくら数が多くても何年も離れるものなのか? ……いつか確認する必要があるな。
「……ムートガラン。正面だけを一掃することは出来るか? 魔力遮断膜内の建物全部を、地下だけ残るように」
「……やってみよう。ーーはっ!」
ムートガランは気合いの声と共に全身から衝撃を発し、地面を残して消滅させていく。
「……強すぎだろ」
俺は苦笑して呟く。きっちり魔力遮断膜内全部の地上のモノを消滅させた。しかも、俺達は無傷だった。完璧なまでの力のコントロール。
「……ふむ。我らに影響を与えず、シューヤの要求に応えるとはな。さすがは魔神の名が入るアスラバハムートだ」
グランは大して驚いていなかった。エイラはビックリして目をパチクリさせているが。……そういや、グランってムートガランとはライバルみたいなもんなんだよな。
「……あれか」
崩す、ではなく消滅させるというムートガランの判断は正しい。崩せば瓦礫に埋もれ、地下が探しにくくなり、さらには瓦礫の重さで地下を崩壊させてしまう可能性もあった。その点消滅させれば、地下への入り口だけが残る。
魔力遮断膜の大体中心に位置する場所にある地下への階段が増えている。
「乗り込むぞ」
そこに近付いてから、ムートガランが早速入ろうとする。
「待て。俺が一人で入る」
「……あ? ハニーを助けるんだよ、邪魔するなら殺すぞ」
ムートガランが俺を睨んで言うが、俺に引く気はない。
「……殺れるもんなら殺ってみろ。短気バカが」
イケメンが睨むと結構怖いが、俺は睨み返す。
「……あ?」
「……待って下さい! シューヤさんもムートガランさんも落ち着いて!」
「……俺は落ち着いてる。こいつがバカなだけだ」
「ああ?」
ムートガランがさらに睨んでくる。
「……ムートガランのチアキへの愛がそうさせるって言うんなら、想いを数や大きさで計るのは間違ってても言わせてもらうぜ。……お前が一人分の想いなのに対して、俺は七人分の想いなんだよ。俺がその分お前以上に怒ってんだよ」
……愛ってのとは違うのもあるけど、想いは人それぞれだし、一概にそうとは言い切れねえけどな。
「シューヤさん! ……シューヤさんは何故一人で行きたいんですか?」
エイラが俺とムートガランの仲裁をしながら言う。
「……俺なら、“絶影のスピードスター”と張り合えると思ってる。能力的にな。だから俺が一人で行って“絶影のスピードスター”と戦い、その間に囚われた皆をグランとエイラに助けてもらう予定だった。ムートガランはアンドゥー教の襲撃を警戒して外で見張っててもらいたいんだよ。地下にいて捕まってるヤツらのことを考えると、襲撃されたら一網打尽だ。派手に消滅させちまったしな。見つかる可能性もある」
俺は作戦の大まかな手順を説明する。
「……ハニーの安全のため、か」
ムートガランは悔しそうに唇を噛み、悩んでいたが、やがて言った。
「……分かった。その代わり、ハニーを傷付けたら殺すぞ」
「……ああ、分かってる」
俺は頷いて、地下への階段を降りていく。




