神聖鶏騎士団を制圧せよ
「……」
俺はそれらを受けて、何がどうなってこうなったかを理解した。
「……つまり、俺は嵌められたってことか。ヴェライト・アルベルト伯爵?」
俺は神聖鶏騎士団の後ろでニヤニヤと笑うヴェライト・アルベルト伯爵に顔を向けて言う。
俺がカオスに恐怖している間、俺は神聖鶏騎士団に囲まれていた。……完全に呑まれていたとはいえ、情けない話だ。
「ああ。私は司祭様の命を受け、元々中立派だったことを活かし、中立派の反アンドゥー教側として貴様のようにアンドゥー教に潜入しようという愚か者を捕らえることをしていた。貴様で十人目だ」
十人って。あのギルマス、意外と情報収集力低いな? もう九人も嵌められてるってのに。
「よくやった、ヴェライト・アルベルト伯爵。これでお前も教団の幹部だ」
コケッティが言うと、伯爵を称賛する拍手が巻き起こった。
「ありがたき幸せ」
伯爵は仰々しく一礼をする。
「……ネガティブ思考しておいてよかった」
まだ驚きが少ない。
俺は今回の潜入において、三つシュミレーションをしていた。
一つは潜入し、情報を持ち帰ること。潜入がバレることなく、終わる最高の形。
一つは潜入し、万が一それがバレてしまった場合。伯爵を守りつつ逃げられるかで、いつくか終わり方がある。
一つは、伯爵がアンドゥー教の手の者だという、前提から覆すもの。最悪のパターン。
「……ほう? ネガティブ思考とはまた、異な言葉を使う。まるで、俺と同じ異世界人のような、な」
コケッティはニヤリとして言う。……こっちにネガティブ思考なんていう言葉はないのか。
「……俺のこと、知ってんじゃねえのか? 司祭さんよ」
俺は大人しく、言外で肯定する。
「どういう意味だ?」
「お前は人工魔物から情報を得られるんじゃないのか?」
「……それがどうかしたか?」
「俺、一回寄生されてんだよ。だから、俺のことを知ってるんじゃねえかと思ってな」
「ほう? 人工魔物に寄生されて生きているとは不思議なヤツだ。だが、知らないな。人工魔物に寄生されてから死んだヤツは多い」
「俺は、寄生から逃れたんだよ。人工魔物を殺して、な」
「……。そういえば、一体だけ妙な情報を持っているヤツがいたな。寄生したのはいいが、何も出来なかったと」
「それが俺だ。同じ異世界から来た俺だが、固有能力を持っていてな」
その代わり、魔法は使えないが。
「……なるほど。それで、人工魔物が使えなかったと」
「ああ。人工魔物ごときに使えるモノじゃないんだよ」
そのごときに寄生された俺だが。
「ふん。この絶体絶命の状況でそのふてぶてしい態度。確かに、英雄になる素質はあるのかもな。貴様がリストの最後に載ってるという、最後の異世界人か」
何でそうなるんだ? 最後って何か意味あんの?
「まあ、同郷だろうと反逆者はこの場で処刑! ーーといきたいとこだが」
そこでコケッティは口の端を吊り上げて笑う。
「?」
俺は何でそうしないのかが全くわからない。どういうことだ?
「我が友、“絶影のスピードスター”からの情報だと、貴様は奴隷を買い、幽霊が出るという噂の家を買い取っているな?」
……そういや、家買った時にアンドゥー教のことを知ったんだったな。
「……ソバット・シーチキンだったか」
その時アーティア達を襲ったヤツらの大本は。
「違う! ソベクバト・アーサリネだ!」
どこからか、怒鳴り声が聞こえた。……いたのか。
「……まあ、覚えてないのは仕方ない。シーチキン野郎」
「シーチキン野郎!? 無礼な! 仮にも貴族であるこの私を冒険者風情の癖に侮辱するか!」
……貴族ってやっぱうぜぇ。
「はっ。何にせよ、情報は貰ったんだ。俺は逃げさせてもらうぜ」
俺はコケッティを見上げて笑いながら言う。
「……余裕だな。神聖鶏騎士団もなめられたもんだ。ーー捕らえろ!」
コケッティが命令する。
「雷術式! ーー第一術式!」
俺は雷術式を発動させ、それを全身に回す。
「……奇妙な力だ」
「加えて、光術式!」
俺は前々から試したかった、術式の重ねがけをやってみた。ぶっつけ本番だが、仕方がない。
「ーー雷光術式」
上位の術式が誕生した。
「チッ。構わずやれ!」
騎士をやや感電よりの雷光、
「爆雷光!」
で吹き飛ばし、さらに感電させる。
「な、何だこの魔法……!」
遠くから見ていた魔術師が戸惑っていた。……そりゃそうか。術式は俺の仲間達ぐらいしか知らないんだった。あいつらはあんま驚いてなかったが、人間からしたら、驚愕の出来事か。
「魔法じゃねえよ、術式だ」
俺は雷光術式で速く、強くなった身体能力で魔術師を殴って気絶させていく。
「ヤツは雷と光を使う! それに注意していれば戸惑うこともない!」
さすが司祭と言うべきか。その一言で動揺が減っていった。
「アースクエイク!」
誰かが魔法を唱える。日本語で地震だがーー。
「っ!」
俺の足元に地割れが起こり、危うく落ちるとこだった。
「麻痺羽!」
地割れを跳んで避け、両腕を振って雷の羽を放つ。
雷術式での麻痺羽ーー当たると痺れて動けなくなるーーをさらに光術式で速くしている。並みのヤツなら避けられないだろう。
「ぐっ!」
俺の推測通り、神聖鶏騎士団の面々は、麻痺羽に当たって次々に倒れていく。
「ふん。さすがは俺と同じ異世界人。神聖鶏騎士団を倒すとはな。褒めてやろう」
神聖鶏騎士団を倒した俺に、コケッティは一人、拍手する。
「……」
俺はそんなコケッティを黙って睨んだ。




